「ボクの音楽武者修行」 小澤征爾 新潮文庫
音楽それもクラシックとなると門外漢で大した知識もないのですが、小澤征爾さんは大好きな指揮者です。
とはいえ、最初に小澤さんを知ったのはその華麗なる指揮から紡ぎだされる音楽ではなく、この旅行記でした。
唯一の財産であるスクーターとともに貨物船に乗り、辿りついたフランスをふりだしに、アメリカ、ドイツそして日本に帰国するまでの二年半の日々。その間の出来事が“世界の小澤”になる前の26歳の青年であった小澤さんによって素朴に記されています。そのなんのてらいもない、実直に綴られた文章のなんて魅力的なことでしょう。
読み終わって即レコードを買い求め、クラシック音楽を聞くきっかけをくれた思い出の一冊です。
古川佳代子