夏休みに入ると、「ラジオ体操」が毎朝の日課となります。
山鳩の鳴き声に後押しされ、スタンプカードを首から下げ、旧森小学校の校庭を目指します。
ある年、スタンプカード以外にもう1セット必ず携えて行くグッズがありました。
ビニール袋と長い棒です。
ジュウシマツ、手乗り文鳥・金魚を飼っていた心優しい母がこの年は新たに九官鳥を我が家に連れて来たのです。
この九官鳥「きゅうちゃん」の朝ごはん調達が私に課せられた任務だったのです。
ラジオ体操からの帰路、往きに目を付けておいたポイントで、メリハリのきいた黒と黄色のキメキメ女郎蜘蛛を棒の先端に取りつかせ、ビニール袋に捕獲します。
気分はハンター!
「きゅうちゃん」は病気の為、その後わずか1年足らずの命でした。
夏の朝露・朝日に煌めく蜘蛛の糸を背景に「ラジオ体操」、「女郎蜘蛛」そして36歳で他界した母へと、連想ゲームのように記憶を手繰り寄せます。
花火のようにきれいな記憶のままに消えていく私のひと夏の思い出…。