(前編はこちら)
やがて若者達の嫉妬の凶器は順太の脳天に打ちおろされた。
勿論、彼等若者達にも順太を殺す気は無かったが、打ち所が悪かったか、順太はウォーッと言う悲鳴と共に死んでいった。加害者の若者達も驚いた。そして困った。が、それは後の祭り、彼等は 順太の死体を河に運び砂を掘って順太の死体を埋めたのであった。
その翌朝順太の飯場では順太が行方不明に成った事に同僚の人夫達は大さわぎと成った。そして順太の行方不明は彼の故郷の母の許へも知らされた。
一方人夫達は八方順太の行方を探したがようとしてその行方は分からなかった。
やがて月も変わり八月二日、晴天続きの天候もついくずれ、どす黒い雲が南からちぎれちぎれに飛んで行った。台風の前兆である。そして翌日三日の夕刻から四日にかけて暴風雨となった。河川は見るみる内に増水した。
阿波屋の人夫達は順太の不明の中で不安ながらも木材を流送したのであったが、さしもの台風も翌五日には又快晴の天候に回復し暑さも多少しのぎ易く成っていたが、山々にはみんみんぜみがにぎやかに鳴いてい た。
この頃、里の百姓与三郎は朝起きて対岸の川原の砂に異様な光景を見た。
それは真黒いカラスの群が一カ所に ガーガーと鳴いているのであった。がしかし、その日は敢えて気にもせず山畑へ仕事に行ったが、その翌朝も又その翌朝も例のからすの群は一カ所に集まっていた。
とうとう、与三郎はそのからすの群の集まっている川原に行ってみたのである。
そこで与三郎が目にしたものは、何と半ば腐乱した順太の死体、それをからすがつついて 二目と見られない凄惨な姿であった。
後編に続く