「宇宙兄弟 1巻」 小山宙哉 講談社
私の愛読書『宇宙兄弟』。
子どもの頃からの夢「宇宙飛行士」を先に叶えた弟・南波日々人と、諦めかけた夢を思い出し「宇宙飛行士」になるべく奮闘する兄・南波六太の物語です。上司に頭突きして職場をクビになった六太は、母親が応募したJAXAの書類審査を通り、次の一次審査へ。でも失敗した姿を弟に見られたくない、「俺程度の人間はふるい落とされるってわかってるから」と次へ進むことを自ら諦めようとします。ここで背中を押してくれるのが天文学者のシャロン。日々人と六太は幼い頃からシャロンと星を見つめ、共に楽器を演奏し、多くの良い時間を過ごしてきました。
久しぶりに一緒に演奏しようとシャロンに誘われて躊躇する六太。
「上手くなくてもいいし、間違ってもいいのよムッタ。まずは音を出して。音を出さなきゃ音楽は始まらないのよ」。
幼き日の六太は、シャロンの数ある楽器の中から「一番音が出にくいから」と“金ピカのトランペット”を敢えて選んで吹いていたのです。
「今のあなたにとって、一番金ピカなことは何?」
シャロンのその言葉で「忘れたふりを続けていたせいか、本当に自分の大事な気持ちを忘れていた」ことに気付いた六太は、一次審査へと臨みます。
シャロンは、六太だけではなく私の背中も押してくれました。いつのまにかうつむいていた自分、そしてそんな自分の肩をポンポンと叩いてもらっているような気がするのです。言葉が誰かを励まし、誰かの日々の瞬間に希望を与える。言葉と物語の持つ力にあらためて気付かされます。