「ろいろい とさちょう」 とさちょうものがたり作, 下田昌克 絵 合同会社風
お久しぶりの登場、矢野です!
本を読む気になれず、こんなに時間が経ってしまいました。こんな私が読書を趣味と言っていいのか、困ったものです。そんな中、編集部の鳥山さんがある絵本のページを送ってくれました。
今回はその絵本を紹介したいと思います。私が書いていいものか悩みましたが、読んでみて数々の思い出と懐かしさが込み上げてきたので書かせていただくことにしました。「ろいろい とさちょう」土佐町のオリジナル絵本です。作者はとさちょうものがたり、絵は下田昌克さんです。この絵本は珍しく蛇腹になっていて、表と裏で楽しむことが出来ます。実は私と父と母も登場しています。そっくりすぎて思わず笑ってしまいました。(モデルなった時の私は痩せていた時だったようで、今とはサイズがちがいます 笑)
あまり詳しく書くと、これから読む人がつまらないと思いますので、どんなところで思い出があるのか、ちょこちょこ書かせてもらいます。
まず、川が出てくる場面。土佐町の子供は小学生から高校生まで、夏は川にお世話になります。男女年齢関係なく大人数で行けば大丈夫という謎の安心感で、繰り出していました。私は他のページにも出てくる岡部商店で“ちゃん”と呼ばれるモリを買って、魚を突いていました。同級生の男の子と一緒にどこまで深く潜れるか競争したり、岩から飛び込んだり、焚き火で魚を焼いたりしました。
1つここで懺悔をするとすれば、肝試しで岩から飛び込みをしていた時に、調子に乗った私は妹の背中を押したらしいです。皆さんは決して真似しないでください。陽菜、ほんまごめんなさい。
川の底に潜って体を空に向けると、水面がゆらゆら青い空がおぼろげに見えます。表面と違って川底の水は冷たく、そばをゴリ(底に済むハゼのような魚の総称)が泳ぎ、川の水がしゅんできて、川と一体になった気がするのでした。
絵本には書かれていませんが、川遊びのプロは水着の上に白いTシャツを着ます。泳いでいるのがよく見えるということと、川の虫達(アブやテジロ)が黒色を好むので、自然と白いTシャツを着ていました。今はどうなんでしょうか…。
次に三島と東境が出てくる場面。いつも5月の終わりから6月の初め頃に、蛍が飛び始めます。この時期はみんな田んぼの畦を刈ったりするのですが、ここの用水路は刈りません。蛍の寝床になるからです。私が物心着く頃からそうでした。そして夜は街灯を消して、蛍が飛べるようにします。このことを当たり前だと思ってくださる人々に、私は誇らしい思いを抱きます。
小学生の頃、蛍を見に行った時、先代の土佐酒造の社長さんに会いました。その時うっかり「おじちゃんは頭がぴかぴかやき、蛍も間違うね」と言ってしまい、父にしばかれた思い出があります。社長さんは「ほんまじゃ、まっことそうじゃねぇ」と笑ってくださったことを覚えています。
南川地区が描かれたページ。優良運転者のマークがついた軽トラに、イノシシかどんと載っています。友人は子供の頃、軽トラの荷台で解体されていたイノシシを見て、イノシシを食べられなくなったそうです。独特の匂いがするとも言っていました。林道にイノシシの頭が落ちていたこともあったそうです。
イノシシは毎年必ず食べていますが、猟師さんや捌いた人で味が全く違うので驚きます。私をかわいがってくれていた、ノブさんという今はもう亡くなったおじいさんがいますが、私の身長ぐらいある大きなイノシシを撃ったことがあると教えてくれました。イノシシと交通事故に会うと、車が廃車になることもあるそうです。もののけ姫に出てくる大イノシシたちも、あながち間違いじゃないなぁと恐ろしく思ったことでした。
森地区の野中祭。父が福引係でいつも抽選会の司会をしています。はっきり言って、つまらないギャグを言うのは本当にやめて欲しいです。お願いします。
次にさめうらダム。カヌーに乗ったラヨシュ・ジョコシュさんが描かれています。私の弟が高校生の時、ラヨシュさんにカヌーを習っていたのですが、「裕太、ノーマッスル」と言われていました。だいぶ傷ついたようで、今でもAmazonプライムデーにプロテイン買い溜めして飲んだり、仕事終わりにジムに通っています。でも、ひょろひょろです。
相川には祖母のお姉さんが住んでいました。赤牛を飼っていて、お邪魔する度に見せてもらっていました。特に目が印象的で、Cカールのマツエクをどっさりつけたようなまつ毛、うるうるの黒目がちな大きな目、性格もおっとりしていて本当に可愛いです。
この絵本を読んでいると、土佐町民は誰もが自分の思い出が蘇るのではないでしょうか。描かれている人を見て、「どこどこの、あの人じゃないかな?」と思ったり、「もしかして、これ私?」なんて、思ったり。そして、関係ない人が読んでも、自分のふるさとのことを思い出すことでしょう。
この絵本は本当にたくさんの人の協力で完成した絵本です。本を作ること自体、1人ではできないことですが、下田さんや編集部の地道な取材があってこそ、リアルな土佐町が描かれているのだと思います。このコラムを読んでくださっている方も、ぜひ、「ろいろい とさちょう」読んでみてください。自分だけの土佐町が見えてくるはずです。
右手にのしかかってくる飼い猫の頭が重いので、そろそろ筆を置きます。
読んでくださってありがとうございました。
最後に、世界がもっと平和に、世界がもっと優しくなりますように。祈って。
終わり。