「ライオンのおやつ」 小川糸 ポプラ社
「ライオンの家」というホスピスが 瀬戸内の島にあり、主人公の雫は30過ぎで痰のステージⅣと告げられて、一人で終わりを迎える決心をして、遠路はるばる海を渡り「ライオンの家」へ来た。
雫は「ライオンの家」が 大層気に入った。空気がおいしい、海が目の前に広がり元気になる気がした。そこでゲストと呼ばれる同じ病気の人達や、シスターやマドンナたちに囲まれ楽しんで暮らしてゆ く。
週に一度 日曜日の午後3時からおやつの時間がある。おやつの時間がくることで一週間経った事が判る。おやつの時間が生きる希望であり節目になっていた。
ゲストの 1人1人が、もう1度食べたい思い出のおやつをリクエストする事ができる。そして毎回くじ引きで選ばれる。最後まで選ばれない人もいる。それが人生なのかもしれない。おやつを前にすると誰もが皆、子供に戻る。おやつの時間は 皆子供の顔になって いるのだろう。
雫は不思議なことに死が近づけば近づく程両親の存在を強く感じるようになった。私が今、ここにいるのはすべて両親のお陰だったと。でも幼い雫を残して不慮の事故で亡くなって、母の弟に育てられた。
その後義父が結婚したい人が出来た時、雫はひとりで生きる事を選び家を出た。その義父と暮らしていた時に、初めて作ったのが「ミルクレープ」それをリクエストしていた。モルヒネで痛みを柔げるようになり、おやつの時間が来た。今のおやつは雫がリクエストした「ミルクレープ」だった。会いたくて会えなかった義父が来た。妹も連れて。雫さん会えて良かったね。
ホスピスに入る事で最後まで笑って暮らせて、 周りの人達の心づかいで悔いのない最期を迎える事が出来て、泣きながらもほのぼのとした時間を過ごせた物語りでした。