7月のある日、私はきゅうり長者になった。カゴからはみ出るほど山盛りのきゅうり。同じ日に、二人の人からたくさんのきゅうりを受け取ったのだ。
その日、友人が自分で作ったといういぼいぼのきゅうりを持って来てくれた。受け取るとチクチクして痛く、こん棒のように太い。「さっき採ったばかり」と言う。このチクチクが新鮮な証拠だ。「乱切りにして生姜とにんにく、豚肉と一緒に炒めると美味しい」など食べ方の話をした。今日の夕ごはんはそれで決まりだと思っているところへ電話がかかって来た。
いつもお世話になっている栗木地区の近藤さんからだった。「きゅうり、いるかよ?」。
いつもいただいてばかりで申し訳ないな…と思いながらも、遠慮なくいただくことにする。
近藤さんは「他の人にも届けにいくからその人に預けておく、仕事帰りに取りに行ったらえい」と言う。
夕方、その人の家を訪ねると、袋いっぱいのきゅうりを手渡してくれた。近藤さんの顔が思い浮かぶ。
どうやって食べようか…。まずは丸かじり。次は塩もみ、漬物、梅干しとゴマとの和えもの、もずくと柚子酢で和えてもいいな…などなど考える。
お礼の電話をすると「いや〜、喜んでくれるのが嬉しいんよ。また欲しい時はいつでも言いなさい」。
思わず涙ぐんでしまう。
この季節は、みんなの畑できゅうりがたわわに実るのだろう。育てた人がたくさんのきゅうりを前にして、さてどうしようかと考える。その時に顔を思い浮かべてもらったことが、ただただ嬉しい。