鳥山百合子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

鳥山百合子

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「字はうつくしい」 井原奈津子 福音館書店

先日、土佐町小中学校で英語を教えているエヴァンさんと話す機会がありました。

「昨日の夜、部屋にこれが出たんだよ!」エヴァンさんが見せてくれたのはムカデの写真!

どうやって捕まえたらいいのか聞かれたので「火挟で挟んで、油を入れた瓶に突っ込む」と伝え、さらにムカデが出なくなるおまじないも教えました。

紙に「茶」という漢字を書き、上下逆さまにして壁に貼るという非科学的なおまじないです。(調べてみると「ムカデはお茶が嫌いで、「茶」の文字を逆さにして貼っておくとお茶がこぼれるから、そこにはムカデが入ってこない」という説があるそう)

「 Amazing!」とエヴァンさん。英語圏で生まれ育ったエヴァンさんにとって漢字はとても興味深く、面白く、美しいものとして見えるようです。そして「書き順や何通りもある読み方が難しいんだ」とも。

この本には手で書いた色々な種類の文字が出てきます。漢字、ひらがな、カタカナ…。同じ文字でも書いた人によって文字の佇まいが違います。文字を通してその人の人柄まで伝わってくるような。懐かしい人や大切な人に手紙を書きたくなってきます。

エヴァンさんも筆を持ち「茶」と書きました。実に味わい深い文字。きっと、もう二度とムカデは出なくなるはずです。

2つ並んだ「茶」の文字。アメリカで生まれ育ったエヴァンさんとここ土佐町で出会えた不思議とご縁を感じました。

 

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読んでほしい

春の音

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春、桜開く頃のこと。水路に水が流れる音が聞こえ始める。傍らの田んぼからカエルの鳴き声。遠くには鶯の鳴き方が。耳元では春風が通り過ぎていく。

これから田んぼの準備やぜんまいわらびイタドリなど山菜の収穫も。「せわしい、せわしい」という町の人たちの声が聞こえてきそうだ。

山の麓に咲く桜の花びらが流れていく。一枚、また一枚。

季節はめぐる。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「木はいいなあ」 ジャニス=メイ=ユードリイ著, マーク=シーモント絵,さいおんじさちこ訳 偕成社

「木はいいなあ」。木がそばにあるとどんなにいいか、この絵本は教えてくれます。

葉はそよ風の中で口笛を吹くし、枝にのぼると遠くの方が見える。りんごの木だったら、木にのぼってりんごを取るし、ブランコだってつけられる。こかげを作ってくれて、お弁当も食べられるし、家を守ってくれる。

山に囲まれた土佐町ではさまざまな木が見られます。杉やヒノキ(春は花粉でなかなか大変笑)桜や欅、コナラや桃やネムノキ…。花を咲かせ、山に色を加え、めぐる季節を教えてくれます。

あちこちに気持ちの良い散歩コースもあるし、少し標高の高いところに行って木々の間を歩いて深呼吸、これも最高です。頭のてっぺんからつま先まで、澄んだ空気が通り抜けていきます。

「木はいいなあ」。心から同感です。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「はるかぜさんといっしょに」 にしまきかやこ こぐま社

山のあちらこちらに桜色が加わり、時々ウグイスの声も聞こえるようになりました。土佐町はもうすっかり春です!

春らしい風を感じながら歩いていると、足元にはたんぽぽ、オオイヌノフグリ、なずな、つくし、桃。庭先にはムスカリやチューリップ。色とりどりの花たちが、足取りを軽くしてくれます。

この絵本の主人公「こんちゃん」は、ふーっと風を吹かせる「はるかぜさん」と出会って、はるかぜさんについていきます。このはるかぜさん、何とも気持ち良い風を吹かせているようで、いつの間にかこんちゃんに続き、町の人たちも長い長い行列に。歩いて歩いて、みんなでたどり着いた丘でひと眠り。

ああ、いいなあ!私もこんな丘で、大の字になって寝てみたい。

春は、心も身体も開いていく季節なのだそうです。人間をそうさせるのは、はるかぜさんが新たな気持ち良い風を運んできてくれるからかもしれないですね。

 

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私の一冊

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「のせてのせて」 松谷みよ子 著,  東光寺啓 絵 童心社

1969年に出版され、もう50年以上読み継がれている「のせてのせて」。私が子供の時、母に何度も読んでもらい、私も3人の子供たちに繰り返し読んだ一冊です。

「まこちゃん」が赤い自動車に乗って出発、途中で「ストップ!のせてのせて」とうさぎやくま、ネズミの大家族が加わっていきます。その姿が何とも楽しげ。

ところが一転、ページは真っ暗。トンネルに突入して…さあ、どうなるか?

トンネルを抜けた先、「でた!おひさまだ!」という言葉に子供たちが笑顔になるのが好きでした。その顔見たさにこの本を読んでいたくらい。

何回も読んで知っているはずなのに、お話の世界を何度も行ったり来たりできる子供の姿が何とも愛おしい。

大切な一冊です。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「みんなでこんにゃくづくり」 菊池日出夫 福音館書店

土佐町で暮らし始めた頃、近所のおばあちゃんが家にやってきて「こんにゃく作ったき、食べや」とビニール袋を手渡してくれた。袋の中には、ソフトボール位の大きさの丸いものが幾つも入っていてずっしり重く、ほかほかと温かい。

これがこんにゃく!丸い

それまでこんにゃくといえば四角い板こんにゃくしか知らなかった。さらに、おばあちゃんは「そのまま薄く切って、刺身みたいにしょうゆをちょこっとつけて食べてみや」という。

刺身!

こんにゃくは煮物にしたり炒めたり、火を入れて食べるものだと思っていた。何と生で食べられるとは!その日の夕ごはんに食べたこんにゃくの刺身は絶品で、子供たちの箸も止まらない。あっという間に平らげた。

絵本「みんなでこんにゃくづくり」は、おじいちゃんやおばあちゃんとこんにゃく芋を育て、みんなでこんにゃくを作るお話だ。土佐町で暮らし始める前から、どこか遠い所の話だと思いながらページをめくって眺めていた「こんにゃくづくり」。それをリアルにしている人が現れたのはかなりの衝撃だった。

後日、おばあちゃんがこんにゃくを作るところを見せてもらった。掘っておいた芋をぐつぐつ茹でて皮を剥き、ドロドロになるまでミキサーにかける。浅木の灰を水と混ぜ、布で漉した灰汁を入れると立ち現れるこんにゃくの香り。混ぜ続けると次第に固まってくる。まるで化学実験だ。杉やヒノキの灰汁では固まらないと聞いて、この地の人たちの試行錯誤が見えるようだった。

土が足元にある暮らしは実にゆたかだ。身の回りにあるものを工夫して使って何でも作る。手間も時間もかかるが、この地で引き継がれてきた知恵に、この場所で生きるという強い意志を感じる。

 

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読んでほしい

福寿草を見においで

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「福寿草がきれいに咲いちゅうき、よかったら見にいらっしゃいや」

土佐町の和田勝幸さんからお電話をいただき、伺いました。勝幸さんの庭に一歩入ると、明るく澄んだ黄色の福寿草がたくさん咲いていました。

 

幸せを招く花

福寿草は「幸せを招く花」と呼ばれています。江戸時代には「春を一番に伝える花」として「福告ぐ草(ふくつぐそう)」と呼ばれていたとか。呼びやすいように「告ぐ」を「寿」に変え、福寿草となったそうです。

 

この日はとても暖かい日で、福寿草たちはとても気持ちよさそう。写真右側に写っている小さな丸いボールのようなものが種で、これがポロリと落ち、新しい芽となるそうです。

 

毎年、勝幸さんは増えた株を庭のあちこちに植え替えてきました。道に面した場所や畑の片隅…。他には水仙やさくら草も咲いています。もうすっかり春を迎えた勝幸さんの庭です。

 

和田勝幸さん・袈裟尾さん

連絡をくれた和田勝幸さんと奥さまの袈裟尾さん。わざわざ「見においで」と連絡してくれたことが、とても嬉しかったです。勝幸さんから春の幸せをいただきました。

これから福寿草を見つけたら、勝幸さんのお顔を思い浮かべると思います。

勝幸さん、ありがとうございました!

 

 

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私の一冊

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「いちごばたけのちいさなおばあさん」 わたりむつこ作, 中谷千代子絵 福音館書店

土佐町のいちご屋さん「やまびこ農園」さんにいちごが並び始めると、いつも「いちごばたけのちいさなおばあさん」のことを思い出します。

いちご畑の土の中に住んでいるおばあさんの仕事は、いちごの実に赤い色をつけること。土の中のみどりの石を掘り出し粉にして、お日さまの光をたっぷり吸いこんだ水に注ぎ込むと赤い色が出来上がる。おばあさんはその赤い水をせっせと塗って、赤いいちごを作るのです。

これは母に何度も読んでもらったお話で、幼い頃、私はこういった世界をみじんも疑っていませんでした。いつからか、いちご畑におばあさんはいないと知りますが、そんなことはどうでもよく、いちごばたけのおばあさんはやっぱりいるのだと、春先のいちごを見るたび思います。

やまびこ農園さんのいちごは、びっくりする程甘くてジューシー。毎年ジャム用のいちごを分けてもらってジャムを作ったり、砂糖をまぶして冷凍し、牛乳と一緒にミキサーにかけていちごシェイクにするのが楽しみです。

いちごばたけのちいさなおばあさん、今年も美味しいいちごをいたただきます。ありがとう。

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私の一冊

鳥山百合子

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「運動脳」 アンデシュ・ハンセン サンマーク出版

情けないことに、私は運動しようとしても続いた試しがない。毎日ランニングをしている友人が「走ることは歯磨きと一緒。走らないと気持ち悪い」と話すのを聞いて心底かっこいいと感じ、そんなふうに言ってみたいと思い続けて今に至る。

そんな私でも、たま〜に気が向いた時に走ったり、ほんの少しだけヨガをやるだけでも、モヤがかかっていた頭の中がクリアになり、前向きに何でもできそうな気持ちになることは知っている。

運動するとなぜ心地よい気分になるのか?その秘密をこの本は教えてくれた。

それは「私たちの祖先が、狩猟や住む場所を探すときに走っていたから」だという。

人間の脳は原始時代からほぼ変化していないのだそうだ。激変したのは生活習慣で、人間は物に囲まれて快適に暮らし、食料もボタン一つで自宅まで運んできてくれるようになり、身体を動かさなくなった。そうなると、狩猟仕様にできている脳にとっては具合が悪い。脳が求める運動をしないと調子が悪くなる。気持ちが沈み、意欲減退、記憶力低下…。大なり小なり日々のストレスに気持ちが滅入る。まさに今の私。すごくよく分かる。

でも運動することで、使われていなかった神経が繋がり、血が巡る。感情を制御している神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、3つの脳内物質たちを増やすことができるそうだ。

・セロトニン…悩みや不安を和らげる
・ノルアドレナリン…やる気や集中力を促す
・ドーパミン…意欲や活力を促す

この3つが増えることで「あなたの気分が変わる」という。

狩猟民族のご先祖さまの姿と非常にわかりやすい科学的な説明が、私の背中を押してくれた。

この前の日曜日に1時間ほど歩いた。単純かもしれないがとても気持ちがよくて、清々しい気持ちになった。こんな気持ちは久しぶりだった。

週に3回くらいでも効果があるらしい。ランニングやウォーキング、サイクリングもいいそうだ。まずはウォーキングからやってみよう。脳内に3つの物質を増やし、この鬱々とした気持ちを追い払ってしまいたい。

 

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「はなをくんくん」 ルース・クラウス文 ,マーク・シーモント絵, きじまはじめ訳 福音館書店

光が春めいていることに気づく今日この頃。

日中は暖かくてウキウキし、けれど翌日はまさかの雪!こうやって冬と春の間を行ったり来たりしながら、いつの間にかすっかり春を迎えているのでしょう。

1967年にアメリカで出版された絵本「はなをくんくん」。冬眠中の動物や虫たちが目を覚まし、はなをくんくんさせながら何かに向かってかけていく。はなをくんくん、はなをくんくん。雪の中、たどりついた場所には花がひとつ咲いている。

動物も森もモノクロなのに、みんなが見つけた花は鮮やかな黄色。笑って踊って「うわい!」と叫ぶ。春はもうすぐ!その喜びが伝わってきます。

この本の原題は「The Happy Day」。春が待ち遠しい今この時期に、読みたい絵本です。

 

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