「ちひろのアトリエ」 いわさきちひろ 絵, 松本猛 文 新日本出版社
この本の中でちひろさんは、「大人になる」と題して、次のように書いています。
「人はよく若かった時のことを、とくに女の人は娘ざかりの美しかったころのことを、何にもましていい時であったように語ります。けれど私は自分をふりかえってみて、娘時代がよかったとはどうしても思えないのです。
私は一見、しあわせそうな普通の暮しをしていました。けれど生活をささえている両親の苦労はさほどわからず、なんでも単純に考え、簡単に処理し、人に失礼をしても気付かず、なにごとにも付和雷同をしていました。思えばなさけなくもあさはかな若き日々でありました。
そんな頃に私は戻りたくはないのです。今はあの頃よりはましになっていると思っています。そのまだましになったというようになるまで何十年も失敗を重ね、冷汗をかいて、少しずつ少しずつ、ものがわかりかけてきているのです。何で昔にもどれましょう。」(後述略)
私はまるで自分を見ているように共感しました。しかもこの年になってまだまだ、ものがわかりかけている、としか思えないのです。
日常の出来事や出合いから、小さな子どもたちからも新しい見方を学ぶことが多いのです。
この本から良い刺激をいただけたことはもちろんです。
藤田純子