「殺人者の涙」 アン=ロール・ボンドゥ, 伏見操 訳 小峰書店
アンヘル・アレグリアは殺人者。逃亡生活にうんざりした彼は隠れ家を得るため、チリの最南端、太平洋の冷たい海にのこぎりの刃のように食い込む地の果てに住む夫婦を殺します。
一人残された息子のパオロは生きのびるため、殺人者と一緒に暮らすことになるのですが…。
なんとも強烈な出だしからはじまる、緊張感あふれる二人の生活。何も与えられず、何かを与えたことのない殺人者と愛されたことはなく愛されるとはどんなことかを知らない少年。空疎な二人が共同生活を送る中から生まれる「なにか」。
生きる意味、赦すということ、贖罪とは…。決して心温まる物語ではないし打ちのめされる展開に読み続けるのがつらいこともあるにもかかわらず、未来への希望が感じられる読みごたえのある小説です。