「ソノリティ はじまりのうた」 佐藤いつ子 KADOKAWA
若い人たちの成長物語は、心躍り励まされ、読後感も良いものが多いように思います。合唱コンクールの指揮者に選ばれた内気な中一の女の子と、彼女を取り巻く同級生たちを描いたこの作品も、そんな心地よい物語でした。
合唱に興味がもてず時間の無駄遣いだと思う子もいれば、なかなかまとまらないハーモニーにいらいらする子もいたり。高校時代は音楽部(合唱部)だったこともあり、自分の体験と重なる部分が多くて、なんだか自分もクラスの一員になったような気持ちで読みました。
音楽に限らず、仲間と一緒に何かを作り上げていく難しさと楽しさ、そしていつしか一丸となってまとまっていく高揚感はぜひリアルな生活の中で体験してほしいのです。けれども、それもなかなかままならぬ昨今。せめて本の中でたっぷりと味わってください。