「心の色 ことばの光」 清水妙 新日本出版社
「万葉集」の天武天皇と、妃のひとり藤原夫人の雪のうたのやりとり。
【天皇】わが里に大雪降れり大原の 古りにし里にふらまくは後(のち)
→私のところには大雪が降ったぞ。だかあなたのいる大原は古ぼけた時代遅れの田舎だから、雪のもうちょっと後になって降るだろうな
【藤原夫人】わが岡のおかみに言ひて降らしめし 雪のくだけしそこに散りけむ (*おかみ…岡や水辺に住む龍神)
→何をおっしゃいます。私の岡の龍神に命令して降らせた雪のそのちいさなかけらがそちらに散っていたのでしょう。
天皇のからかいの歌に対し、余裕の笑みを浮かべて答えた藤原夫人。2人の住まいは歩いて15分ほどの近さであったことも可笑しい。
仲の良いふたりがしゃれた言葉あそびをしている。
「徒然草」「枕草子」「方丈記」など古典に出てくる人々は、真面目で堅苦しいイメージを持ちやすいですが、彼らはユーモア、ロマンティスト、男気、色気、ポジティブ、せっかち、涙もろい、恋多いなど親しみのもてる素の性質が歌に入り、この本を通してとても魅力的な人々に出会えた。そんなうれしさを味わった。
ことばの言い回しが難しいので、学生の頃から全く興味を持てなかった古典。故の知識のなさにちいさなコンプレックスを持っていたけれど、現代語の説明があるこの本に、まさに「学び直し」させていただき、ためになった!得した気分です。
藤田純子