「居酒屋ぼったくり」 秋川滝美 星雲社
最近、それを目当てに探しているわけではないのに、料理を含めて行きかう人情…、そんな本に巡り合います。
両親が亡くなって、妹の薫と店を継いだ美音。「ぼったくり」という店名は父親がつけた。「誰にでも買えるような酒や、どこの家庭でも出てくるような料理で金を取るうちの店は、もうそれだけでぼったくりだ」という。そんな自嘲めいた台詞の裏には、いつだって父の料理人としての吟じが隠されていた。
そこに通ってくる常連さんは、丁寧に心をこめて作ってくれている家庭料理の数々だと知っている。そして全国のうまい酒。口に含んだとたん笑みがこぼれる。
店を営む姉妹と客たちの話題は、酒や料理や誰かの困りごと。悩みを抱えて暖簾をくぐった人は美味しいものと、人情に癒されて知らず知らずのうちに肩の力を抜く。居酒屋「ぼったくり」はそんな店である、と文中に書かれている。
心のあたたまる一冊です。