「きいろいゾウ」 西加奈子 小学館
10年程前に頂き、絵本のようなタイトルが気になりつつも読まずにそのまま…。この本の舞台とよく似た環境の土佐町で生活する今、内容がほどよく心に浸透してきます。
主人公は田舎に移住してきた若夫婦の二人です。まったりとした日常を描いていますが、妻側からの視点と毎日寝る前に部屋にこもり日記を書いている夫側の視点、同じ事象を二人各々の観点で描かれています。妻は少し精神不安定、夫は背中に彫り物があるけれども、反社会的勢力の人ではなくごくごく穏やかな精神の小説家。きいろいゾウは妻の不安度が増した時、要所要所に登場します。大人びた不登校の児童、これは分別・理性を具象化した存在だと推察します。
一波乱あり、夫の彫り物の謎も解け、やはり普通のちょっとした日常の安らぎのなかに安定した幸せ・普遍的な愛情が存在するのだと導かれます。