笹のいえはこれまでいくつかの取材を受けたことがあって、その記事を見てくれた人がふらりと寄ってくれることがある。たいていの場合、僕か奥さんが居るので、敷地内を見学してもらったり家を案内したりする。でも、たまたま家族で出掛けていて不在なことや、作業で忙しく時間を取るのが難しいこともある。「興味があるんだけれど、突然行くのは気がひける」という方もいた。
そういえば、知り合いのシェアハウスでは、オープンデーというイベントを開催して、その日は誰でも自由に出入りできるようにしてるらしい。笹でもやったらどうか。と奥さんが言ったので、それじゃあ、やってみようということになった。
日にちを設定して、「あるもんでキッチン」と不用品を持ち寄るフリーマーケットも同時開催にした。
Facebookでイベントページを公開したとき、ふと心配になった。
「誰も来なかったら、どうしよう」
細い山道を不安になるくらい進んだ先にある笹のいえ。しかも、平日。果たして、来る人はいるのだろうか。
まあ、どちらにせよ、お昼ご飯は作るんだし、ひとりも来なくてもいいじゃない?と奥さん。
作業で慌ただしい毎日だけど、来るか来ないかわからないお客さんをゆっくり待つのもいいか、と僕。
とりあえず、家を掃除して、来客に備える。いつも散らかっている部屋が片付くのは、お客さんが来る最大のメリットだったりする。
そのうちにひとり、またひとりとお客さんがやって来た。友人が過半数ではあったが、市内などからはじめていらっしゃった方たちもいた。こんな遠いところまでわざわざすいません、と自分で企画しておいて恐縮してしまうのが可笑しい。挨拶もそこそこに、台所のかまどに火が入り、お昼ご飯作りがはじまる。持ち寄った食材を、皆で調理していく。僕は末っ子を抱っこしながら、移住までの経緯をお話ししたり、五右衛門風呂やコンポストトイレなどについての質問に答える。
5月6月と一回ずつ開催したが、どちらにも10名を超えるお客さんが来てくれた。女性が多いが、男性や子どももいる。6月のときは乳児が数名いて、皆でかわるがわる抱っこしたり、あやしたりして、なんだかちょっとしたコミュニティみたいだった。お昼を食べてお腹いっぱいになったところで、ひとりずつ自己紹介をすることにした。「笹のいえの暮らしを見てみたかった」「オーガニックな食に興味がある」「農的暮らしや移住を考えている」など、参加した理由は様々だった。お客さん同士のおしゃべりから共通点が見つかり、連絡先を交換している姿もあった。
特に時間は決めていなかったので、それぞれの都合の良いタイミングで解散。三々五々人が集まり、三々五々帰っていくのを自分の家で見ているのは、なんだか不思議な感じだった。
笹の風通しを良くするために、そして家を片付けるためにも、続けていけたらと思う。
写真は本文とは関係ないのだけれど、木臼の中で気持ち良さそうに昼寝をするイネオ。まるでお風呂に入っているようだ。