私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西野内小代

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「ホテル・ピーベリー」 近藤史恵 双葉社

高知新聞の記事下広告にこの本が載っていた。
作者の名前が気になり金高堂書店へ赴く。もちろん同姓同名に過ぎなかったのだが…。

舞台がハワイ島らしいので、そちらにも興味があり読み始めた。事情があり、小学校の教師を辞職した20代の男性が主人公。友人に勧められたリピーターお断りの曰くありげなホテルに長期滞在の予定で、自分探しのような旅に出る。

鬱屈した青年の内面描写のように始まる。そしてある日、宿泊者の一人がホテルのプールで溺死し、ミステリー小説へと変貌する。謎だらけの中、何かを知っていた2人目がバイクで事故死。オーナーはホテルを閉じるので予定を繰り上げて退去するようにと通告してくる。不審な気持ちを抱きつつ帰国する。

4ヶ月後に再びハワイ島ホテル・ピーベリーへと向かう。謎解きは一気呵成、緻密な伏線が張られていた訳でもなく、日本で調べた事実を元に解決へと導く。こうして主人公の1泊2日のハワイ島再訪の旅は終わる。

少し消化不良の感は否めないが、ハワイ島の情景・空気感がさらりと描かれており、旅した気分にさせてくれた。

 

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私の一冊

西野内小代

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「元彼の遺言状」 新川帆立 宝島社

テレビドラマ化され、不思議なテーマが気になりつつほとんど寝てしまい、何が何だか分からずじまいとなった。スッキリするべく原作を購入。目の回るような画面展開を気にすることなく、自分のペースで謎解きを理解できた。

買収した会社が実は問題だらけだった。後々に禍根を残さないように周到に計画された遺言だった。一見辻褄が合いそうにない珍妙極まりない遺言が、実は未来をみすえた措置であったと若き女性弁護士は見抜く。

主人公の女性弁護士はお金の亡者である。しかしながらお金以外にも大切なことがあると気づき始める。その微妙な心の変化も見逃せない。

 

 

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私の一冊

山門由佳

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「珍日本紀行 東日本・西日本編」  都築響一 ちくま文庫

先日、土佐町で絵とおせんべいの展覧会を行いました。土佐町に移り住んではじめての個展。『絵を人にみせる』行為というのは、私にとっては素の自分をさらけ出す行為に近いです。

個展を終えて、もう裸以外全部見せるものは見せてしまったように思えて、ある意味ひと皮むけたといいますでしょうか、なんだか吹っ切れたような気分です。どれだけ取り繕っても、あんな絵やこんな絵を描くことがバレてしまった以上、もう隠すものはなくなった今、正直に私が「珍スポット」と呼ばれるちょっと変わった場所を好む嗜好があることをここでカミングアウトします。

そして、その珍スポット略して珍スポのガイドブックいや、バイブルであるこの2冊の書は、わたしが旅を計画したとき、まず珍スポの有無を確認する大切な案内書です。 日本の各地に、ちりばめられたあんな珍スポやこんな珍スポ。 ふつーの旅行では物足らないとき、珍スポを訪れてはいかがでしょうか。

なんだコレ?!な珍なものを目の前にしたとき、眠っていた感覚が呼び覚まされるかもしれません。ちなみにこの本で紹介されている高知県の珍スポは、安芸市「西沢鮮魚店」、香美市「アンパンマンミュージアム」、野市町「龍馬歴史館」、安芸市「伊尾木洞」、高知市「沢田マンション」、土佐山田「倭華宮」。

1997年当時。 わたしとしては、香美市の龍河洞にある尾長鶏センター(残念ながら2022年8月現在休館中とのこと)や、大豊町の日本一の大杉&美空ひばりの曲が流れる歌碑、土佐清水市の足摺海底館、海のギャラリーなんかも珍スポ感を感じるスポットです。

 

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私の一冊

西野内小代

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「ほとけさまが伝えたかったこと」 岡本一志 三笠書房

先日、AI(人工知能)の本(コミック)をお借りして読んだ。

AIが「心」を持つというコンピューターとしての重大な欠陥の為に、処分の対象となってしまったという内容だった。この場合の「心」とは、慈しみなど善に焦点を合わせている。

「ほとけさまが伝えたかったこと」では、人間が本質的に持っている悪の心の部分を矯正していく(仏教では修行)という事に主眼を置いている。

悪を乗り越え、善になるのか…。そもそも善であったはずが利己的な部分に浸食され悪の要素で満たされていくのか…。

AIに善の心を求めてしまうこと自体が、自分の心の弱さの現れなのかもしれない。

人生、修行あるのみかな?

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ヒナゲシの野原で~戦火をくぐりぬけたある家族の物語~」 マイケル・モーパーゴ 評論社

マルテンスの家の玄関には額に入った紙っきれがありました。その「紙っきれ」にはえんぴつで詩が書いてありました。

 

フランダースの野にヒナゲシの花がゆれる  何列も何列もならぶ十字架の間に。

空にはヒバリが 勇敢にさえずっては飛ぶ 砲声に声をかき消されながらも。

俺たちは死者。ほんの数日前まで、 生きて、夜明けを感じ、夕焼けを目にし、 人を愛し、人に愛されていた。

だが今、俺たちは横たわる このフランダースの野に

 

この紙っきれを持って帰ってきたのはおじいちゃんのお母さん、マルテンスのひいおばあちゃんのマリーでした。

ある日おじいちゃんはこの詩とおばあちゃんのことを話してくれました。その日から、マルテンスにとってもこの詩は大切なもの、お守りのような存在になるのでした…。

第一次世界大戦後、英連邦の国々では戦没者追悼記念式典を11月に行ないます。その折、追悼する兵士のシンボルになるのは赤いヒナゲシの花。永遠に戦争がなくなり、世界の人々が和解し、愛し合い、平和に暮らせる日がいつかきっとくる、という希望の象徴になぜヒナゲシが使用されるようになったのか。その由来が語られる巻末もぜひお読みください。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「おとなってこまっちゃう」 ハビエル・マルピカ作, 宇野和美訳, 山本美希絵 偕成社

メキシコは日本と同じく、男は男らしく、女は女らしくという考え方が伝統的に強い国だそうです。とはいえ、2021年1月の列国議会同盟のデータによると、メキシコは国会議員の女性比率が48.4%で、世界で6番目に高い国でもあります(ちなみに日本は9.9%で166位)。このように女性の社会進出が進んでいるメキシコで、現役の弁護士として活躍している母親を持つ女の子・サラが本書の主人公です。

人権派弁護士のママは世間の偏見に真っ向から挑み、サラの叔父(母の弟)のサルおじさんがゲイだということにも誰よりも早く理解を示しました。友だちの悪口を根拠もなく言えば即座にたしなめてくる、自慢のママです。 ところがおじいちゃん(ママの父親)が再婚することにしたと聞いた時、ママはかんかんになって反対します。ましてや相手がママと同じくらいの年齢の女性だと知ると、まったく聞く耳を持ちません。 なんとかしてママがおじいちゃんの結婚を受入れてくれるよう、別れて暮らすパパやおじさんを巻き込んで奮闘するサラの姿に、ハラハラさせられたりニヤリとしたり…。

とても楽しいコメディータッチの物語でありながら、性別や世代にとらわれず、自由な価値観や多様性を大切に生きていくことの素敵さも伝わってきます。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「小春日和にぽっかぽか」 砂浜美術館

美しいキルトが掲載されたこの冊子は、1996年11月に高知県黒潮町の砂浜美術館が発行したものです。砂浜美術館が地元の女性たちと企画した「こどもたちが選ぶ・潮風のキルトコンテスト」への思いを残しておきたいと作った一冊だそうです。

掲載されている受賞作品の中に、土佐町の山中まゆみさんの作品があります。

藍色の布を一つずつ繋ぎ合わせた「旅立ちの時」。

「早明浦の湖底に眠る柿ノ木の部落。山里のその小さな集落には、秋になると赤い実をたわわにつける柿の古木があり、いつの頃からかそう呼ばれるようになっていた。

大きな柿の木をいつでも見ることのできる段々畑には藍が穫れ、綿が育った。庄屋が住む広い屋敷の一棟は機屋になっており、おまつばあさんが主人の寝床をぬくめるために藍染の布を織った。

百年を経ても変わらぬ藍の青。柿ノ木の部落は古木と共に人造の湖の底に沈んでしまったけれど、女たちに愛された藍染はまるで誕生を繰り返すかのように女から女へと手渡され、その度に昔を語りながら生きてきた。」

まゆみさんは、おまつばあさんが藍を育て染めただろう布を川村千枝子さんから手渡されたそうです。川村千枝子さんは、さめうらダムに沈んだ集落の記録を「ふるさと早明浦」と題し、一冊の本にまとめられた方です。まゆみさんは、千枝子さんに聞いたお話と受け取った藍色の布からイメージを膨らませ、このキルトを縫い上げたとのこと。

まゆみさんがこの冊子を見せてくれた時、ちょうど編集部では、連載「さめうらを記す」を始めたところで、不思議なご縁を感じたことでした。さめうらダムに沈んだ集落の人たちの元を訪ね、話を聞き記録する連載で、柿ノ木集落の方からもお話を伺いました。その中の一人、川村雅史さんは川村千枝子さんのご主人です。

ご縁というのは本当に不思議で、尊いものです。この冊子が、実はつながっていたご縁の糸をもう一度結び直してくれました。

 

川村雅史さんの場合

*「秋になると赤い実をたわわにつける柿の古木」はこちら

「柿の木」の由来

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私の一冊

山門由佳

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「畑の一年」 向田智也 小学館

この春、畑で苗から育てて立派なキャベツができた! はじめての収穫体験は想像以上にうれしかった。もしかして、子どもを立派に大人に育て上げたような達成感に似ている‥のかな?? まだ育児は道半ばで、その達成感を味わうにはまだまだ時間が要るけれど。

しかしキャベツは立派に育ってすっかり食べ去り、こんなわたしでもあんなものができるんだ!とおおきな歓び、ちいさな自信へとつながった。またせっせとさつまいもやら生姜やら頂いたスイカ、オクラ、ナスの苗を畑に植えた。

元気がないとき、草むしりをする。 むしりまくっているうちに、元気が出てくる。土がわたしのなかのマイナスの氣を吸ってくれているように感じる。そしてありありと目に見えてわかる草むしりの成果も爽快。 あとごぼうを種から育てているけれど、なかなか成長がゆっくりで、どうなっていくのかこちらもまた目が離せない。やっぱり、畑は子育てに似ているかもしれない。大変だけど、興味深い。手間も時間もかかるが、大きくなるのが楽しみで、その過程こそ愛着の湧く源であり。

こちらの一冊は、季節とともに移り変わる畑の地上と地下の様子が描かれていて一目瞭然でわかりやすい。畑にたくさんの生き物たちが密接に関わり合いながら暮らしているのがよくわかる。人間の世界もおなじ。いろんな年代、いろんな性格の人が暮らしている多様性。畑を通して、人生や社会を感じられる。そんな壮大な話になってしまいました。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ヴァイオリニスト」 ガブリエル・バンサン作,今江祥智訳   BL出版

プロ、アマを問わず、試合勝者へのインタヴューで時々「期待や声援を力に変えて頑張りました」という趣旨の言葉を聞くことがあります。そのたびに、すごいな~、強いな~と感じ入ります。

けれど気にかかるのは同じように努力し、期待され、応援されながら勝者にはなれなかった数多くの人たちのことです。違う場面で勝者となる人もいるでしょうが、勝者とならないまま舞台を去っていく人は大勢いることでしょう。周囲の期待を裏切ってしまうこと、そのなかでも親の期待に応えられないのは辛いことです。

それに囚われ、和解しがたい確執になってしまうこともあるでしょう。そんな厳しい状況で、生きあぐねているヴァイオリニストの青年が、世間一般の成功とはちがう視点で自分の音楽をみつめなおし、自身を認め、受け入れ、生きがいや居場所を見つけるまでを描いているのがこの絵本です。

たぐいまれなデッサン力を活かしたモノクロの画面と、孤独な青年のつぶやきが見事に調和し、素朴な、けれども力強い物語の世界を創りあげています。

 

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私の一冊

西野内小代

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「世界の王室うんちく大全」 八幡和郎 平凡社

華やかな英国王室、美しいモナコ王妃(正確には公妃らしい)、王室離脱の醜聞等報道機関からの情報は限られている。

世界各地の王室の成り立ち、終焉等の詳細な経緯が記述されている。

王室の起源、変遷を可能な限り遡り現代へと繋げている。似たような名前がズラリと並び混乱してくるが、お勉強をしている訳ではないのでサラリと読み流す。

王室の内幕を垣間見た感ありの一冊です。

 

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