私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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『銀座「四宝堂」文具店』 上田健次 小学館

銀座の片隅にある老舗文具店「四宝堂」。創業は天保五年(1834年)と歴史ある文具店の現在の店主は宝田硯。まだ三十代半ばと若いながら、文具を愛することと客への気配りは、誰にも引けを取らない銀座の名物店主です。

第一話「万年筆」は、親に代わってずっと慈しんで育ててくれた祖母のため、初任給で求めた贈り物に一筆添えようと店を訪ねた青年が主人公のお話しです。店主に案内された棚には、手漉き和紙や押し花を漉き込んだ洒落たもの、粋な洋箋や封筒がぎっしりと並んでいて目移りするばかり。店主に助言をもらってなんとか便箋と封筒を決めた青年が取り出したのは、まだ一度も使ったことのない万年筆。それは

小編5編が収められているのですが、客と文具をめぐる人情味あふれるエピソードはどれも味わい深く、読後感は申し分ありません。

夏の暑さも峠を越し、読書によい季節となってきました。秋の夜長のおともにいかがでしょうか?

 

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私の一冊

西野内小代

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「ゼロからの『資本論』」 斎藤幸平 NHK出版

はじめに・・・『資本論』を読破するのは、かなりの難行です。と書かれているように、タイトルだけで尻込みをしてしまう。

この本は“ゼロから”の入門書として役立てていただきたい、そして近年のマルクス研究を踏まえてまったく新しい視点で読み直す、と説明がある。それならば私なりに読めるかなと思い買ってみた。

分かり易く解説してくれてはいるが、読み終えるには多くの時間が必要だった。

「SDGs」が盛んに唱えられる昨今であるが、マルクスが考え、結論を出せずにいた持続可能な理想社会の基本と同じであるように感じた。目新しく見えても、危機感をもって、目指し求める社会は、過去も現在も共通であり、困難な道のりである。

「本書はひとつの問題提起です」と、著者は述べている。

 

 

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私の一冊

古川佳代子

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「風が吹くとき」 レイモンド・ブリッグズ作, さくまゆみこ訳 あすなろ書房

イギリスの田舎で穏やかな生活を送っている老夫婦。悠々自適に暮らしていたある日、町に出かけた夫は、戦争が起こるかもしれないと妻に話す。若いころ世界大戦を経験している妻は、話半分に聞き流す。

それよりも大事なのはお昼ごはんの献立だ。メインはフレンチフライなのかソーセージなのか?デザートはパイかプディグか?だって戦争なんて起こるはずはないし、万が一起こったとしても爆弾が2、3発落ちて、そのうちな~んだってことになるわよ、と…。

ところが突然ラジオから「3日のうちに戦争が勃発しそうだ」と政府発表が流れてくる。焦る夫と日常生活を守ろうとする妻。政府の言うことを盲目に信じる夫婦は、自分たちがどんどん死に向かっていることに気がつかない、いやそれとも気がつかないふりをしているだけなのか?

20数年前に出された絵本だけれど、まるで今の世界状況を予言しているようでドキドキしながら読み返しました。読むのがつらくなるかもしれないけれど、だからこそ、目をそらさずにたくさんの方に読んでほしい絵本です。

 

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私の一冊

西野内小代

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「RAO’NEWSSTAND」 石川拓也 合同会社風

書店で物色していると、私が立ち寄る事の少ないコーナーから夫の手招き、指さす棚に発見!

石川拓也さんの写真集がそこいらを圧倒する雰囲気を醸し出し、黒の表紙がデンと座っていた。

抱えていた本を書棚に戻し、少し重量のある写真集を手にレジへ一直線。

写真の事には全く不案内であるが、自分なりの鑑賞が可能かなと期待して持ち帰る。

その後、高知新聞でも紹介されていたので、その記事を参考に、この写真集を傍らにおいて日々鑑賞している。

 

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私の一冊

山門由佳

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「火垂るの墓」 野坂昭如 徳間書店

はじまりの舞台は昭和二十年の神戸。何年にもわたって戦争を続け、苦境にたたされた日本でひっそりと紡がれた兄妹の物語。有名すぎるほどに有名なこの作品を私はこれまたうすぼんやりとしか知らなかった私は、息子が小学校の図書室から借りてきてやっと今回ちゃんと出逢いました。

戦争なんて、過去の話。どこか遠い国の話で、私には無関係。恥ずかしながら、そんな意識があったのだと思います。けれども、この度この物語を息子と娘に読み聞かせながら途中でぽろぽろ涙が溢れて、ついには読むのも詰まるくらいに苦しくなってしまいました。子供達が困惑するほどに…。(主人公の兄と妹が、わが息子と娘にビジュアルが似すぎていることも感情移入してしまう大きな要因でもある。)

最初から最後まで、どこをとっても悲しくてつらい。お兄ちゃんの清太が、必死に守ろうとした妹の節子。けれどもその願いも虚しく節子を失い、性も根も尽きた清太の死に様は悲しみをこえて戦争を引き起こした大人達に怒りすら覚えます。

実際、今この瞬間も戦争をしている国があるということ。今の自分にできることはなんなんだろうか。夏休み、息子と娘を原爆資料館に連れていくことからはじめようと思います。

 

 

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私の一冊

山門由佳

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「ごみを出さない気持ちのいい暮らし」 家の光協会

よいお通じはよい健康状態を表すのと同じく、気持ちのよいごみの出し方は気持ちのよい暮らしに通じるのかもしれません。

ごみに対して正直いつもいつも意識的ではないのですが、できることからすこしずつすこしずつ取り組もうと思います。

そういえば冬に庭に生ごみを埋めていた時期があり、そのなかにじゃがいももあったようで、この春植えたつもりのないじゃがいもが生えてきて、しかも収穫してカレーにいれて食べられたときは、ごみがまさに宝に変わる魔法のようで嬉しかったです。

こちらの本に出てくる6名の方が提案しているごみに対しての意識やごみを減らす工夫は都会にいてもいなくても、庭があってもなくても真似できることがたくさんありました。

とりあえずわたしはまたこの夏、庭に生ごみを埋めてみよう。

 

 

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私の一冊

古川佳代子

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「100年たったら」 石井睦美文,あべ弘士絵 アリス館

出会った瞬間から、親しみをもったあの人。そばにいるとしっくりとして、心地よさを感じる友人。もしかしたらその人は、遠い昔どこかで一緒にすごしたことがある、大切な存在だったのかも? そんなことを思うようになったのは、この絵本を読んだからです。

ずっと昔、広い草原にたったひとりで暮らすライオンがいました。ほかに動物はなく、ライオンは草や虫を食べて飢えをしのいでいました。ある時、ライオンの目の前に、ぼろぼろの翼をしたちいさな旅鳥のヨナキウグイスが降り立ちます。鳥はライオンに自分を食べればよいといいますが、ライオンは断ります。その時から、ライオンと鳥の、穏やかで幸せな暮らしがはじまります。

けれどもヨナキウグイスに残された時間はわずかしかありませんでした。別れが迫ってきたとき、ずっと一緒にいたいというライオンに鳥は「100年たったら、またあえる」と言い残してこと切れます。

100年後、ライオンは貝に、鳥は波に生まれ変わっていました。また100年たったとき、ライオンはおばあさんに、鳥は赤いひなげしの花になっていました。

そうやって100年ごとに、ライオンと鳥は生まれ変わり、ある時は魚と漁師に、ある時はチョークと黒板に、あるときはリスと雪のひとひらに生まれ変わっていました。そして…。

生まれ変わり、再会しても、お互いのことは知らないままのライオンと鳥。それでも一緒にいると、なにかしら嬉しい気持ちになるのです。そうして流れていく長いながい時間を思うと、切なさの少し混じった“哀しい幸せ”を感じるのでした。

 

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私の一冊

山門由佳

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「おとしより  パリジェンヌが旅した懐かしい日本」 イザベル・ボワノ パイ インターナショナル

お年寄りには安心感を覚えます。 喫茶店を営む母の店には、毎日多くのお年寄りが来られていました。幼いときからずっとお年寄りは近しい存在だったせいもあるかもしれません。

そのお年寄りをあらわすまさにドンピシャなフレーズをこの本でみつけました。

−時流からはみ出さない「ごく普通」の人間を装ったり、それとは逆に、何が何でも「特別」な人間のふりをしたり、人は誰しも、何かしらの演技をしている。でも、お年寄りたちはそんな長年の重圧から解き放たれて、隠すことなどひとつもない生まれたての赤ちゃんのように、ありのまま、のびのびと生きているように見える。

そうなのです!この自然体、ありのままの姿、『自分』をしっかり持っている姿にきっと安心感を覚えるのかもしれません。繕っている人の前では、自分も決してのびのびいられやしませんもの。飾らないお年寄りの前で過ごす自分がきっと無防備になれて、楽で、好きなのです。

そして、さらに素敵なフレーズを見つけました。

−彼らはまるで、水分の大半が蒸発してしまった果物のよう。より軽く、よりシワシワで、より小さく、でも味わいはより凝縮されている。それぞれの人生が詰まった、エッセンシャルオイルの小瓶たち。

さすが、フランス人の感性だなぁ〜 的確かつお洒落に日本のお年寄りを表現しています。 日本のなかからみるよりも、海外のひとがみつめる日本の姿、お年寄りの姿は冷静かつ正しい気がしました。

ハッとさせられることも多かった一冊です。既視感満載のお年寄りがいっぱい。

 

 

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私の一冊

西野内小代

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「君のクイズ」 小川哲 朝日新聞出版

クイズ番組に出演し勝利を手にしてきたクイズプレイヤーの心理、推測を描いている。

Q1グランプリの覇者として賞金1000万円が目の前となった僕「三島玲央」、対戦相手の「本庄絆」との決勝戦、最終問題での対戦者の「ゼロ文字押し」(問題を一文字も聞くことなく解答)。しかも正解だった。

この出来事の謎を巡って、敗者となった主人公の考察、葛藤を描く。

クイズに人生を賭けた主人公と、クイズは単なる手段と割り切る対戦者。クイズに対する熱量の違いも見え隠れしている。そこには、対戦者の中学時代に受けた壮絶なイジメ問題も浮上する。

クイズの出題等に関して、作り手の作戦、テレビ番組として魅せる出題方法、解答者のMCに対する繊細な観察力を垣間見た内容でもあり、とても興味深かった。

 

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私の一冊

山門由佳

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「われらの牧野富太郎!」 いとうせいこう 毎日新聞出版

絶賛鑑賞中の朝ドラ『らんまん』! 毎朝毎朝、あいみょんの唄う「愛の花」の歌詞やメロディは何度聴いてもぐっと胸が締めつけられます。

牧野博士の天真爛漫な笑顔と植物への真っ直ぐな愛。こんなに好きなものに一直線の人がいたら、周りの人たちはきっと力になって応援したくなってしまうのだろう。

牧野博士の才能を早くから見抜き育てたおばあさま、生涯ずっと支えた奥様の並々ならぬ愛を博士に注ぐ生き方にまた涙…。愛に生きる。生きている間に自分以外の存在にどれだけ愛を注いだか。大切なことを気づかされました。

人生を終えるとき、きっと牧野博士の両手には抱えきれないくらいの満開の愛の花束を手にしていたでしょう。

ありがとう! われらの牧野富太郎!

 

 

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