私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西野内小代

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「海神(わだつみ)の島」 池上永一 中央公論新社

舞台は沖縄、祖母に育てられた3姉妹が、祖母の最後の言葉「祖母の父親が残した秘宝を探し出した孫のみに相続権あり」という具体的には不明な秘宝を巡って話は進む。

少し滑稽味のある内容ではある。

弁護士の話から、年間5億円の地代収入がある土地の相続であることが判明するや否や、3姉妹の争奪戦のゴングが高らかに鳴り響く。

この3姉妹が、まるで現代社会を反映したかのような個性豊かなキャラクター(銀座の有名クラブのママ・水中考古学の学者・地下アイドル)に描かれていて、極端過ぎる嫌いもあるが、テンポのいい場面展開についつい夜更かしをしても読み進みたくなる。

そして、年間5億円の相続の行方は、想像もしていなかった着地となる。沖縄、米軍基地、尖閣諸島など政治的な話題も含まれており、盛りだくさんの内容です。

 

 

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私の一冊

山門由佳

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「絵本 はだしのゲン」 中沢啓治  汐文社

8月、広島平和記念資料館へいきました。近頃、元来の乗り物好きが高じて戦争や戦艦、戦闘機に興味をもちはじめた息子に戦争の凄惨さ、非道さを伝えたいと思い‥ 今の日本の多くの人が戦争を未経験であり、わたしももちろん未経験。阪神大震災を体験したから、地震の恐ろしさは伝えられるけど、戦争は経験したことないゆえにどうやって伝えればよいのか改めて「伝える」側になってその難しさを思い知りました。

ただただ【戦争はダメ!】だけでは、小さな子には伝わらない。何が起きて、何がどうダメなのか。自分自身がよく知らないとそのことを伝えられないこと痛感して、私も学ぶために広島を訪れました。

この絵本は平和記念資料館の売店で手に入れたもの。 すべての展示を見終えたあとに選んだもの。本屋さんで買うよりもっと、重い思いが詰まっています。

元気いっぱいの小学二年生のゲンの日常が戦争によって壊れていき、原爆によって家族が目の前で苦しみながら死に別れる様子、地獄のような光景を迫力のある絵と文章で綴られています。

地震は自然現象だけれど、戦争を起こすのは人間同士。今後も平和を守りつづけるには「戦争を知る」こと。まずはそこから始まると思いました。平和記念資料館、原爆ドーム、平和記念公園を歩いて、呉市の大和ミュージアムでも戦艦大和やたくさんの写真や映像を見て、われわれはもちろん息子も【なにか】を感じ得たようでした。

一ゲンのお父さんは時代や世論に流されず戦争を反対し続けたひと。 どれだけ拷問を受けようとも、考えを変えなかったひと。 「いいか、ゲン。 せんそうは、いえも 人も、すべてをやきつくし、あとにのこるのは、くるしみだけなんじゃ。日本は、せんそうを やめて、せかいの国と はなしあって、みんなが あんしんして くらせる国に しなくては いけんのじゃ」

 

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私の一冊

山門由佳

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「絵巻で見る・読む 徒然草」  海北友雪筆 絵巻 島内裕子 監修  朝日新聞出版

わたしのまわりの現代人はなにか調べたいときyoutubeの動画をみるひとが多いようです。 わたしは動画を見るのがめんどくさいので、だいたい画像検索することが多いです。 そして昔の人もまた絵巻を好んでいろんな話や物語を楽しんでいたそうで‥ 文章よりも絵がわかりやすいのは時代が変わって画像や動画になった今も変わらないようです。

変わらない といえば。いまから約1000年も前の鎌倉時代にかかれた随筆に描かれてあることが現代にも通じることばかりなのは、時代がいくら移ろい変わっていっても,そうそう人間の本質は変わらないということなのでしょうね。

名言、金言好きのわたしにとって徒然草は刺さります。古典が染みる年頃になってきましたが、いかんせん難解な文章は遠慮したいのでまずは絵巻de徒然草でちょうどいい塩梅です。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「せんそうがおわるまで、あと2分」 ジャック・ゴールドスティン作,長友恵子訳 合同出版

第一次世界大戦は1918年11月11日午前11時に終結しました。そのわずか2分前、1918年11月11日午前10時58分に、カナダ兵のジョージ・ローレンス・プライス(当時25歳)は戦死しました。そのエピソードをもとに生まれたのがこの絵本です。

主人公のジュールとジムは、同じ日に、同じ町で生まれました。先に生まれたのはジムで、ジュールはジムより2分あとに生まれました。何をするのも二人は一緒でしたが、ジムがいつも先頭でした。2分早く生まれたジムの方が、足も速いし強かったからです。

ヨーロッパで戦争が始まったとき、二人は軍隊にはいりました。戦争はふたりが思い描いていたものとは全く違い、みじめでひどいものでした。戦場でも二人はお互いを支え合い、なんとか生きのびていました。そして、やっと戦争が終わるというそのわずか2分前…。

世の中に「良い戦争」などあり得ません。戦争はどんな大義名分があっても、愚かで理不尽でみじめなものです。平和憲法のもと、戦争をしない国であるはずの日本ですが、この平和がいつまで続くのか不安になる時があります。絵本を読んだ後、改めて戦争と平和について思いをはせたことでした。

 

 

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私の一冊

山門由佳

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「ままごと」 日本玩具博物館 文溪堂

5歳の娘は毎日ままごとをしています。 かつて少女だった頃の私もこよなく愛したままごと遊びだったのに、悲しいかな今はままごとの相手役になるのは心から楽しめず非常に疲れるようになってしまいました。トホホ

ままごと遊びの起源は紀元前数千年の大昔からあると知りまずはおったまげました。 きっとままごと遊びはすでに人間のDNAに刻まれてるレベルでしょう。日本だけではなく世界各国のままごと遊びの道具もたくさん紹介されており、100年前の日本のままごと道具には“おくどさん”(土のかまど)もあったりして、時代や国によってちがう面白さをほうほうと眺められる一冊です。

一「ままごと」を漢字で書くと「飯事」。この漢字が示すとおり、本来、ご飯を作るまねごとをさしています。けれども、わたしたちがままごとというとき、人形遊びやお客さんごっこなどをふくめた遊びをイメージします。実際、調理や食事のまねから出発して、家庭生活をまねた様々な遊びへと広げる中で、わたしたちは暮らしについて学び、だれかのために何かをする喜びを体験するのです。、、、はっ!そんなに奥深い遊びであったとは。死んだ目をしながら楽しめないなんてままごとの文句言ってられません。今宵も娘とLet’sままごとであります◎

 

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私の一冊

古川佳代子

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「伝言」 中脇初枝 講談社

2021年11月下旬から12月上旬にかけて高知市文化プラザかるぽーとで、中国大陸から引き揚げる日本人の姿を描いた王希奇(ワンシーチー)さんの絵画「一九四六」の展示会がありました。自身も引揚者のひとりであった知人から案内を頂き、会場に出かけました。

縦3メートル、横20メートルの大作には、敗戦の混乱のなか、何とか生き延び、葫蘆(ころ)島の港にたどりついた人びとの姿が描かれていました。その表情、佇まいからは言葉にできない疲弊と絶望が伝わってくるばかりで、かすかな希望も見えません。絵に沿って端から端までゆっくりと進んでいくうちに、自分も行列の一人であるような心持になり、不安と怖さで涙がこぼれそうになりました。

この絵画展開催のために、中心になって尽力されたおひとりが﨑山ひろみさんでした。その﨑山さんの満州での生活や戦時中の日々の様子、満州から日本への引き揚げ等のこと、そして…。

綿密な取材と資料をもとに書かれた物語は、読むことがつらくなる時もありました。それでも、これは読まねばならない作品だと活を入れて、何とかよみおえることができました。忘れたり、なかったことにしてはいけない、過去からの伝言をしっかりと受け止め、次の世代に伝えなくてはと思います。

 

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私の一冊

山門由佳

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「コッコさんのともだち」 片山健  福音館書店

いつも保育園でひとりぼっちのコッコさん。 恥ずかしがり屋さんで、うまく自分が出せないコッコさん。ある日、そんなコッコさんと似た者同士のアミちゃんに出会います。もじもじする2人が、自分たちの着ている服がおんなじ色なことに気づいて、お互いの服に触れあってそおっと手をつなぐところからはじまる2人の友情。

友情が生まれるときの初々しい喜び、どんどん仲が深まる楽しさ。でも、どれだけ仲良しでも仲違いする時もある。友達と遊ぶ楽しさをアミちゃんに教えてもらったコッコさん、2人だけの世界からみんなとも一緒に遊べる世界へ。 そんなちいさなストーリーが甘酸っぱくて、じんわり心温まる大好きな絵本です。

ちなみにコッコさんに似て?内弁慶な娘もこの物語には共感しているのでしょう、何度も何度も読み聞かせを頼まれます。

 

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私の一冊

西野内小代

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「最強脳」 アンデシュ・ハンセン 新潮社

「日本の読者の皆さんへ」と題された最初のページで、この本は親子で読めるように書いた、脳の取り扱い説明書と、紹介されています。

最強脳の行く末は「ドーパミン」と呼ばれる神経伝達物質にかかっている。ドーパミンとは、何に注目し、集中すれば気分を良くしてくれる「ごほうび」が得られるのか、を教えてくれる物質。SNSでの「いいね!」もドーパミンにより、脳から小さな「ごほうび」がたくさんもたらされる、ここにもスマホ依存の原因が隠されている。

衝動を抑えたり、ブレーキをかけたりする脳の部分(前頭葉)は25歳くらいになってから完成する。しかし、ドーパミンのシステムなどは子供の頃にはすでに機能している。

つまり、10代の子供は、ごほうびに非常に弱い、ここが子供や若者がスマホの餌食になってしまう理由。納得のいく分析、恐ろしくなってくる。

この本の結論は「運動をしよう」…。そうすれば脳は確実に強くなる。根拠は運動する事によりドーパミンの分泌が促され、生命活動を活性化するからだそうです。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「挑発する少女小説」 斎藤美奈子 河出書房新社

子どもの頃に出会ってから何度も何度も繰り返し読んでいる『赤毛のアン』や『あしながおじさん』『若草物語』などなど。これらいわゆる翻訳少女小説のどこに惹かれ、今に至るまで飽きることなく読み返しているのか?我がことながら不思議に思っていたモヤモヤに、合点のいく見解を示してくれたのがこの本でした。

本書では9作品が取り上げられていますが、それぞれに曰く、シンデレラ物語を脱構築する『小公女』、異性愛至上主義に抵抗する『若草物語』、出稼ぎ少女に希望を与える『ハイジ』、生存をかけた就活小説だった『赤毛のアン』、社会変革への意思を秘めた『あしながおじさん』、とまったく想像もしなかったキャッチコピーが充てられています。けれども読み解けば、どれも納得のコピーばかり。

不自由な環境の下に置かれ、理不尽な理屈やモラルを押し付けられてもそれに屈せず、己の才能と矜持を武器に健気に戦っていたアンやジュディ。「子どもだから、女だからって見くびられちゃダメよ!」という彼女たちからのメッセージに励まされ、慰撫してもらった子ども時代のなんと幸せだったことか。頭を上げ、明日を見据える凛々しいジョーやローラのまなざしに負けない自分でありたいものですが、さて?

 

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私の一冊

西野内小代

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「しあわせの小径」 YOH  Shomei 日本標準

詩人・画家・絵本作家の「葉 祥明」さんの心に染み入る作品集です。

ページを繰る毎に幸福度が高まっていく。

パッと開いたページを読む、豊かで穏やかなフワフワした空気に全身がくるまれる。

立ち止まり、脳にたくさんの新鮮な空気を送り込みたくなる。

 

 

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