2018年6月

土佐町ストーリーズ

蛍の飛ぶ夜

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夕方に雨があがってむんむんする夜。

そんな夜は「蛍、探しに行こうよ。」とこどもたちが言う。

 

ホタルを探しに散歩に出かけた。

こどもたちが小さな懐中電灯で足元を照らす。

 

水の入った田んぼに、ピンク色のおぼろげなお月さまがゆらゆらと映る。
空を見上げると、お月さまは雲の隙間から現れたり、隠れたり。

すぐそばからも向こうの山の中からも、カエルの鳴き声がする。
腹の底から鳴いているような声、喉元で鳴いている声…。カエルの鳴き声にも色々ある。

小さな橋の下を流れる水の音、歩く自分の足音が聞こえる。
なぜこんなにもいろんな音たちが耳元に聞こえてくるのかなと思う。
夜はそんな時間なのかもしれない。

 

「あ、いたいた!」

 

雨でぬれた竹の葉の先に、ちかり、ちかり、と光る小さな灯り。
両手でその灯りを包んだ息子がそうっとそうっと、手の中をのぞき込む。

手のひらの上で黄緑色のひかりが何度か行ったり来たりして、指の先からふっと飛んでいく。

あたりをひとまわりして今度は息子のおなかにとまった。

 

ちかり。

ちかり。

ちかり。

 

「蛍は一週間しか生きられないんやって。」

そう言った息子のおなかから、ふわり。

顔をあげるとすぐそばの栗の木や、あっちにもこっちにも、山の中にぼんやりとしたあかりが灯っている。

 

「もう帰ろうか。」

「蛍さんおやすみー。」

そう言いながら、もと来た道を歩く。

 

 

玄関の明かりのまぶしさに目を細めた時、ふと気がついた。

こどもたちは「こんな日」に蛍が出ると知っている。

その感覚をいつのまにか身につけていたのだ。

 

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私の一冊

藤田千春

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「永遠の1/4 」 GLAY   磯崎雅彦

今や国民的ロックバンドGLAYの誰も知らなかったヒストリー。

1998年7月に1週間かけ、姪と二人で函館GLAY巡りを慣行した思い出の1冊。

藤田千春

 

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笹のいえ

おこげ

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久々にやっちまいました。

もう何年も羽釜で炊飯をしているけど、稀に(本当に稀に)ご飯を焦がして、重度のおこげを作ってしまうことがある。いつもと同じように焚いているつもりなのに、薪の具合とか、浸水の具合とか、気の緩みとか、そんなことが原因なんだろう。

焦げ臭い!と気づいたときはすでに手遅れの場合が多い。

慌てて軍手を着け、速やかにかまどから降ろす。事実から目を背けたいので、しばらく放っておく。願いが叶うのなら「なかったこと」にしたい。だって、この羽釜は二升炊き。大量のお米を無駄にしてしまったかもしれない。普段子どもたちに「お米は一粒たりとも粗末にしないこと!」と躾けてる父ちゃんとしては、立つ瀬がない。

とはいえ、ずっとそのままにもできないので、えいやと蓋を取り、まずは焦げていない部分をしゃもじで保温ジャーに移す。次はおこげの番だ。

しばらく置いておいたので、釜の中が蒸れて、おこげが取れやすくなってるのはせめてもの救いか。

剥がしたのをバットに並べて、天日に干しておく。

そのうち奥さんが気がついて、僕の心情を察し、静かに料理してくれる。

定番は、おこげせんべい。

油でじっくり揚げて、塩や醤油を振りかければ、カリカリで香ばしいせんべいの出来上がり。

「このせんべい、こげてる〜、にが〜い」という子どもたちのツッコミに、「そ、そうかな。おいしいけどな」と小さい声で答えつつ、いつもより食べる速度が速い父ちゃんなのであった。

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私の一冊

石川拓也

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「梅原デザインはまっすぐだ!」 梅原真著,原研哉著 羽鳥書店

デザイナーの梅原真さんと原研哉さんの対談集です。
 
どちらも非常に素晴らしいデザイナーですが、一言でデザイナーといってもその仕事のスタンスは全く違います。そしてその違いがあることがとても良い。
 
梅原さんはご存知のとおり高知をフィールドに「土地のチカラを引き出すデザイン」。
原さんは計算され尽くした繊細な知性を感じる絶妙なバランスの上に成り立ったデザイン。
 
ものすごい馬力のあるブルドーザーと、緻密に組み上げられた最速のF1カーが仲良く対談する本です。例えれば。

 

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笹のいえ

今日の保存食

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今シーズン最後かもしれない葉ワサビを収穫してきた。

笹には元わさび畑だった生き残りわさびがひっそりと自生している。あまり量は取れないが、季節の恵を毎年その元畑からおすそ分けしてもらう。

わさびの葉っぱは、そのままでは辛味がないので下処理してからしっかり蓋を閉めて瓶詰めにしたら、もうさっさと食べちゃうのが鉄則。貴重だけど大事に残しておいてもあの美味しい辛味がなくなってしまうばかりだから。

今回は粕漬けと醤油漬けの2種類を漬けてみた。どちらも酒のアテに、ごはんのお供に最高だ。

今、この葉ワサビを使ったお茶漬けがマイブーム。父ちゃんが育てたお米をかまどで炊いて、自家製の醤油とお茶、削りたての鰹節、そこに葉ワサビの醤油漬けを乗せて食べる。

こんな贅沢な朝ごはんはなかなか味わえないかも知れない。

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私の一冊

藤田千春

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「6さいきゅうし」 丸森賢二 医師薬出版

歯科衛生士学校卒業の時に「歯で一番大切なのは、初めて生える大人の歯、6歳臼歯だ」と記念に買った一冊。

 

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