随分とご無沙汰しておりました。お久しゅうございます皆さま。季節の変わり目には色々と忙しいものですが、今年はより一層慌ただしさが際立っていたと思います。皆さま健やかでお過ごしでいらっしゃいましょうか。
例年の今時分といえば、なんとなしに春の陽気にふわふわと浮き足立つものです。しかし、世間は新型コロナウイルス、“COVID-19”によって別の意味で浮き足立っています。お陰様で私達は、まるで指揮系統を失った蟻の集団のよう。その中の1匹である私はとにかく目の前にある我が事を、どうにか達成する事が精一杯です。春盛りの桜の蜜を味わう余裕すらありません。こういう時、全ての判断を天才的に賢い人に委ねてしまえたら、私達は楽になれるのでしょうか。まさか。なんて馬鹿ばかしいジョーク。自分の責任を誰かに背負ってもらえるのは18歳まで。お酒タバコは20歳から。そういうことでしょう?(笑)
さて、コロナウイルスについて調べてみますと、今までに人に感染するものは6種見つかっており、今回の発見で7種になることになります。その中でも4種ほどは基本的に風邪と呼ばれる感冒症状を引き起こします。その他の2種はSARS(重症急性呼吸器症候群)と、MERS(中東呼吸器症候群)だそうです。COVID-19はエンベロープウイルスという分類もできます。他にはエボラ出血熱、ヒト免疫不全ウイルス等が、多くの種が含まれています。これらはウイルスの最も外側に、主にタンパク質から成る膜をもち、これが人間の細胞に違和感なく侵入することで、より感染力を高めているようです。逆にその膜を壊してしまえば感染力が下がる点で、消毒用アルコールや有機溶媒、石鹸が有効なため、エンベロープを持たないウイルスよりも不活化が行いやすいのは不幸中の幸いと言えるでしょう。
COVID-19は、野生動物が保因していたものが、人への感染能力を獲たと考えられています。確定事項ではありません。しかし、野生動物が保因していたウイルスが人への感染能力を獲得する例は他にもあり、大半が未開の地の開発によって保因動物と人との出会いが引き起こしています。熱帯雨林の奥深く、永久凍土の水滴の中。開発により資源を得て、私達はより大きく複雑に豊かな産業文明社会を作り上げていきます。無作為な私達の欲望が切り開いた地に彼らはいたのです。何となく、本編に近づいてきたでしょうか。
さてさて、
巨大産業文明が亡びて1000年後の世界を描く「風の谷のナウシカ」。
今回は3巻に入っていきます。
冒頭はケチャと、アスベル、ユパがボロボロの船で逃げている所から始まります。ケチャはマニ僧正の死を嘆き泣き疲れて眠ってしまいますが、2人は操縦しながらお互いの遍歴を語り合います。しかし、雷雲をかわしそこねそし損ね腐海に遭難してしまいます。一方ナウシカはクシャナと共に南下していました。
クシャナとクロトワは戦略をねっていますが、ここでクシャナがクロトワに迫ります。クシャナは、クロトワが当初からスパイであること、自分を謀反人にする作戦であることを見抜いており、ここでしきりに友軍と合流することを勧めるクロトワが、今後使える駒か、ここで殺すべきか見切りをつけたようです。クロトワもクロトワで、平民上がりの貧乏軍人が王族の秘密を知って生きていられた試しがないのを察しており、ここでクシャナとクロトワは正式に上司と部下という形になりました。クロトワの賢さは当初から少しずつ描写されています。2巻でクシャナを助けた機転もそうです。今ではクシャナの部下たちは、クロトワのことを“中央から派遣されてきた胡散臭い参謀“から“しがない平民出身貧乏軍人で天才的コルベット乗り“、“殿下に忠実で上官だけど気さく“、とまで好感度を上げています。クシャナもクロトワの手腕を鑑みあえて許したのでしょう。ところが、クロトワを見出し潜入させたのがヴ王自信であることを聞き、顔色を変えます。やはり、深い恨みと憎しみは隠せないのでしょう。
その後、奪われた自分の子飼いの兵である第三軍に合流すべく進みますが、途中の集落で異常な行動をとる兄王子率いる第二軍のケッチ2機を目撃し、迎撃します。集落は襲撃される前に人も動物も死んでおり、異常な状態でした。これを不審に思いながらも、敵の大艦隊を発見しそれを低く飛びながら追従します。その時でした。窓から外を見ていたナウシカは、猛烈な速さで死んでいく木を発見します。そして瘴気が来ることを確信します。本来ナウシカには命令権はありませんが、全員にマスクをつけるよう指示し、高度を上げるように言います。
実はここに面白いシーンがあります。上には土鬼の大艦隊がいる為、クロトワが『だれかあのバカ娘をだまらせろ!!』と罵声をあげているのにもかかわらず、全く無視して周りは必死で指示通りに動いているのです。その時のクロトワの顔(笑)。しかもちゃんと指示通りに動くし、マスクもつけています。クロトワも類まれな人心掌握術をもっていますが、ナウシカは何もせずとも、人がついて行きたいと願うのです。クシャナも同じ、この人について行きたい、と思わせるカリスマ性があります。ナウシカとクシャナは全く違うように見えて本質は同じで、だから似たようなカリスマ性を持っているのかもしれません。
さて、瘴気の正体は猛毒のヒソクサリばかりの森でした。しかも腐海の蟲ですら死ぬ強毒性の異常な瘴気です。瘴気を避けるため、仕方なく敵艦隊のいる上へ出ます。そのまま戦闘になり行き着いた先は、第三軍第三連隊が守る拠点でしたが、今まさに土鬼に制圧される所でした。クシャナは怒りにかられつつも彼らを看取り、退避したのでした。その夜、クシャナとクロトワは敵地の中唯一生き残っている拠点の指揮権を奪いう作戦を立てていました。一方、ナウシカは強毒性のヒソクサリばかりの森のことを考えていました。クロトワには伝えていたようですが、人工のものではないかと推測しています。王蟲はナウシカに“南の森がたすけを求めている“といいました。ナウシカは思い詰めた顔で“王蟲にあいたい…ユパさまや父上や谷のみんなにも……”と思いながら、アスベルが腕に巻いてくれた包帯も見つめています。
ナウシカはヒソクサリの森が人口であることを直感的に確信していたのでしょう。そして強い不安が襲ったに違いありません。ヒソクサリを強毒性に造り変えられるのならば、王蟲も人口で作り出すことが可能ではないか。そして、腐海に住む蟲ですら死ぬ森を作り出す技術力があるのならばその他も…と、言いようのない不安に襲われていたに違いありません。命を人が作り替える。その発想に強い嫌悪を感じているようにも感じます。
ここ暫くずっと「風の谷のナウシカ」を書いていると、“火の七日間の前ってこんな感じなんだろうなぁ“と思います。少し穿った見方というか、危機感持ち過ぎというのも分かっているのですが、世界情勢を見ていると、あながち間違いでは…ない…のでは…?なんて思ってしまいます。今年1月に米科学誌「原子力科学者会報」の発表した終末時計は、残り100秒になっています。理由は核拡散と偽情報による科学的証拠への打撃なので、COVID-19とそれがもたらす社会への影響はまだ鑑みられてはいません。ヨーロッパではCOVID-19によって、民主主義体制にゆらぎが見られます。色々な思惑、正義が混在する今、不安に煽られて誰かに選択する権利を投げ渡してしまえば、宮崎駿の危惧する火の七日間を待つ世界になるのではと危惧しています。
だからこそ、ナウシカのように草木をめで、人を愛し、学ぶことを忘れてはいけないのでしょう。私達は自然の一部、野山の一部。そう思えば病も自然の一部として私達と同列です。むやみに恐れず、最適な対処をしていきたいものです。そして、COVID-19や様々な問題に対して、最善を尽くして戦う全ての人に敬愛と感謝を。
ではこの辺で一旦筆を置きます。この“私の一冊“、いつ終わるんでしょうね?(笑)
また次でお会いしましょう。何時になるかは…悪しからずお待ちくださいませ。