「どろぼうの神さま」 コルネーリア・フンケ著 細井直子訳 WAVE出版
カナダのプリンスエドワード島、アイルランドのパブ、イギリスのパディントン駅…。訪ねてみたい場所は色々あるのですが、イタリアの水の都ベネツィアもそんな場所の一つです。
「どろぼうの神さま」というタイトルに惹かれて本棚から抜き出すと、目に飛びこんできたのは、水色の空を背景に黒い不思議な形の仮面をかぶった少年の姿。足の下には石造りのライオン…。「あ、ベネツィアだ~」。本の分厚さに少したじろぎながらも、読んでみることにしました。
それぞれに理由を抱え、家を飛び出し、廃墟となった映画館でくらしている子どもたち。彼らを統率し生活を支えているのは、どろぼうの神さまと名乗る謎の少年スキピオ。子どもの楽園のような心躍る冒険の毎日が、リアルな街の風景描写によって現実感をともなってぐいぐいと迫ってきます。そして最後に用意されたアッと驚く仕掛けに茫然。
気がつけば500ページ近くある作品を一気に読んでしまっていました。
古川佳代子