上野の前の保育所のあった所はむかしは、疫病院と言うて伝染病にかかった人を隔離する病院があった。
そこに足切だぬきと言うて片足の切れた大きいたぬきがおった。
そのたぬきはとにかく人を困らす悪さが好きで、人にとりついては目まいをさせたり、熱をださせたり、命をとったりはせざったけんど人を困らしよった。
そこの近くの道は歩くとカラーン、カラーンと下が空洞になっちゅうような音がしよった。
またそこの近くを夜歩きよったら、ガサガサ言うんでこりゃおかしいと気がつくと、いつの間にか藪を歩きゆう、そんでまたちょっと行くと、ザブザブ言うんでおかしいと思えば、川を歩きゆうと言うようにようだまされるもんよ。
こんなたぬきは、樺のたつ瀬や駒野の上のもちが渕にもおったと言うことじゃ。
川村岩亀(「土佐町の民話」より)
絵:川原将太