「土佐ことば辞典」 南の風社
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山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。
人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。
土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?
みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!
(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)
昔、伊予(現在の愛媛県)の寒川から猿田峠を越して、瀬戸内からたこ売りが来ていました。
あるいいだこ売りが、森のかまち(水路)のふち(近く)を通りかかった時、草刈鎌をごしごしとぎゆう豊年さんに、
「兄さん地蔵寺へは何どき(時間がどれくらい)かかろかいの」と聞きました。
豊年さんは、ジロリッと見ただけで物を言わんと。
アリャこの人おかしいと思ったたこ売りは
「これはしたり」
と言うと、かまちぶちをかみへだいぶ歩いたと。
そしたらその足を見て豊年さんが草刈鎌をとぐのをやめて大声で
「たこ売りのおんちゃん!その足なら一とき半ッ(三時間)」
と言うたそうな。
和田久勝(館報)ー「土佐町の民話」より
絵:川原将太
何度も転覆を繰り返していた女子生徒が目にとまる。どうやら1年生のようだ。ラヨシュが元世界チャンピオンだって知ってる?
「もちろん! 嶺北高校に入学したらカヌー部に入ろうって思ってたんですけど、ラヨシュがコーチに就任すると聞いて、『そんな凄い方に教えてもらえるなら絶対に入部しなきゃ!』って、凄い楽しみにしてたんです」
ずぶ濡れになりながら、目を輝かせる。若さってまぶしいなあ……。
ところでラヨシュは日本語が話せないし、英語で指導を受けることになるんだけれど、そのへんはだいじょうぶ?
「がんばります!」
彼女はパドルの持ち方をアドバイスされていたが、ボディランゲージを交えつつ、つつがなくコミュニケーションをとっていた。
この積極性があれば、カヌーだけでなく、英会話のスキルも上達していくだろう。
「彼らはビギナーだけど、私にとってはそのほうが教えやすい。道具は足りないものもあるけど、手直ししながら徐々に増やしていけばいい。問題ないですよ」
この日の指導は30分ほどと短かったが、ラヨシュも生徒たちも、手応えを感じた様子であった。
「これまでも練習時間は短かったの!? 授業が忙しいのは分かるけど、それじゃあダメだ! もっと増やさないと! なんなら早朝練習も始めようか……」
独りごちるラヨシュに、顔を引きつらせていた生徒がいたことは見逃せないが、案ずることはなかろう。呂蒙いわく「士別れて三日なれば刮目して相待すべし」というではないか。
ラヨシュも、こんな言葉を残していた。
「今は転覆を繰り返している生徒だって、夏が来るころには見違えるように巧くなっているはずだよ」
文:芦部聡 写真:石川拓也
書いた人:芦部聡
1971年東京都生まれ。大阪市在住。『Number』『NumberDo』『週刊文春』などに寄稿し、“スポーツ”“食”“音楽”“IT”など、脈絡なく幅広~いジャンルで活躍しているフリーライター。『Number』では「スポーツ仕事人」を連載中。長年敬愛してきた元阪神・オリックス監督の岡田彰布氏と共に、メルマガNumber『野球の神髄~岡田彰布の直言』を配信中。