むかしむかし、床鍋の保ノ谷のある家に、一晩泊めてほしい言うて女の人が来たそうな。
家の主は、それはしよいことじゃが、食べてもらう物もないが言うたと。
女は、何もいらん、泊めてもらうだけでええ、ただ私の寝た後で楮桶(楮を蒸す桶)をかぶせてほしい言うたと。
主人は言われた通りにしてあげたそうな。
夜が明けて桶をとんとんと叩くと、内からも叩くのであけてやったら、やっぱり人の姿でねよったと。
お世話になった言うて、帰りぎわに、お家はとても裕福なお家になりますよ、言うて出て行ったと。
その家はそれからますます栄えて長者になったそうなが。
桶の中には蛇の鱗が光っていたと。
町史