「塞王の楯」 今村翔吾 集英社
時は戦国、群雄割拠、生と死が交錯する時代。
武士とは違う世界で戦国を戦った職人集団を扱った時代小説。登場人物の背景をしっかりと描き、その時代をまっすぐに生きた職人を潔くテンポよく描写。
どのような攻撃にも耐えられる石垣を構築することにより、戦国の世を終わらせようとする石垣造り集団「穴太衆飛田屋の飛田匡介」と、どのような石垣でも突破するべく、鉄砲の開発に邁進する鍛冶集団「国友衆彦九郎」との突出した技術を持つ楯と矛の戦い。
一つの城を巡り事態が佳境に入ったその時、敗戦が濃厚となった石垣職人側に異変が起こる。
登場人物と共に私も泣いた。戦国時代を扱った時代小説でこれほど素直に泣けたのは初めて、不意打ちだった。
とても心に残った作品。因みに今年の直木賞を受賞している。