「宝島(上・下)」 真藤順丈 講談社
返還前後20年の沖縄が舞台。
オンちゃんと呼ばれる英雄・豪傑をリーダーとした4人の戦果アギヤー(単なるコソ泥ではなく、戦果をあげて必要とする人々に届ける義賊)が、アメリカの基地から物資を盗み出し世界一の軍隊をキリキリ舞いさせていくという物語で始まる。
そしてある日の嘉手納基地でのアギヤーで状況は一変する。
オンちゃんが行方不明となりそれぞれが傷つき、恋人は狂人のごとき執念でオンちゃんを探し続ける。親友と弟は劣悪極まりない留置場で数年過ごすこととなる。
数年後、3人の幼馴染は教師・警察官・テロリストとなりそれぞれの角度から理不尽極まりない統治下の沖縄を変えていこうと挑んでいく。
様々な伏線が張り巡らされ、史実も組み込まれ、それらが最後でピタッと一点に交わる。
皮膚の質感、大気の湿度ある濃密感、細部に至るまで克明に書き込まれていて50数年前の沖縄が現実として認識できる。
改めて戦争の悲惨さ、敗戦国への理不尽な仕打ちを痛感。
5月13日の高知新聞に次のような作者のコメントがあります。「物語にはジャーナリズムとは違う形で読者の琴線に触れられる機能がある」
戦争状態の地域の悲惨さを報道よりも更に実感できた。