「とんとんとめてくださいな」 こいでたん文, こいでやすこ絵 福音館書店
お友達の赤ちゃんが初めての誕生日を迎えるという時、何度この本にお世話になったことでしょう。本屋さんでこの表紙を見つけたら、探していた人に会えたような気持ちで手にし、贈り物にしてくださいと包んでもらってきました。
三びきのうちの赤いスカーフを巻いたねずみが何とものんびりしたのんきな子で、他の二匹が不安そうにこれから開くドアを見つめているというのにずっとぐーぐー寝ていたり、家の主がごちそうしてくれる時にはちゃっかり膝に座ってシチューをいただき、みんなが安心して眠る時には自分だけ目が冴えて栗をコリコリかじっています。我が道をゆくその子に「ウンウン、そのままでいいぞ!」といつも思います。
こいでさんの描く絵には物語への愛情とそこで営まれてる丁寧な毎日が描かれていて、忙しくしていると忘れがちな大切なことを思い出させてくれます。鍋からあがる湯気や台所の野菜たち、棚に並べられた蜂蜜のびん…。一見何気ないものごとが、日々の暮らしに楽しみと体温を与えてくれているのだなとあらためて感じます。
私もできるところから。
今日もごはんを作りましょう。
鳥山百合子