私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

鳥山百合子

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「せかいのひとびと」 ピーター・スピアー絵,文 評論社

世界にはたくさんの人がいるけれど、同じ人は誰もいない。

「生まれた時からみんな一人一人ちがっているんだ」という言葉でこの本のお話は始まります。

体のかたちや大きさ、肌の色、目の色、髪の毛、着るもの、おしゃれも休みの過ごし方もみんなちがう。

家の形、お祭り、祝日、その人の好み、食べ物、神さま、言語、文字も。

ページをめくるたび「ああ、そうだった。みんなちがうんだ」と、あらためて気付くような気持ちがします。そのことは私自身が当然わかっていることだ、と思ってはいるのですが。

世界は広い。そのことを頭の片隅に置きながら毎日過ごしたいなと思います。

鳥山百合子

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私の一冊

石川拓也

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「サカイ」 公益財団法人堺市文化振興財団  季刊誌2018年冬号 Vol.4

 

大阪の堺市が発行しているPR誌です。

縁あって、定期的に撮影の仕事をさせていただいています。

堺というのは知れば知るほど興味深い街で、江戸時代の大都会であり、千利休の本拠地、刃物の町、与謝野晶子も堺です。

表紙の自転車は、堺市の自転車博物館で撮影したものです。

自転車の製造も盛んだった堺市から、まだ幼き日の昭和天皇に献上されたもので、実物はおそらく皇居に保存されているのでしょうが、そのレプリカです。

がっしりした鉄の重厚感と、時代を感じさせるデザインに何か懐かしさを感じます。堺の自転車職人さんたちの技術の粋が結集した一品なのでしょう。

そういえば以前この欄で紹介させていただいた、南一人さんのお父様である画家の南正文氏も堺の在住で、堺市には多くの作品が保存されているということを聞きました。

堺とは何かしらの縁を感じています。

南一人

 

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私の一冊

西野内小代

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「仁淀川に染む」 植木 博子 郁朋社刊

 

 

高校の同級生に仁淀出身の「片岡さん」という方がいて、もしかしてその一族と関係があるのやも・・・との短絡的な興味から読み始めた一冊です。

舞台は仁淀川がゆうゆうと流れる片岡の郷(現在の越知町)です。

時代は戦国時代。

片岡氏に仕える武士が、「高貴な方のお子」(後に美しい姫へと成長する)をある偶然から仁淀へ連れ帰る事になった事から物語は始まります。

 

戦国時代の流れには逆らえず、それでも民に慕われ豊かな政治を司った片岡一族の様子を、信頼できる主従関係、民に慕われる主君、美しくひかれあう男女等々の話を織り交ぜながら、慈愛に満ちた筆致によって記された歴史小説です。

西野内小代

 

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私の一冊

藤田純子

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「木を植えた人」 ジャン・ジオノ こぐま社

曽祖母がなくなって30年以上になる。物心ついた時から身近な存在だった。同じ敷地内の小さな家に一人で住んで独立した生活をしていた。夕飯のおかずのおすそ分けに行くと、薄暗い台所のかまどの前に座ってお茶を飲んでいたりした。

いつも静かな人だった。年齢のわりに背が高く痩せていて、姿も表情も落ち着いた人だった。大きな声を聞いたことはなく、他の家族に文句を言ったり助言したりせず、何の迷惑もかけずに暮らしていた。毎日ブリキのバケツと手鍬をさげて、必ずトランジスタラジオを聞きながら畑や庭の草引きをしていた。

母は「ひ婆さんは政治のことにも詳しいで。なかなか何でも知っちゅう。ずっとラジオを聞きゆうき」と言っていた。

じゃれついて甘えた記憶はないけれど、あれこれかまいすぎずに私たちを見守ってくれていた。話しかけると穏やかに笑い、少し会話した。

ニワトリにやる葉っぱを刻んでいた
生んだ卵を取り出してくれた
山菜の下ごしらえをしていた
うさぎに餌をやっていた
さといもできんとんを作ってくれた
石うすで粉をひいていた
餅つきの餅を一緒に丸めた
うすく切った大根にワラを一緒に通した
ワラでむしろを編んでいた

幼い私はひ婆さんの手元を興味深々で見つめ、手伝うのがうれしかった。そんな曽祖母が亡くなり横たわっていた。この人の寝顔を見たことがなかった…と思った。額に手を当てると冷たくて。とたんに涙が込み上げた。

『木を植えた人』は人の高潔さについて考えさせてくれる。私は読みながら、田舎の人で地味で、子どもの頃から苦労をいっぱいしてきた、でも自分の苦労など何も語らなかった曽祖母のことをたくさん思い出していました。

藤田純子

 

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私の一冊

藤田英輔

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「ジーヴズの事件簿」 P・G・ウッドハウス 文春文庫

殺人やらの血なまぐさい事件は起こりません。ホームズ、アポロ両先生の登場する種類の内容とは違います。

何でも知っている従僕(召使い・執事。日本の市井の人にはわかりにくいですね。解釈も違うようです)と、どこか間抜けな若い主人や個性豊かな登場人物が織りなす古き良き時代の英国のユーモア(コメディー?)小説で気軽に読めます。

英国の上流社会の風習をよく知りませんので、??のところもありますが。

最終章の数行を読むと、座って読んでいればつい手でヒザをうってしまいます。

(横になっていたら?立って読んでいたら?……はわかりません)

藤田英輔

 

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私の一冊

藤原美穂

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「アンネの童話」 アンネ フランク著, 中川 李枝子訳 文藝春秋

小学生で、アンネの日記を読んだ時、戦争の恐ろしさを感じた。感じただけで、解るはずもかったであろうが、それくらい日本は平和なのである。
大人になって、この本が出ると直ぐに購入して読んだ。
才能溢れる彼女の、文章を読んで、ただ可愛そうだけでは済まされないと思った。

忘れない事、伝えて行く事、それが大事な事である。

藤原美穂

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「小さな家のローラ」 ローラ・インガルス・ワイルダー作 安野光雅絵,監訳 朝日出版社

子どもの頃楽しみに見ていたテレビ「大草原の小さな家」。

他社から出版されている「大草原の小さな家」をいくつか読んできましたが、挿絵の美しさに思わず手に取りました。

この本には毎ページと言っていいほど安野光雅さんの美しい挿絵がたくさん入っています。

どうしてこんなに挿絵が入っているのかなと思いながら読み進めていましたが、あとがきを読んで合点がいきました。

(その理由はぜひ「あとがき」をお読みください。)

「文学は、挿絵とは無関係に成り立っています」と安野さんは書いています。

文章を読むことは、描かれている情景や作者の心のあり方を感じとるのが面白さでもあり魅力です。

挿絵は想像を助けてくれるものでもありながら、時には読者が絵の印象に引っ張られてしまうこともあるように思います。しかしこの本の安野さんの挿絵は、文章と呼吸を合わせてゆっくりと伴走するかのようにそこにありました。

作者ワイルダーが生きた時代に吹いていただろう風が感じられるような気がします。

この本の訳者も安野さんです。安野さんの「窓」からワイルダーの世界を味わえる一冊です。

鳥山百合子

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私の一冊

西野内小代

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「ゆっくり力でいい人生をおくる」 斎藤茂太 新講社

急がば回れ・下手の長糸通し・ごくどうの重荷持ち…等々。

限られた時間内で物事を達成しなければならない時、私が頭の中で念じている言葉です。

ダラダラのんびりするのではなく、余裕しゃくしゃくで慌てず、焦らず、物事をキチンと達成していく極意をこの本から学ばせて頂きました。

西野内小代

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私の一冊

鳥山百合子

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「旅をする木」 星野道夫 文藝春秋

 

「ああ、その気持ち、私も感じたことがある」と星野さんの本を読むたびに思います。まだ輪郭しか見えずはっきりと言葉にできないような思いを、星野さんは決して難しくない言葉で目に見えるかたちにしてくれていて「ああ、こういう言い方があったのか」と新しい発見をしたような、懐かしい誰かに再会したようなそんな気持ちでページをめくります。

『人生はからくりに満ちている。日々の暮らしの中で、無数の人々とすれ違いながら、私たちは出会うことがない。その根源的な悲しみは、言いかえれば、人と人とが出会う限りない不思議さに通じている』

同じ地球上で今同じ時間を生きている人たちは気が遠くなるほどたくさんいて、すれ違うことも出会うこともなく、お互いの存在さえ知らないままお互いの一生を終えることがほとんどなのかもしれません。でもそんな中でもなぜだか出会って、怒ったり笑ったり泣いたり、悩んだり喜んだり苦しんだりしながら時を重ねる。目の前のその人とのやりとりや重ねてきた時間は、出会えたからこそのこと。やっぱりとてもかけがえのないことなのです。

星野さんはいつもそのことを思い出させてくれます。

 

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私の一冊

藤田純子

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「ゴリラは語る」 山極寿一 講談社

私は以前、少し離れた柿の木の上にサルがいることに気づき、珍しいのでずっと見ていて、互いに見つめ合っていたのですが、もう少し近づこうとして足を踏み出した時、サルはかけ逃げていきました。あとで知ったところによると、サルと目を合わせては行けないのだそうです。挑発するらしいのです。

一方、ゴリラは目と目を合わせてあいさつをするのです。互いにじっと視線をそらさず目を見つめ合います。

著者の山極寿一さんは1978年にゴリラの研究でアフリカに入るようになってから、ねばり強く接触を続けるうちに、ゴリラ社会にホームステイさせてもらい、ゴリラ語や彼らの暮らしのルールを徐々に学んでいけるようになりました。ゴリラの魅力にどっぷり浸り、まさにゴリラ研究の第一人者となり、ゴリラの本を何冊も出版されています。

私も数冊読みましたが、その外見に似合わずなんと穏やかで平和な動物であるのかよくわかります。

ストレスの多い人間社会に置いて、ゴリラから学ぶことは多いと思います。

今では「好きな動物は?」と問われると、迷わず「ゴリラです!」と言えます(笑)。

藤田純子

 

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