2019年1月

土佐町ストーリーズ

天狗 (下瀬戸)

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下瀬戸の北の方にコケの土と言う畝続きの薮がある。

そこへ木樵りの親子が木を伐りに行ったと。

昼飯を食べるにお茶を沸かしよったら、子どもが「鉄びんがころぶ」と言うと、親が「鉄びんが上にころぶのは不思議じゃが、下へころぶのは当たり前じゃ、上へころぶと言えばこそ」と言うと、その鉄びんが上にころび上がったと。

そして火をたいた後に、菜葉(なっぱ)がぐっと生えたと。

また、竹が奈路と言う所に一軒家があった。そこへ毎晩「餅くれえ、餅くれえ」言うて来るもんがおった。

餅を毎晩やるのはたまらんから、ある日餅のように丸い石を拾って来て、それを焼いて餅の代わりにやると、焼けたのを食べたもんじゃき、

「こりゃたまらん、水をくれ」と言ったと。それで水の代わりに油をやったと。そうしたら化けの皮がはげて一つ目になって「餅くれとはいつまでも言うが、俺は餅くろうて焼けて死ぬ。」

と大きな声で叫んだと。

すると、ねづきやぶ、えんづがうな、東角屋と言う三つの山で「ほうい」と返事をしたと。

その三ヶ所には天狗がいると言うことになって、その山を作ると祟ると言うて誰も山を作らんようになったと。

 

町史(「土佐町の民話」より)

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笹のいえ

ZINE 03発刊のあとに

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先日、土佐町のウエブサイト「とさちょうものがたり」の雑誌版とも言うべき、ZINEの第3号が発刊された。

なんと、まるっと一冊、笹のいえ特集だ。

このサイトに連載している記事から選んだ文章を少し手直しして、写真は新たに数枚追加し掲載した。

記事を改めて読んでみて、ふと「土佐町の人たちは皆、こんな暮らしをしているのか」と誤解されるのではないか、と思った。

以前、笹のいえを見学しにきたある移住希望者が、

「土佐町の移住者って、皆さん、こんな暮らしをしているんですか?私にはちょっと無理ですー」

と、冗談とも本気ともとれる感想を話してくれた。

いえいえいえ。僕らの暮らしは、だいぶ変わっているけれど、ほとんどの町民の皆さんは普通に現代的な生活を営んでいますよ。と焦りつつ答えた覚えがある。

この本は確かに「渡貫家の暮らし」を紹介しているが、世界中に多種多様な生き方がある中で、この4,000人ほどの町にもそれぞれの暮らし方がある。そして、僕らの生活もその中のひとつに過ぎない。

読者が、僕らの日常を読み終えたとき、どう感じるだろうか。

ある人は、この町に興味を持ってくれるかもしれない。

ある人は、「懐かしい」と言う思いを抱くかもしれない。

またある人は、その人にとっての大切な部分に触れたと感じるかもしれない。

どう受け取るのかはもちろん異なるし、それが肯定的でも否定的でも、反応があるならとても嬉しい。

 

話は変わるが、表紙の家族写真は、秋深まるある日に拓ちゃんが撮ってくれた。

撮影前、カメラが子どもたち四人の目線を捉えるのは至難の技だろうと予想され、「今回ダメでも何度か挑戦しよう」と言う話だった。子どもらが落ち着くまでに時間が掛かったし、何度もシャッターを押すことになったけれど、さすがプロカメラマン、見事全員の笑顔を収めていた。拓ちゃんの技術もさることながら、これまで、何度も笹のいえに遊びに来てくれていたので、子どもたちが彼を信頼していることがリラックスした表情に現れている。

結局、撮影したのはこの時だけで、そのまま表紙に採用された。

この記事の写真は、何十枚も撮影したうちの一枚。ふざけたり、アクビをしたり。採用されなかったけれど、子どもたちの性格が出てる。こっちの方が僕たちらしいかな。

 

写真撮影:石川拓也

 

Zine 03号、発刊です!

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私の一冊

藤田純子

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「かばくん」 岸田衿子 福音館書店

なつかしい〜!!たしか子どもたちが保育園で月に1回絵本を購入していた本。家にはもうないけれど、記憶に残っている本です。

図書室の本棚で他の新しい本たちの中に渋く混ざっていました。

発行はいつ?

えーー?!今から56年前、1962年9月1日発行。びっくり!!

クラシックな雰囲気を漂わせてシンプル。

かばくんの迫力あるけどとても優しい表情。

ページをめくる度に違う色が目にとびこんでくる。

古くて新しい。

素敵な絵本です。

藤田純子

 

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4001プロジェクト

宮元千郷 (宮古野)

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先月「土佐町ポストカードプロジェクト」で撮影させていただいた宮司の宮元千郷さんです。12月初旬の高峯神社の神祭の際に、神事を終え一旦下まで降りてきていた宮元さんにお願いして撮影させていただきました。

登山道のように険しく長い参道を一緒に登ってこの場所まで戻っていただきました。感謝です。

宮元さんは土佐町の宮古野にご在住。代々、この近辺の神社を司る宮司の家系の方です。以前、高峯神社の記事を作る際にも大変お世話になりました。

ぜひ、以下の記事も併せてお読みください。

 

2018 Nov.

土佐町の大神様 髙峯神社 前編

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山の手しごと

春の七草さがし

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土佐町早明浦ダムのほとり、上津川地区に住んでいる高橋通世さん。

通世さんは猟師であり、猪や鹿を獲り、さばく。米や野菜を作り、山の木を切り、はちみつを採り、アメゴを飼い、お茶を作り、こんにゃくを作る…。山のことなら何でも知っている、山の達人です。
昨年末、山道で会った時に「春の七草を採りにおいで」と言ってくれたので、1月6日、採りに行きました。
土が近いところで暮らしていると、自分たちの手で七草を収穫することができるのです。

 

春の七草。

うーん…、確か小学校の国語の時間に覚えたような…。春の七草を採りに来たのに、七草の名前がわからないとは何とも情けない…。
「七草って何でしたっけ?」という質問に、さすが山の達人!通世さんが教えてくれました。

 

【春の七草】
・ごぎょう
・はこべら
・なずな
・すずな(カブ)
・すずしろ(大根)
・ほとけのざ
・せり

 

調べてみると、1月のこの頃、芽吹いたばかりの若葉を食べると、邪気を払い万病を除くと古くから言い伝えられてきたとのこと。江戸時代に「七草粥」として広まり、今へと受け継がれて来たようです。

 

 

いざ、七草さがしへ!

通世さんの家のそばで「はこべら」の群生を見つけました。「ニワトリにあげると美味しそうに食べるやつや!」と息子が言っていました。

 

 

こちらが七草の「ほとけのざ」。山へ降りる斜面に生えていました。紫色の花が咲く「ほとけのざ」もありますが、それは七草の「ほとけのざ」ではありません。

 

「じゃあ、田んぼに行ってみようか!」と通世さんが案内してくれました。上津川地区で田んぼを作っているのは今は通世さんだけ。標高600メートルにある田んぼのさらに200メートル上から水を引いているそうです。

 

大きなかぶ!「すずな」はカブのことです。お漬物用にもたくさん抜きました。

 

田んぼの畔に生えていました。小さな白い花を咲かせているのが「なずな」。土にぴったりとくっつくように生えているのが「ごぎょう」。ごぎょうは春になると黄色い花をつけます。

 

こちらは「せり」。夏には田んぼに太い根をはるので、草取りが大変!でも、お浸しやごま和えにすると美味しい。通世さんは、お正月のお雑煮にさっと湯がいたせりをのせたそうです。

 

これが「春の七草」。左から、せり、ごぎょう、ほとけのざ、なずな、はこべら、すずな(かぶ)、すずしろ(大根)。 すずなとすずしろは、実の方をコトコト煮てお粥に加えます。

 

上津川から帰って来てから、道ばたの草たちに目を向けると「こんなところに “ごぎょう” が!」とか「これは “ほとけのざ” では?」と気づくようになりました。

今までもぼんやりと視界に入っていただろうものが、急にはっきりと名前を持った存在になったのです。

昔の人も同じように、道ばたの七草を見つめていたのかもしれません。

 

1月7日の今日、この「春の七草」で七草粥を作ろうと思います。

 

 

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私の一冊

西野内小代

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「声に出して読みたい日本語」 齋藤孝 草思社

 

話題になった時に購入したものの、積読(つんどく)状態となって早や数年…。

押し入れから探り出しやっと読み始めました。

和のリズムはDNAレベルで記憶されているのでしょうか、古典も漢文も心地よく耳に響きます。

そしてあまりにも有名な名文をいかに知ったつもりでいたのか…、思い知らされました。

知れば知るほど、知らないを知る。そんな一冊でした。

西野内小代

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みんなのアルバム

映冩機

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相川小学校にあった、古いアルバムからの1枚です。

みなさん、キリッとしたやや緊張の面持ちですね。

映写機をのせた台に、「紀元二千六百年記念 寄贈映冩機 付属品一式 式地利吉」の文字が見えます。

一瞬、紀元二千六百年??と頭の中が「?」になってしまいますが、、、

紀元二千六百年記念とは、1940年(昭和15年)に神武天皇即位紀元(皇紀)2600年を祝ったもので、全国各地でさまざまな記念行事が催されたそうです。

これはその翌年に配給された記念映画、『天業奉頌』を鑑賞したときのものだろうと思われます。当時、日本の視聴系メディアといえば、国営放送のNHKラジオ第一しかなかった時代。映像を観ることは特別に価値あることだったのでしょうね。

ちなみに、『天業奉頌』は、youtubeでアップされていました。ご興味のある方は当時を思いながらご覧になってはいかがでしょうか。

それから、「式地利吉さん」をご存知のかたがいらっしゃいましたら、ぜひご一報くださいませ!

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私の一冊

鳥山百合子

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「地球家族」 ピーター・メンツェル著 TOTO出版

高校生だった時、題名に惹かれて購入したこの本は、度重なる引越しにいつもついて来ました。

世界中の様々な家族のもとを訪ね、家にある持ち物を出して見せてくださいと頼んで撮影した写真集です。

溢れるようなものの中に人間がちょこんと座っているような日本の家族。水をくみに行くためのロバを一頭しか持っていないというアフガニスタンの家族。

あまりの違いに驚き、そして、生活の仕方や言葉や肌の色、宗教などが違っても私たちは同じ人間であり、同じ地球に住んでいるんだという実感に背中がゾクゾクしたのでした。

世界は広い!いつだってどこへだって、飛んでいけるのです。

2枚目の写真はブータンの家族。

国民の大半が「幸せだ」と答えているブータン。「家にある持ち物」はこれだけです。

人にとって本当に必要なものは何なのでしょう。

鳥山百合子

 

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