藤田純子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「八月十五日に吹く風」 松岡圭祐 講談社

「軍人に限らず夫人や子どもを含む一般市民に至るまで、日本人は自他の生命への執着が薄弱である。軍部による本土決戦および一億総玉砕、一億総特攻に誰もが抵抗なく呼応している。本土決戦において婦女子を含め、非戦闘員が戦闘員となりうる。日本への上陸作戦は、米軍兵士に多大な犠牲が生じる。」

太平洋戦争時、アメリカの日本人についての分析としてこのように記された書類が、原爆投下の最終決定に大きく影響したようです。占領後も、死をも恐れぬ日本人の反撃を警戒していたアメリカ軍は、きびしい占領政策を実施しようとしていた。

後のイラク戦争終結後、米軍は治安維持部隊を組織し、ゲリラとの戦闘を続けたことと同様であったかもしれない。

しかし、ある報告により、進駐軍は見解を180度変え、日本を武力で制圧する方策はとらなかった。

その理由となる報告とは…。

1943年、キスカ島での人道を貫き5000人の救出を成し遂げた、一見弱々しくも見える木村昌福少将のとった作戦とは…。

これは実話であり、登場人物も全員実在する人々です。

この本はむごい戦争の事実と、その最中、重い任務と重責を負わされながらも戦わずして尊い命の救出を成し遂げた感動の一冊です。

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「せんねんまんねん」 まどみちお著,工藤直子編 童話屋

「あなたとお会いできてよろこんでいます」が伝わりますように、と実は少なからず揺れている心を、とりなし、とりなし笑っていると、偽善的な笑顔ではないかと不安が混じり、沈黙が苦しい。

忘れていたのに突然思いにのぼったようなことまで口をついて出て、あれっ?と苦笑い。

つられたように笑ってくれるあなたには、寛大な心をフルに使わせてしまいました。

私の大好きなまどみちおさんの詩に、

いわなかったことは
いったことの
たいがい いつも
なんばいかだ

それに いったことは
たいがい いつも
いうまでもなかったことだ

この詩がとても心にしみる。

先日新しい出会いがありました。

注:「あなた」とは、初めて会った娘の彼氏のことです。

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「絵本からうまれたおいしいレシピ」 きむらかよ 宝島社

お菓子づくりをあまりしないので、この本は眺めて楽しみます。

子どもたちが小さい頃はおやつをたくさん作ったものだけど、この頃は体にやさしい手作りのお菓子が手に入りやすいので、もっぱら時々買っています。

・「バムとケロのにちようび」のドーナツ
・「ちびくろさんぼ」のホットケーキ
・「長くつしたのピッピ」のジンジャークッキー
・「ももたろう」のきびだんご
・「赤毛のアン」のレモンパイのタフィー
・「ハイジ」の黒パン・白パン

など、みんなが知っている25冊の絵本の中に出てくるおいしいおやつレシピです。

甘い香りを想像し、よだれが出そう(笑)

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「木を植えた人」 ジャン・ジオノ こぐま社

曽祖母がなくなって30年以上になる。物心ついた時から身近な存在だった。同じ敷地内の小さな家に一人で住んで独立した生活をしていた。夕飯のおかずのおすそ分けに行くと、薄暗い台所のかまどの前に座ってお茶を飲んでいたりした。

いつも静かな人だった。年齢のわりに背が高く痩せていて、姿も表情も落ち着いた人だった。大きな声を聞いたことはなく、他の家族に文句を言ったり助言したりせず、何の迷惑もかけずに暮らしていた。毎日ブリキのバケツと手鍬をさげて、必ずトランジスタラジオを聞きながら畑や庭の草引きをしていた。

母は「ひ婆さんは政治のことにも詳しいで。なかなか何でも知っちゅう。ずっとラジオを聞きゆうき」と言っていた。

じゃれついて甘えた記憶はないけれど、あれこれかまいすぎずに私たちを見守ってくれていた。話しかけると穏やかに笑い、少し会話した。

ニワトリにやる葉っぱを刻んでいた
生んだ卵を取り出してくれた
山菜の下ごしらえをしていた
うさぎに餌をやっていた
さといもできんとんを作ってくれた
石うすで粉をひいていた
餅つきの餅を一緒に丸めた
うすく切った大根にワラを一緒に通した
ワラでむしろを編んでいた

幼い私はひ婆さんの手元を興味深々で見つめ、手伝うのがうれしかった。そんな曽祖母が亡くなり横たわっていた。この人の寝顔を見たことがなかった…と思った。額に手を当てると冷たくて。とたんに涙が込み上げた。

『木を植えた人』は人の高潔さについて考えさせてくれる。私は読みながら、田舎の人で地味で、子どもの頃から苦労をいっぱいしてきた、でも自分の苦労など何も語らなかった曽祖母のことをたくさん思い出していました。

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「ゴリラは語る」 山極寿一 講談社

私は以前、少し離れた柿の木の上にサルがいることに気づき、珍しいのでずっと見ていて、互いに見つめ合っていたのですが、もう少し近づこうとして足を踏み出した時、サルはかけ逃げていきました。あとで知ったところによると、サルと目を合わせては行けないのだそうです。挑発するらしいのです。

一方、ゴリラは目と目を合わせてあいさつをするのです。互いにじっと視線をそらさず目を見つめ合います。

著者の山極寿一さんは1978年にゴリラの研究でアフリカに入るようになってから、ねばり強く接触を続けるうちに、ゴリラ社会にホームステイさせてもらい、ゴリラ語や彼らの暮らしのルールを徐々に学んでいけるようになりました。ゴリラの魅力にどっぷり浸り、まさにゴリラ研究の第一人者となり、ゴリラの本を何冊も出版されています。

私も数冊読みましたが、その外見に似合わずなんと穏やかで平和な動物であるのかよくわかります。

ストレスの多い人間社会に置いて、ゴリラから学ぶことは多いと思います。

今では「好きな動物は?」と問われると、迷わず「ゴリラです!」と言えます(笑)。

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「夜を乗り越える」 又吉直樹 小学館

明治・大正・昭和初期の時代の文学、近代文学は人間の苦悩をとことん突き詰め、純粋さや隠された邪悪さにどんどん落ち込んでいくような内容に刺激され、自分もいっぱしの読者になって文学者の深さに共鳴できた気がして、次々と読んでいった高校生の時代がありました。

特に太宰治の本はほとんど読んだと思います。太宰にはまるのは若い頃の“はしか”のようなものらしいですね。

どんな内容だったのかほとんど覚えていないのは「恋に恋する」ように「文学に恋していた」のかなと思います。

直木賞作家でお笑い芸人の又吉直樹さんは、多感な子どもの頃、自分のことが全くわからず、
『明るい/暗い/強い/弱い…、どちらにもふりきれない、そしてそんな話ができる相手もいない、ひとりで考え、頭の中で考えがめぐるばかりで答えが出ません。変な人間に生まれてきてしまった、もうどう生きていっていいのかわからない…。
でも本に出会い、近代文学に出会い、自分と同じ悩みをもつ人間がいることを知りました。それは本当に大きなことでした。本を読むことによって、本と話すことによって、僕はようやく他人と、そして自分との付き合い方を知っていったような気がします』と書いています。

この本を紹介して読んでくださった方は全員「とても共感できた」と喜んで感想を言ってくださいました。

機会があればぜひ!おすすめの一冊です。

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「お菓子な文房具」 平田美咲 汐文社

ポストを開けると、ポッキーやTOPPOのお菓子の箱に切手が貼られ、それが私宛ての手紙であったなら、びっくり!!笑顔になります。絶対に!

お菓子のパッケージってカラフルでハッピーなデザイン。大人でも幸せになれるのです。それを少し工夫して楽しい文房具に変身させるという、うれしいアイディア本です。

キャラメルの箱はスライド式になっているので、中の箱に小さな取っ手をつけて引き出しに。中にメモ用紙を入れるなど、子どもたちの心にどんぴしゃなアイディアが盛りだくさん。

とても楽しい本です。

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「どうぞのいす」 香山美子 作, 柿本幸造 絵 ひさかたチャイルド

小さないすを作って野原に置き「どうぞのいす」と書いたうさぎさん。

幸せそうにパンをほおばるリスたちや、手も口のまわりもべとべとにさせてはちみつを食べるきつねさん、など、登場する動物たちの表情の何と愛らしいこと。

そしてみんなのやさしい心がけがまわりまわってほっこり。

大人たちが忙しさにかまけて忘れがちな、他人を思いやる気持ちを呼びさましてくれる気がします。

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

 

「ターシャの輝ける庭」 ターシャ・テューダー著 メディア・ファクトリー

今、桜が満開となりました。

草花や木々は眠りから目覚め、うーん!と背伸びをするかのように伸びやかに春を告げています。

美しい色とりどりの花、若々しい緑。

自然界は人々の心を生き生きとさせ、またなぐさめてくれます。

この季節になるとページを開きたくなる、この「ターシャの輝ける庭」。

1972年、50代のターシャが自給自足の一人住まいを始めた時からつくり始めた、庭の春から秋までの庭の写真集。

92歳で没した彼女の晩年の頃の静かで穏やかで、幸福そうなたたずまいを見るのもうれしいです。

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

藤田純子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「変なお茶会」 佐々木マキ 絵本館

今年も、とらんすばーる,ろまーなさんから招待を受けたお客様たちが世界各地から一年ぶりの再会を楽しみにして集まります。

やがて月がのぼり、岩山から天然のココアがわく。そのココアを一同おいしくいただくのです。ほんとうにへんてこりんなお茶会の話です。

その絵は奇抜で、ハッとする楽しさ!ゆえ、作者の佐々木マキさんはロングな髪をソバージュ、ふわふわにさせたおばさまではないかと想像したけれど『絵本作家のアトリエ』に載っていた佐々木マキさんは、シャツのボタンを首まできちんととめているような、ブレザーを普段からちゃんと来ているような、まじめそうなオジサマでした。そのギャップがおもしろかった。

得てして人とはそうしたもので、見かけではわからない内面のおもしろさを誰でも持っているのだろうなあと、あらためて思ったことでした。

藤田純子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
2 / 41234