藤田純子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

藤田純子

「わたしは、わたし」 ジャクリーン・ウッドソン 鈴木出版

アメリカには「証人保護プログラム」という制度があるようです。

それは、裁判で重大な証言をした者が危害を加えられたり、殺されたりしないように保護する制度です。

父親が正義の証言をしたために、その家族は暮らしの全てをなくして、知らない土地に移らなくてはならなくなりました。職業も失い、名前すら変えて、今までの自分とさよならしなくてはなりません。

希望を見出すまでの苦難が少女の目を通して描かれています。

絶対に正しいと思うことを貫くことで、大切な家族の生活を一変させてしまう…。銃社会アメリカの悲劇を垣間見ることができました。

藤田純子

 

私の一冊

藤田純子

「角野栄子の毎日いろいろ」 角野栄子 角川書店

漠然と思い描いている未来の自分。こうでありたいと願う自分の姿。

歳をとることにそれほど逆らわず、でもあきらめてしまいたくもない。

この本の作者、角野栄子さんの生活スタイルに共感することがたくさんあった。

素敵な先輩にまたひとり会えた。

藤田純子

 

私の一冊

藤田純子

「その日の天使」 中島らも 日本図書センター

中島らもさん。天下の灘高の在籍中からいわゆる不良で、アル中、薬物中毒をはじめ、やることなすことやり過ぎで危ない人、愚かな人というイメージが強い人。周りの人たちに心配や迷惑をかけつつ52才で急死した。

しかし、彼に魅力を感じる人は多い。

頭の良さと感受性の強さからくる言葉の展開のすごさ。すさまじい読書量ゆえの博識ぶり。

親しく付き合うと傷つけられてしまいそうだけれど、ここまでのしょうがなさはある種、さわやか、カッコイイとも認めてしまう魅力があります。

この本はらもさんの生い立ちや、人生の様々の場面でのエッセイ集。どんどん読めてしまいます。

藤田純子

 

私の一冊

藤田純子

「がばいばあちゃん 佐賀から広島へ めざせ甲子園」 島田洋七 集英社

ある夕ご飯の席のことだった。「ばあちゃん、ここ2,3日ご飯ばっかりでおかずがないね」。
俺がそう言うと、ばあちゃんはアハハハハハハ…と笑いながら「明日はご飯もないよ」と答えた。
俺とばあちゃんは、顔を見合わせるとまた大笑いした。今から40年ほど前の話である。
(中略)
「今、世の中はひどい不景気だ」とみんなは言うけど、何のことはない、昔に戻っただけだと俺は思う。変わってしまったのは人間の方だ」と続く。
(これはこの本の始まりの文章)

 

いきなり笑ってしまった。ばあちゃんの晴れ晴れとした、笑っちゃうような貧乏生活の知恵と名言。幼い昭広少年とばあちゃんの生活をユーモアたっぷりに書かれた本当のお話です。

「お金がないと幸せになれないの?そんなことはない。心のあり方が大切だよ」

この本を読んで、その通りだと納得しました。

清々しさや明るさがあり、自然と前向きにさせてもらえる力強さもある。

是非おすすめの一冊です。

藤田純子

 

私の一冊

藤田純子

「きまぐれロボット」 星新一 理論社

この本には、発明されたわくわくするようなロボットたちや、いくつもの便利な道具が出てくる。そして一つ一つの話のおしまいにはシュールな「オチ」がある。

「なるほど」であったり「ああそうか」であったり、苦笑いであったり…。

例えば、エヌ博士の作り上げた「なぞのロボット」。いつもどんな時も博士のそばにくっついているだけ。

お茶も運ばなければ、掃除もしない。口もきけないし、犬に吠えつかれても博士を守るどころか、逃げる博士について一緒に逃げるだけ。何の役にも立っていないように見える。

さて一日の終わり、夜になって眠る時間になると、博士に「さあ、頼むよ」と命令されるとちょっとの間仕事をする。机に向かってノートを広げる。

ここでロボットは何をするか…。日記をつけるのがめんどうくさくてならない博士の代わりに日記をつける。

これまでの成り行きが、ストンと納得がゆく。

星新一さんの柔らかい頭脳にまいってしまう。

藤田純子

 

私の一冊

藤田純子

「カンヴァスの向こう側」 フィン・セッテホルム 評論社

絵の好きな12歳の少女リディアは、ある日突然1658年のオランダ・アムステルダムにタイムスリップしてしまいます。

この本は美術史に基づいたファンタジーですが、リディアが出会うヨーロッパの画家たちの生活ぶりや人格が丁寧に描かれています。

フィクションとはいえ、史実に基づいているのでリディアの体験した出来事は画家たちとその作品をぐっと身近に感じさせてくれ、絵画への興味を引き出してくれました。

レンブラント、ベラスケス、レオナルド・ダ・ヴィンチ、エドガー・ドガ、ウィリアム・ターナー、ダリ。

これらの個性的な画家たちが登場します。

藤田純子

 

私の一冊

藤田純子

 

「バナタイム」 吉本ばなな 幻冬舎文庫

私は彼女のことを知らないで誤解していました。

「よしもとばなな」という名前を使用されているだけで、その人の傾向を勝手に想像して避けていた気がします。一冊の本も手に取ってみなかったのです。

この『バナタイム』は、「読んでみて」とお貸しくださった方にきちんとお返しできるように読んでみました。

何と目からうろこ…。

彼女はこんなに普通の人で、日々の生活の一喜一憂にもまじめに悩み、分析して、いまく負担を軽くして生きている気がしました。

スマホで画像をみてみると、とても感じの良い女性でした。

この本は初めて「よしもとばなな」を知った本です。

藤田純子

 

私の一冊

藤田純子

「フジコ・ヘミング 14歳の夏休み絵日記」 フジコ・ヘミング 暮しの手帖社

最近、フジコ・ヘミングのドキュメント映画を見ました。

彼女は年老いたけれど、今の自分のスタイルで輝いています。しかも、心は16歳のままであるとおっしゃる。彼女は強いけれどもとてもかわいい、とても魅力的な女性です。

魂のピアニストと呼ばれている通り、彼女の人生やピアノの音色は私の魂をズキュン!と撃ちました。

戦後間もない1946年、フジコ14歳。この夏休み絵日記を通して、若い彼女の生活がよくわかり、この頃から生活の中心はピアノであって、貧しいときも不遇のときもピアノと共に生きてきたフジコを、より身近に感じられる本でした。

藤田純子

 

私の一冊

藤田純子

「かばくん」 岸田衿子 福音館書店

なつかしい〜!!たしか子どもたちが保育園で月に1回絵本を購入していた本。家にはもうないけれど、記憶に残っている本です。

図書室の本棚で他の新しい本たちの中に渋く混ざっていました。

発行はいつ?

えーー?!今から56年前、1962年9月1日発行。びっくり!!

クラシックな雰囲気を漂わせてシンプル。

かばくんの迫力あるけどとても優しい表情。

ページをめくる度に違う色が目にとびこんでくる。

古くて新しい。

素敵な絵本です。

藤田純子

 

私の一冊

藤田純子

「小さな生きものたちの不思議なくらし」 甲斐信枝 福音館書店

幼い頃、外で遊び疲れて草の上に仰向けに寝転んだ。

太陽がまぶしい。空をすぐ近くに感じる。音がいつもと全く違って聞こえる。

その時の気持ちを今も思い出すことができます。

不思議な感覚の中で、まわりの草たちは気持ちの良い風に揺すられながら、手をいっぱいに広げて、仲間たちとつながりあおうとしているように見えた。

この本を読んでいると、作者が私と同じ感覚を持たれていることを感じ、すごくうれしかった。

彼女はずっとずっと深く小さな目立たない存在に向き合って、面白く付き合っていて、新しい世界を教えてくれた。

藤田純子