とさちょうものがたり

土佐町ストーリーズ

片目の蛇(五区)

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昔、野中兼山と言う人が新井堰を作った時、何べんついても堰がこわれるので、まもり神として蛇を入れた。

そうしたら堰がこわれずに完成したと言われています。

今でも床鍋の新井堰の附近にいる蛇には片目のものが多いと言われています。

堰の上の方に蛇神さまと言うのを祭ってあります。

今でもこの近くの畑で蛇を見つけたりした時には、蛇神さまにお供えものをして出て来ないようにお願いする風習があると言います。

また、この堰に放尿(おしっこ)すると雨が降るとか、片眼の蛇がこちらのヒノジ(日あたりのよい側)から対岸の陰地(かげじ)へ渡っても雨が降ると言い伝えているそうです。

 

桂井和雄 (「土佐の伝説」第二巻より)

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土佐町ストーリーズ

蛇渕(上津川)

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上津川に独鈷山(とうこうさん)言うて土を盛ったような山があるが、その下は深い釜(渕)になっていて、そこに蛇がおったと言うのう。

蛇渕言うて誰も泳がんとこでした。

昔、その渕の近くに家が一軒あって、屋号をコウナロと言いよった。

この川の奥にも、も一つ蛇渕言うところがあるんじゃが、大昔のこと、このコウナロへ「上にはもうおれんのでここへ泊めてくれえ。」言うて人が来たので泊めちゃったそうな。

そして、「寝姿は見んようにしてくれえ。」言うたそうな。

ところが昔はマイラ言うて板戸の障子じゃったもんじゃきに、その板戸に小さな節穴があいちょったそうな。

そこから見たところが、電燈のない時のことで行燈(昔の照明具)をきりきりと三巻きも巻いて、蛇が寝よったそうな。

わしの寝姿見た言うて、帰りがけに蓋を開けんずつにお祭りしてくれえ、そしたら幸せにしちゃる言うて箱をくれたと。

どればあの大きさやったか、そりゃ知らんが、それをもろうてお祭りしよったけんど、まあ、何が入っちゅうろうと思うて開けて見たと、そうするとトカゲみたいなもんが這い出て来たと。

そんなことがあってすぐにアカダケ言う所が潰(つえ)て、畑も広かったんじゃが、川縁の畑も半分足らずになって流れてしもうた。

それからだんだんに幸せが悪うなって、今は家ものうなったわね。

蛇渕の山には弁天さんを祭って、昔は大川村からも雨乞いにお詣りに来よったもんよ。

 

町史(「土佐町の民話」より)

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土佐町ストーリーズ

蛇穴(東石原)

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今から百六十年前のこと、東石原村(現在の東石原)に、郷士(名前は定かでない)がおったそうな。

郷士と言うのは、お百姓さんが武士の待遇を受けておったもので、戦いが始まると、くわやかまのかわりに刀を持って戦いに出よったそうな。

その郷士の治める領地の中に、それは大きくて見ごとな欅(けやき)の木があったと。

たぶん祠かお堂があって、そこに植えたものが大きくなったんじゃろう。

その欅の木には大きな穴があって、水がごうごう流れる音がしよったと。

村の人たちはあの穴の中には蛇が棲みよるらしいと言いよった。

ある年のこと、その欅を江戸の水野出羽守のところへ出すことになり、野村儀八と大館達次の二人が何日もかかって切りたおしたと。

まあ木は無事に江戸へとどきお役に立ったそうなが、後がおおごと。木を切った二人は、その日から大病にかかって苦しんだそうな。

また、そのころには村に名本(なもと)と言って、今の区長さんのような仕事をする人がおったが、その名本さんのところまでは五百メートルぐらいあるのに欅を切った時の木屑が、流れていって大さわぎをするし、木の切り株がごうごうと大きな音を出して鳴るんじゃと。

きっと、これはあの穴の中に棲む蛇のたたりじゃと言って村の人がいっぱい集まって、お通夜をしたり切った後をきよめて、いろいろのものを供えてお祭りをしたそうな。

すると、だんだんと鳴るのがおさまって、もとのとおりの株になったそうな。

皆山集より(町史「土佐町の民話」)

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私の一冊

鳥山百合子

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「本の子」 オリヴァー ジェファーズ (著),‎ サム ウィンストン (著),‎ 柴田 元幸 (翻訳) ポプラ社

これは私、鳥山の大切な一冊「本の子」。

この本の中には、世界中で読み継がれてきた昔話や児童文学、ファンタジー、たくさんの本や言葉が出てきます。

本の中のページを開くと、たくさんの時間がつまっていていろんな出来事があって、いろんな人生がある。
それは「ものがたり」。

人は、自分のものがたりを日々積み重ね、時には自分と隣の人のものがたりを重ね合わせながら今この場所で生きているんやなあと思います。

「わたしたちはものがたりでできている」。

『とさちょうものがたり』とどこか通じるものを感じて
この本を手にした時、本当にうれしかったのです。

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私の一冊

山崎幸子

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「子どもの話にどんな返事をしてますか?」 ハイム・G・ギノット (著),‎ 菅靖彦 (著) 草思社

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土佐町ストーリーズ

蛇の家(黒丸)

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ずっと昔、黒丸での話よ。

ある晩のこと、きれいな娘さんが「この川には渕はいくつもあるけんど、どの渕も先客がおるので泊まる所がない。どうか泊めてくだされ」言うてやって来たと。

それじゃあと言うことで泊めてやることにしたが、寝る時に桶を貸してくれえ言うたと。

大きな桶もなかったので、楮(かじ)を蒸す桶でもかまん、誰もあけてくれな言うてそれをすっぽりかぶって寝たと。

夜中に、体が蛇にもどったもんよ。

桶がバリバリ言うて割れたそうな。朝になってみると、娘さんの姿は見えざったそうな。

そのことがあった後、すぐ隣の家から火が出たそうな。

昔のことじゃきに草葺きよね。近くの家はどんどん焼けてしもうたけんど、その家だけ焼け残ったと。

娘さんを泊めた時に、私の寝姿さえ見んかったら、どんな火事にも焼けんから言うて寝たそうなが、その御利益だったもんよ。

草葺ではなくなったけんど、その家は今もあらあね。

蛇の娘がどこから来て、どこへ行ったかは聞いちょりません。

 

町史(「土佐町の民話」より)

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土佐町ストーリーズ

蛇神様(北境)

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応仁の乱から百年余りが過ぎ、やっとのこと平和が訪れようとしておった。

その頃、南越村(みなごしむら・現在の北境)の名本(今の区長さんのような仕事をする人)藤大夫(ふじだゆう)の弟で和田孫三郎が須山に分家した。

それがこの地に人が住むようになった最初であった。

その下方には十二戸の百姓が住み、長い戦乱に生き残ったのは、蛇神様が守ってくれたおかげだと、住民は毎日酒や魚を供えておった。

杉の平から落ちて来る谷川に蛇渕があって、大きな蛇が棲んでおった。

渕は青々として底は知れず、周りはしめなわで囲まれ、色とりどりの花が飾られておった。

住民は幸せで、境村や和田村から多くの人に来てもろうて盛大に蛇神様祭りをしておった。

それは天録から宝永にかけてのことじゃった。

いつの間にやら蛇神様が南越村の蛇渕へ移っちょった。

「これは大変じゃ。どうやったら戻ってくれるろう。」とさわぎよった。

ちょうどその頃雨が降り始めた。雨は毎日降り続き、次第に滝のような雨になった。そして急に山が崩れて、十二戸はアッと言う間もなく八ヶ内川に押し流されて生き残った人はいなかった。

反対に、南越村は五戸しかなかったのに、方々から人が来て二十三戸になりにぎわった。

そして、それはそれは盛大な蛇神様祭りをしておった。

 

そんなことが百年余り続いたある年、「どうも近頃蛇神様が見えんようになったが、どう言うもんじゃろう。大夫さんに見てもらおう。」と言うことになり、毎日毎日笛や太鼓で蛇神様迎えの祭りをしたが、帰って来てはくれざった。

それから間もなく、大崩れがしたり、伝染病で家が絶えたりして、昔の五戸に戻ってしもうた。

それから久しいことたってから、蛇神様は汗見川へ移ったことが分かった。

そういうことは、地元の人は気付いてない風であったが、石ころだらけで人の住める所ではなかった沢ヶ内に人が来て住みだし、やがて店もでき大きい集落となったそうじゃ。

 

和田輝喜(「土佐町の民話」より)

 

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私の一冊

仙田聡美

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「でんしゃはうたう」 三宮 麻由子  (著),‎ みねお みつ (イラスト) 福音館書店

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私の一冊

山崎幸子

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「アンジュール―ある犬の物語」 ガブリエル バンサン ブックローン出版

土佐町の山崎幸子さんが紹介してくれた一冊は、ガブリエル・バンサン作「アンジュール」。

この本は鉛筆の線のみで描かれ文字はありません。
飼い主に捨てられた一匹の犬の悲しみや戸惑いを鉛筆の線だけでここまで表せるのかと驚きました。

最後にひとりの少年に出会い、お互いに少しずつ近づいて行く姿にいつもぐっときます。

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私の一冊

鳥山百合子

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「せいめいのれきし」 バージニア・リー・バートン (著, イラスト),‎ まなべ まこと (監修),‎ いしい ももこ (翻訳) 岩波書店

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