私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

山門由佳

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「よあけ」 ユリー・シュルヴィッツ作・画 瀬田貞二訳 福音館書店

かなしいかな、わたしは両親に絵本を読んでもらった記憶がない。 きっと読んでもらったことは絶対にあるはずなんだろうけど、記憶がないのだから仕方がない。 だから、絵本の世界の楽しさを知ったのはわが子をもってから。

おそまきながら知った絵本の世界は、たのしくも美しくもあり、そのすこしの文章と魅力的な絵のシンプルさに度肝を抜かれた。

詩集も絵本も想像力を掻き立てる。 すこしだけのことばと絵。 その圧倒的な情報量の少なさに焦りすら感じる。

この「よあけ」もまた、ただおじいさんとその孫が湖のほとりで一夜を明かすだけの物語なのに、ひとつひとつの場面が静かで美しくて豊かな時間が流れているのが伝わってくる。

いいなぁ、こんなの。

ただそれだけの感想しか浮かばない。

 

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私の一冊

西野内小代

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「還暦からの底力」 出口治明 講談社

今が一番若い。思い立ったらすぐ行動。行動しなければ世界は一ミリたりとも変わらない。

何かを始める事への躊躇は、失敗して自分が傷付いてしまうことへの怖れもあるのでしょう。

喜怒哀楽はその総量の絶対値で決めるべきで差し引き計算するものではない。

たくさんの喜怒哀楽があった方が楽しい人生。

印象深かった言葉を抜粋してみました。

万人に通用する論理とは思えませんが、参考になる事柄も多く、気づかされることもたくさんあり励まされる内容です。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん」 高野文子作,絵 福音館書店

青空の広がる日、外に干した布団の気持ちよさといったらありません。その布団に飛び込んで、ぐっすり眠る。これは、かなりの幸せ。

人が布団で過ごす時間は意外と長く、1日の3分の1〜4分の1を四角いスペースの上で過ごしています。

たかが布団、されど布団。この本を読めば、ついワンセットに扱われがちな「しきぶとんさん」「かけぶとんさん」「まくらさん」は、それぞれ重要な役割を担っていることに気付きます。

寝る人がしきぶとんさんに頼みます。

「あさまでひとつおたのみします。どうぞ わたしのおしっこが よなかにでたがりませんように」

しきぶとんさんは答えます。

「おれにまかせろ もしもおまえのおしっこが よなかにさわぎそうになったらば まてよまてよ あさまでまてよと おれがなだめておいてやる」

しきぶとんさんが、朝まで見守ってくれていたとは!

そんな視点で布団を見たことがありませんでした。

かけぶとんさんは「ひるまころんで ちのでたひざも なめてさすってあっためて」直してくれ、まくらさんは、おっかない夢を鼻息で吹き飛ばしてくれる。

だから、人は安心して眠れるのです。

最後は「しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん いつも いろいろ ありがとう」でこのお話は終わります。

本当に、ありがとう。

今日も気持ちよく眠れるよう、寝床を整えたいと思います。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「すてきな子どもたち」 アリス・マクレラン文 バーバラー・クーニー絵 北村太郎訳

小学生のころ、公園の木の一つを自分の秘密基地に定めていました。木にまたがって本を開く時の嬉しさと言ったらありません。木の葉の匂いや風の心地よさ、いつもよりも倍、読書を楽んだことでした。そんなことを思い出させてくれたのがこの絵本です。

大人の介入しない子どもたちだけの場所で、思う存分想像力を働かせてダイナミックに遊ぶ楽しさ。毎日毎日出かけて行っては遊びに興じ、頭と体をフルに使って過ごす時間の豊かさがクーニーの美しい絵で描かれており、読み手にも子どもたちの幸せな気持ちが伝わってきます。

 

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私の一冊

澤田みどり

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「土佐の味  ふるさとの台所」 梅原真  取材,構成,デザイン (旧)高知県生活改善協会 編集 「ふるさとの台所」復刻を熱望する会 発行

「土佐の食文化を愛する人たちの熱望を受け、30年ぶりにふたたび復刊」と、本の帯にある。

この本を発行したのは、高校の先輩だったこともあり、少しお高めの値段(2160円)だったが、お値段以上(どっかで聞いた?)の内容で、すぐ購入した。

【素材】
春、夏、秋、冬、年中の5ブロックに分かれていて、もう一度、旬の感覚をとりもどしていただくために、とある。
確かに、きゅうりやトマト、なす、ピーマンなどは年中、出回る。消費者の要望もあるだろうし、農家の収入の面でも致し方ないとは思うのだけれど…。

【料理】
市町村別に出ているので、生まれ育った土佐山田町(現 香美市)と、現在暮らす土佐町の両方を見ることができるのが嬉しい。
普通の料理ほんとは全く違っていて、聞いたこともない、食べたこともないお料理がいっぱい出てくる。

【暮らしの行事】
正月のもちつきは12月29日についたらいかん、とか、土佐町の神祭では、皿鉢の下に敷いた南天の葉っぱだけがさらに見える頃になっても帰らん衆を南天組と呼んだとか、知らないことだらけで面白い。

【名人登場のコーナー】
土佐町の和田幸子さんが、いたどり、わらびの塩漬け名人として出ているのも誇らしい。
発行した先輩の最後の言葉として「本棚の片隅で眠っているのではなく、できたらボロボロになって欲しい」とある。

「はい、先輩!ボロボロになるまで、愛用させていただきます」。

 

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私の一冊

石川拓也

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「あれよ星屑」 山田参助 KADOKAWA

なんでこんなすごい漫画が描けるんだろう?

久々にそう思わせてくれた漫画です。こんなに悲しくて切なくて、エグくて輝いている漫画を描ける人間に、叶うことならなってみたいと思います。

物語は戦後の混乱期から始まり、中国戦線から復員してきた黒田門松と、「班長殿」と呼ばれる川島徳太郎を中心に進んでいきます。

男も女も子供も老人も、悲しみと敗北感を抱えながら今日を生きることに必死で、だからこそ命が輝くような、そんな物語。

冒頭に班長殿は「黒田 俺はな あのとき死んだほうが良かったと思っとる」と言って酒浸りの生活を送っているのですが、物語が進むにつれその鬱屈の正体が判明していきます。

戦後と戦中(二人の中国戦線時代)が交錯し、時には異常な極限状態の中で、人間性を失うことを強要される(もしくは人間性を失った方が楽になれる)ような現実を眼の前にして、さあお前ならどうするかとヒリヒリする問いを投げかけられているような気がします。

その闇の部分が漆黒の深い闇として描かれている分、戦後の少々コミカルでエロも入った部分が光として輝く。

大人の漫画として、なぜ今まで読んでなかったんだろうと悔しくなりました。

とさちょうものがたり編集部に全7巻置いてありますので、ご興味のある方は読んでみてください。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「どうぶつサーカスはじまるよ」 西村敏雄作 福音館書店

「母さん、このプツプツ、なんだろう?」

長女が4歳だった時、手のひらを広げて、私に見せに来ました。手のひらには赤い発疹がいくつか。「あれ?なんだろうね?」そう言っている間に発疹はどんどん増え、顔やお腹、足に広がっていきました。次第にその点同士が繋がって、全身は紅色のまだらの斑点で覆われました。熱もどんどん高くなる。呼吸も乱れ、ぐったりとしている娘。

その症状を見て、思いました。まさかと思うが、間違いない。多分、麻疹だ…。

熱の塊になっていた娘をおんぶして病院へ。お医者さんは「あれ?はしかかな?でも背中に発疹がないのがおかしいね…」と言います。多分予防接種をしていたから、背中は斑点が出なかったのではとのこと。結局、血液検査で麻疹だとわかりました。

麻疹は感染力が強いため、治るまで外に出られません。治るまでどうやって過ごそう…。

先が見えず途方に暮れていた時、本屋を営む知人の顔が浮かびました。

「思いっきり元気になれる、楽しい気持ちになれる本を送って!」

その注文に応えて、送ってくれたのがこの本でした。

パンパカパーン、パンパンパン、パンパカパーン!で始まるどうぶつサーカス。馬のダンスやワニの組体操。ライオンの火の輪くぐりでは、ライオンの毛が燃えていました(笑)。空中ブランコでは、怪我をして出られなくなった猿の代わりにお客さんのぶたが宙を舞う。いい意味でのんきで楽しい動物たちに、どんなに励まされたか!

一緒に笑うことで不安やしんどさを吹き飛ばし、麻疹の日々を何とかやりくりしていました。今となっては、たまらなく懐かしい思い出です。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「エイドリアンはぜったいウソをついている」 マーシー・キャンベル文, コリーナ・ルーケン絵, 服部雄一郎訳 岩波書店

今年1月に出版されてから何人もの友人に薦め、何度も読み返している絵本。絵本ならではの仕掛けはみごとで“魔法”と呼びたくなるくらい素敵な仕掛けです。

まじめで嘘が許せない主人公の女の子は、同じクラスのエイドリアンが「うちには馬がいるんだよ」という度にいらついてしまいます。小さな家におじいさんと二人で住んでいるエイドリアンが馬を飼っているはずはないからです。

いつものとおり、エイドリアンが馬のことを話し出した時、女の子は思わず「それ、ウソだよ!」と叫んでしまいます。そのときのエイドリアンのすごく悲しそうな目…。正しいことをした女の子でしたが、気持ちは晴れません。

ここからの展開と物語に寄り添う絵が秀逸で、読み返すたびに幸せな気落ちに包まれます。

自分とは違う価値観を受け入れた瞬間にパッと世界が広がる、驚きとうれしさ。自分で自分の周りに作っていた壁を突破らった時に見える豊かな世界の美しさ。様々なものを伝えてくれる絵本です。

 

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私の一冊

石川拓也

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「望郷太郎」 山田芳裕 講談社

「Dr. Stone」 稲垣理一郎(原作)Boichi(作画) 集英社

「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」 ルイス・ダートネル  河出書房新社

「ゼロからトースターを作ってみた結果」トーマス・トウェイツ 新潮社

まったく関係のなさそうな4冊を、なぜ一つにまとめて紹介しているのか?

表現手法はそれぞれユニークに異なってはいるものの、その表現の底辺に流れる欲求やスピリットの部分で、共有しているものが多いと思い、敢えて4つまとめての紹介にしました。

その共通項は何か?

答えは「この科学文明社会がフラット(もしくはペシャンコ)になった世界」の視点。

「望郷太郎」は大寒波で、「Dr. Stone」は石化光線、「この世界が消えたあとの〜」は今後そういった状況を想定して、「ゼロからトースターを〜」は、原材料からトースター1個を作るという実験。

このうちのどれもが間違いなくおもしろくて、今後それぞれ各論で紹介したいと考えていますが、こういった共通項を主題に持つ本や物語が、現在の世の中で人気を集めている理由は何か?

そこに文明病を患う現代人全員の、本能に近い部分にある欲求がかいま見えるような気がします。

 

 

 

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私の一冊

山門由佳

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「よもぎだんご」 さとうわきこ作 福音館書店

せんべいを焼くのを生業としているけれど、いままで『てづくりのおやつ』というものには無縁の人生だった。 朝から晩まで忙しい共働きの両親のもと『てづくりのおやつ』なんてものは高嶺の花のような存在。

しかしながら、小学2年生の時、ひとりで本を見ながら奮闘してはじめて作ったクッキー。 ワクワクドキドキ、オーブンをあけると…、黒い塊が煙とともに姿を現した。。。 ニガイ思い出である。トホホ。

でもその事件は幼き心にとっては衝撃大。 ちょっとしたトラウマとなり、それ以来、お菓子を手作りしようとはしなかった。

のちにわたしも母となり、息子が保育園から借りてきた絵本に『ばばばあちゃん』シリーズとの出会いがあった。

ばばばあちゃんは、子どももびっくりするくらい遊び心満載で、いろんなことも知っていて、おばあちゃんらしく知恵たっぷりなんだけれど、全然大人ぶってない感じのするおはあちゃま。動物たちや子供たちに囲まれながら、誰も思いつかないようなユニークな遊びを生み出したり、彼らとおなじ目線でいつもワイワイお料理も楽しむおばあちゃま。

でも最後ちゃっかりしてたり、自由気ままに生きてる感じがするところもあり 、そこがまた、ばばばあちゃんの魅力なのだ。

ばばばあちゃんのつくるおやつは、身近に用意できる材料と、いたって簡単な方法でつくられている。もしかしたらわたしにもできるかもしれない…、やってみようかしらん。そんな気持ちが芽生えた。

そしてつくったのがこの『よもぎだんご』。

よもぎが生える季節を待ち、めいっぱいよもぎを摘んで、よーし!ととりかかる。

ゆがく→つぶす→混ぜる→蒸す

たったそれだけのプロセスなのに、お菓子づくりとなると過去のニガイ失敗体験から、途中何回確認するんだというくらいこの絵本を広げては、ばばばあちゃんのおっしゃる手順を追いながら、出来上がった必死のよもぎだんご。 ちゃんと出来上がったその『てづくりのおやつ』に、息子よりしみじみ感動したのはわたしだった。

ばばばあちゃんに「よくやったじゃないか」と、ほめてもらえたような気がした。

ちょっとこれ以来いい気になって、オーブンの購入まで検討するきょうこの頃なのである。

 

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