土佐町のものさし

土佐町のものさし

⑥ 「土佐町幸福度調査アンケート」ついに完成です!!

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この連載「土佐町のものさし」は、現在進行形の旅の記録。
時代とともに変化していく世界の価値観(=ものさし)の大きな流れの中で、土佐町の人々が、土佐町のためにこれから作っていく「土佐町のものさし」を探し求めて歩く旅の記録です。

 

完成した「土佐町幸福度調査アンケート2019」2ページ目

 

 土佐町の現在

 

しばらくブータンのことが続いていましたが、土佐町の現状に戻りたいと思います。

(ブータンのことはまだ書くことがあるので、今後まぜまぜにいきます。)

アンケートの内容作りが続いていた土佐町役場。高知大学地域協働学部の協力も得て、ああでもないこうでもないと議論を重ねてきました。

昨年12月には土佐町役場職員を対象にした検討会。各課・社協から数名ずつの職員に出席してもらい、ここでも議論が進みました。

 

課が変わると目線も変わる。実行委員会が想像もしなかったような角度からの意見が出てきたり、これで一段と土佐町の地に足の着いたものになったと感じます。

 

 佐川町へ

 

12月末には、高知県佐川町へ視察へ。役場職員、地域住民が一体となって総合計画を作り実施している佐川町。

さまざまな取り組みの話から、自分の町の現在、過去、未来を見つめ、目の前の現実を少しずつでも動かしていこうという佐川町の職員さんの熱意がひしひしと伝わってきました。

佐川町は総合計画を作る過程で幸福度調査をしています。そしてその結果を佐川町の10カ年総合計画の骨子作りに反映しています。

2年間に渡る住民参加での総合計画作りは、書籍みんなでつくる総合計画 : 高知県佐川町流ソーシャルデザイン」にわかりやすくまとめられています。

 

石川拓也

 

ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。佐川町役場の職員の皆様、お忙しいところ詳しいお話を聞かせていただきありがとうございました!

 

 住民検討会

 

4月5日には、土佐町の住民から6名の方々に出席いただき、住民検討会を開催しました。

出席者は様々な年代、仕事、立場の方たち。あかうしを育てている方、林業に携わっている方、県外から引越して来た方、自営業の方、集落活動センターの代表の方、社会福祉協議会職員、県庁の職員の方。

ここでもまた住民目線の、暮らしに根付いた視点から「土佐町の幸せとは何か?」「それを形にするためのアンケートとは何か?」という議論が進みます。

例えばこんな意見。

道つくりや農作業など地域の人と協力して行う仕事は「ボランティア活動」ではなく「ここで暮らすため、生きるための取り組み」。

このアンケートを読む時、町の人たちが「自分ごと」として考えられるものにしたい。誰かの顔が思い浮かぶような質問の仕方が大事なのではないだろうか?

アンケートは町の職員が直接手渡すことになっているが、職員みんなが一律の熱意を持ってこのアンケートをする意味を伝えられるのか?どうしてこのアンケートを行うのか、町の人にきちんと理解してもらわないといけない。

アンケート結果を、町の人たちにどう還元するのか?

土佐町で暮らす多くの人にとって「あたりまえ」のことは、実は決して当たり前ではない。

 

住民検討会に出席いただいた皆様、お忙しい中大変ありがとうございました!

 

 ついに完成!!

 

そしてその後はさらなるブラッシュアップと高知大教授との議論を重ね、ギリギリのタイミングではありますが、「土佐町幸福度調査アンケート2019」がついに完成となりました!

 

2019年4月23日から、アンケートの実施が決定しています。土佐町の全住民から、無作為で抽出された方々を対象としておりますので、今これをお読みのあなたの元にも届くかもしれません。その時はぜひご協力のほどよろしくお願い致します。

またこれは町内外関わらず、多くの方々にぜひ読んでいただきたいアンケートです。

ご興味のある方はぜひ以下のリンクからダウンロードしてみてください!

 

ちなみに、このアンケートには、別紙でこのような紙が添えられています。

このアンケートによる「幸福度によるまちづくり」と、国連が提唱する未来作りの指標である「SDGs」。

この二つは表現の仕方が違えども、根本の考え方は同じものと土佐町役場は考えています。

ですので、今回の「幸福度調査アンケート」には、一つの項目につき対応するSDGsの項目のロゴを配置しています。

具体的には、ぜひアンケート票をダウンロードして確認してみてください。

 

 今後のスケジュール

 

「土佐町幸福度調査アンケート」にまつわる今後のスケジュールは以下のようになっています。

 4月23日 土佐町役場職員勉強会 

高知大学地域協働学部の梶先生がアンケート内容の意味や配布訪問時の留意事項などを実際に配布に当たる役場職員全員に説明をする日です。

 4月24日〜5月20日 アンケート実施 

 5月20日 アンケート回収終了    

アンケート集計結果の概要(速報値)を提出、その後高知大学が本格的なデータ解析作業に入ります。

 7月 第2回土佐町幸福度調査住民検討会

 

そしてさらに俯瞰で見た全体的な計画(大ざっぱですが‥)は以下の通り。

 

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土佐町のものさし

【番外編】ブータン・GNHレポート No.4

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 土佐町の新しい指針を作る過程を追う「土佐町のものさし」、今回は【番外編】として、GNHの産みの親であるブータンのGNHの現状を、とさちょうものがたり編集長である石川がレポートします。

 

4.  ブータンの食事

 

ブータン料理って、日本ではなかなか馴染みのないものですよね?

チベットとインドに色濃く影響を受けながら、ブータンも独特の食文化を育んできました。

今回は、ブータンの人々が普段食べている食事を紹介したいと思います。

 モモ

上の写真は「モモ」と呼ばれる「チベット餃子」です。

たいていのお店にはミート(豚)とチーズの2種類があり、ブータンの人にとってはファーストフード的に気軽に寄って食べていくスタイルです。

皮は厚めでもちもち、美味しいです。


上の写真はブータンの典型的な食事です。

ブータンでは大抵このようにご飯とおかずがドドドン!と置かれていて、脇に置かれた食器を各自が持って自分の皿に好きな量を取っていく形です。

ブータン料理はトウガラシが大量に使われるのが特徴です。僕自身は辛いのがあまり得意でないので、トウガラシの塊はできるだけ出会わないように気をつけていました。

がさつな人が盛り付けたがさつな皿。

ブータン料理のイメージを傷つけてしまってないか心配です‥。

先に書いたように、ブータン料理は各自が皿を持ち盛り付けていくスタイル。

どうあっても繊細な盛り付けができないこの皿の主は、ご想像の通りわたしです。。。ブータンの人々すみません。

左上に見えてるのは「ダル」というスープ。インド料理でもありますが、ブータンのダルはまろやかで美味しいです。

上はブータン西部にあるシュラブッチェ大学を訪れた際に食べさせていただいたランチ。

盛り付けはさっきのよりかは、こっちのほうがマシでしょうか。ここで食べたランチは非常においしいものでした。

 

 チュルカム(乾燥チーズ)

上の写真は「チュルカム」という乾燥したチーズ。乾燥してるだけあってかなり固いです。

移動の道中、田舎の峠にあった小さな商店で店先にたくさん吊るされて売られていました。

これはブータンの伝統的なおやつ。ブータンの人はみんなチュルカムを口の中でコロコロ転がしながら1、2時間楽しむようです。

 

店頭にチュルカムが干されている、の図。ちょっと干し柿みたいですね。
味はあんまりしないです笑

ブータンに滞在中は、ほんとに大量のお茶を毎日飲みました。

空気が乾燥していることもあり、そして高度に順応するための水分補給ということもあり、食事時には何杯ものお茶を飲み、食事時でなくてもチャンスがあれば何杯ものお茶を飲み。

おそらく2019年2月前半の「ブータンお茶摂取量(個人の部)」では相当イイ線行ってるはずです。誰か集計してくれないかな。

写真はふつうの紅茶ですが、ダントツで一番よく飲んだのはミルクティー。ブータンのミルクティーはミルク多めのコク強めです。インドのチャイに近い印象です。

 

食事をしている最中に周りをウロウロしていたブータンの猫

 

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土佐町のものさし

【番外編】ブータン・GNHレポート No.3

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 土佐町の新しい指針を作る過程を追う「土佐町のものさし」、今回は【番外編】として、GNHの産みの親であるブータンのGNHの現状を、とさちょうものがたり編集長である石川がレポートします。

 

3.  インスティチュート・オブ・ウェルビーイング Institute of wellbeing

 

 良くあること学院

 

ウェルビーイング(wellbeing)という語は、日本語でぴったりな言葉を見つけるのがなかなか難しいのですが、「良くあること」「健康で安心な状態」を指します。

なので「福祉」や「幸福」と訳す場合もあるようです。

ここではあえて強引に「良くあること学院」とでも訳しましょうか。「いや、それムリ‥」というブータンからの声が聞こえてきそうです。やっぱりそのまま「インスティテュート・オブ・ウェルビーイング」でいきましょう。

 

 

 ミッション

インスティテュート・オブ・ウェルビーイングは、ブータンの首都ティンプーから車で40分ほどの、山間地帯にあります。

周囲は瓜二つと言えるほど土佐町の自然にそっくり。ブータンをもう少し水っぽくして苔っぽくしたら土佐町の風景になりそうです。

土佐町の風景に似ていませんか?

インスティテュート・オブ・ウェルビーイングは、ブータンの国策であるGNH(国民総幸福度)の思想に則って、青少年の育成に努めている機関です。

さらに具体的に言えば、薬物やアルコール依存に陥った青少年を更生させることがミッションの大きな部分を占めています。

そのため、ここに一定期間居住できる居住棟があり、私たちが訪問した日にも数十人の若者が共同生活を送っていました。この日はちょうど家族デーに当たり、遠方の家族がここに住む方々を訪れていた1日でした。

 

奥の建物が居住棟

 

 

 ダショー・ペマ・ティンレイ

 

ここの学院長は、写真にも写っているダショー・ペマ・ティンレイ氏。

「ダショー」というのはブータンにおける尊称で、国王から授与されるものです。「最高に優れた人」を意味します。なのでファースト・ネームではありません。イギリスでいうところの「ナイト」みたいなものでしょうか。

ペマ・ティンレイ氏はブータンの最高学府であるブータン王立大学の学長を務めていた人物で、退官したのち請われてインスティテュート・オブ・ウェルビーイングの学院長をされています。

ダショー・ペマ・ティンレイ氏

ちなみにティンレイ氏が着ているこの着物に似た民族衣装、男性は「ゴ」女性は「キラ」と呼ばれ、ブータンでは日常の普段着として町でもよく見かけます。

正確に言えば、よく見かけますというレベルではなく、ほぼ皆さん民族衣装を着て町を歩いてます。特にブータンの公務員は、就業中の民族衣装の着用を義務付けられているということです。

 

話を戻します。

インスティチュート・オブ・ウェルビーイングのミーティングルームで、ダショー・ペマ・ティンレイ氏にGNHについてお話を伺いました。

左:ダショー・ペマ・ティンレイ氏 右:京大東南アジア地域研究研究所・安藤和雄氏

 

 人間を理解する

以下はダショー・ペマ・ティンレイ氏のお話から。

GNH(国民総幸福度)の本質とは、言い換えれば「人間を理解する」ことです。

自己を見つめ、人間を理解し、より良い人間になること。より良い人間になろうとすること。それがより良い家族を作ることにつながります。そしてそれがより強いコミュニティーを作ることになり、それは国の繁栄と平和で安定した国際社会を作ることになるのです。

その全ての始まりは、一個人が、自分自身に対してリーダーシップを持つことから始まると考えます。

ブータンは仏教国だからGNHが可能なんだという指摘がありますが、それは誤りです。

実際にはどんな宗教であれ、宗教に関連がなかろうが、人間が生きていく上で「人間を理解する」ことは大変重要なことなのです。

 

先ほども書いたように、インスティテュート・オブ・ウェルビーイングの大きなミッションは、薬物やアルコール依存を患う若者たちの更正にあります。

現在ブータンでは、主に外国から入ってくる薬物に依存する若者の数が急増し、社会問題となっています。

インスティテュート・オブ・ウェルビーイングは、そういった問題を抱えた若者たちを一定期間ここで共同生活させ、運動や畑仕事を含む規則正しい生活を送ることによって薬物依存を断ち切り、再び社会に戻すことを活動の目的としています。

仏教国のブータンらしいのは、そこに「自己を見つめなおすため」の瞑想の時間があること。

これはGNHの目的とも深く関連することだと思うのですが、「自己を見つめなおす」「人間(=自己)を理解する」ということは、個人レベルから世界規模の視点まで含めた全ての基本である、というのがGNH・ブータン政府・仏教などに共通した姿勢であるでしょう。

そこに「仏教」はブータンの場合、とても大きな要素として機能しているのですが、この【「自己を見つめなおす」ということが全ての基本である】という考えは、仏教に限った話では決してないことですし、さらに言えばティンレイ氏の言葉にもあるように宗教に限ったことでもないと思います。

ブータンと違い、政教分離の原則のある日本では、施策の根本に宗教的な考え方を置くことはありません。

なので一つの具体的な施策が、「人間を理解する」という深い階層からスタートすることは、実はあまりないんじゃないかというのが、日本に育ち生きてきた個人として思うところです。

ただやはり、大小問わず全ての自治体や政府の目的には「人間のため」という根本があるはずで、だとすれば「人間を理解する」ということはそのスタート地点で実は必須なことなのではないでしょうか。

 

僕自身、個人的にも「人間を理解しているか」と問われれば、そんなに立派な答えを返せる自信があるわけでもないのですが、それでも可能な限り根本的なところから自己や自分の人生や仕事を問い続ける、ということはやっていきたいと考えています。

 

パロで出会った少年僧

 

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土佐町のものさし

【番外編】ブータン・GNHレポート No.2

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 土佐町の新しい指針を作る過程を追う「土佐町のものさし」、今回は【番外編】として、GNHの産みの親であるブータンのGNHの現状を、とさちょうものがたり編集長である石川がレポートします。

 

2.  ブータンの峠

 

幸福度やGNHの固い話を少し離れて、ブータンの旅の話をしたいと思います。

今回、ブータンの東西を縦断するような形で旅をしました。国際空港のある町・パロを始点に、首都ティンプーを通り東端のシュラブッチェ大学まで行く旅です。

 

 

 ブータンの面積は九州と同じくらい。でも‥‥

 

地図で見ると、ブータンってそんなに大きくない。面積を調べると九州と同じくらい。

でも‥でも‥ブータンって高低差がハンパない。西側から東側へたどり着くまでに、3000m級の峠をいくつも超えることになります。

そのうちのもっとも高いトゥムシンラ峠(Thrumshing La)は標高3,700m。ちょうど富士山と同じ高度を車で越えていくわけです。

トゥムシンラ 空気が薄い…

 

 

こういう峠をいくつも越えてブータン西部から東部へ行ったわけです。

例えれば石原から黒丸への山道を、高低差3倍ぐらいにしたような濃度で越えていきます。根曳峠がかわいく見えてきます。

当然、九州を横断するより時間もかかる。
西から東へ、だいたい2,3日かけて行くのが一般的なようです。

トンサという町のマンディチュ・ダム

高度の高い峠や山道を通っている時は、川や谷がはるか彼方の下方に見えます。

こうして峠と谷をいくつも越えて西の玄関であるパロから、東の目的地であるシュラブッチェ大学(Sherubtse College)のあるタシガン(Trashigang)まで、途中で宿泊しながらの往復をしました。

短時間での高度差と温度差、空気の薄さと乾燥、体にはなかなかこたえる旅程。

ただこうやって地べたを走ることで、地図で見ても決して感じることのできないブータンの壮大さを身をもって感じることができたと思います。

裏を返せば、それは人間という存在の小ささ、脆さ、たくましさ。

地球という惑星の表面にできた壮大な突起物の、ほんの一端にしがみついて綿々と暮らしを続けてきたという事実を身をもって感じた気がします。

 

もみの木の山。これを通称ブラック・マウンテンと呼ぶのだそう。

世界の車窓から

谷はこんな感じ

この橋は日本の協力のもと架けられたそう

橋の袂にはこんな碑が掲げてありました。

これは日本とブータンとの友好と協力の証。

ブータンの山奥の小さな川に小さな橋を架けることは、地球という単位から見ると本当に取るに足らないことかも知れません。

でもこうして両国の先人たちが小さな行動を積み重ねて、世界が少しずつ良くなってきたことを実感します。

自分とか自国のみが裕福になることを目指すのではなく、足りないところに足りないものを少しずつ補っていく。

そういう行動が積み重なった上に現在の世界が成り立っているのだと思います。

実際に、現在の地球上で極度の貧困にある人間の数は徐々に減少傾向にあるということです。(国連のデータによる)

例えば中央アフリカの諸国は、貧しいイメージがあり実際に貧しいところも多いのですが、それでも過去に比べて状況は飛躍的に改善している。(現時点で、良い状態であると言っているワケではなく、過去よりは良くなってきているという意味です。)

そしてそういった改善は、上の写真の碑に見られるような、大きなニュースになることもない小さな行動の積み重ねによるものだと思います。

自分自身がしてきた、もしくはこれからするであろう小さな仕事のひとつひとつも、そういう「少しだけでも世界を良くする」仕事でありたいと、でこぼこの山道に揺られながら、高地の薄い空気のぼーっとした頭で考えたのでした。

 

 

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土佐町のものさし

【番外編】ブータン・GNHレポート No.1

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 土佐町の新しい指針を作る過程を追う「土佐町のものさし」、今回は【番外編】として、GNHの産みの親であるブータンのGNHの現状を、とさちょうものがたり編集長である石川がレポートします。

 

1.  GNHコミッション

 

さあ、ここからはGNH関連の人物や取り組みなどを、ブータンの風景などとともに紹介していきます。

順不同で、独断と偏見により石川が紹介したい順に書いていきます。

まずはGNHコミッション(GNHC)

これがティンプーの中心にほど近い、GNHコミッションの建物。

いきなりGNHの総本山のようなところに来てしまいました。

GNHコミッション」はブータン政府の政策が、GNHに基づいた策定がなされているかというチェック機能を持った国権の最高機関です。

GNHの哲学に則した、ブータン全国民にとっての「幸福度の促進」を目指す公的な機関なのです。

 

GNHコミッション入り口。ちなみにブータンの建築物は全て伝統的な外観を保つように義務付けられています。

GNHコミッションのデチェン・ペルモ(Dechen Pelmo)さん。

 5ヶ年計画とブータン・ビジョン2020

 

ブータン政府は、1961年より5年毎に 「5カ年計画」(“The 5 Year plans of Bhutan”) を作成し、それを指針にして国を運営しています。

2018年にその11番目の計画が終了し、2019年度から新たに12番目の「5カ年計画」が始まります。

その5ヶ年計画ももちろんGNHに則ったものであり、それぞれがGNHの理念をどう具体化するかという指標です。
またブータンには1999年に策定した長期ビジョン、通称「ブータン・ビジョン2020」があり、これには都市部と地方部の格差是正、貧困削減、産業振興等が大きな目標として設定されています。

2020年までの目標設定ですね。

 

そういった5年ごと、20年ごとの大きな流れの中で、GNHコミッションは特にGNH(国民総幸福度)をどのようにブータンに浸透させていくか、またはどうGNHの理念と現実を噛み合わせていくかという観点で仕事をしている機関です。

いわばGNHの運用面と言ってもいいかもしれません。

 

第12回5カ年計画 12 FIVE YEAR PLAN 1 NOVEMBER, 2018 – 31 OCTOBER, 2023

Bhutan 2020 : A Vision for Peace, Prosperity and Happiness  Part 1

Bhutan 2020 : A Vision for Peace, Prosperity and Happiness  Part 2

 

  GNHインデックス

 

ブータンのGNHは、GNHインデックスという指標を使い、GNHアンケート調査(前回は2015年に実施)の結果をこれにより分析発表しています。(Center for Bhutan Studies & GNH

GNHインデックスによると、前々回のアンケート調査に比較して、前回のものは例えば‥

  • 身体的な健康は上昇⤴︎
  • 精神的な健康は下降⤵︎
  • コミュニティへの所属意識は下降⤵︎

というような結果が出ているので、この結果に沿った現実的な施策やプロジェクトを行っていくという考え方です。

 

2015年ブータン幸福度調査報告書 A COMPASS TOWARDS A JUST AND HARMONIOUS SOCIETY | 2015 GNH Survey Report 

 

  政策のチェック機能 ポリシー・スクリーニング・ツール

 

またGNHコミッションは幸福度の観点から見た政策それぞれのチェック機能も担っています。

ポリシー・スクリーニング・ツール(Policy Screening Tool)というのがそれにあたり、22種類のチェック項目が、各4点満点で設問されています。

 

上の図のように、1. ストレス 2. 文化 3. 身体的運動‥‥とチェック項目が22個あり、それぞれ4点満点で採点する

 

つまり全てにおいて4をもらえれば、88点満点になります。これを閣僚とGNHコミッションのメンバーの15人〜20人で検討し、66点以上取れればその政策はオッケー!ということになります。

66点以下の場合は策定者に差し戻され、修正のうえ再度のチェックになります。

これはGNHがどうしても「理念」の話であるが故に、どうやって現実的に効力を持たせるかという点においてとても大切なことだと、個人的には思います。

正直に言えば、今回ブータンにはるばる来た理由もそこにあります。

「幸福になった方がいいよね〜」というようなことは、誰でも口で言うことはとても簡単なことな訳です。

「より幸福になりたい」という思いも全人類で共有できるものでしょうし、言えばある程度の共感は得られる。

ただそのために、じゃあ何をどうやっていくのか、が難しい。現実とどのようにぶつかっていくのか、どうしたら言いっ放しにならないで現実的な行動に繋げられるのか、そういった観点からGNHの運用面を知るためにブータンまで来たのです。

そしてこのポリシー・スクリーニング・ツールも、現実とGNHを噛み合わせるための仕組みのひとつと言えるでしょう。

 

 政策(ポリシー)のチェックとプロジェクトのチェック

 

GNHコミッションのデチェン・ペルモさんによれば、政策(ポリシー)のスクリーニングは上記のような仕組みで行っているのですが、その政策に付随する形となる具体的なプロジェクトまではスクリーニングを行っていないということ。

「そうね、プロジェクト単位でもスクリーニングはすべきだと私も思います」

そうデチェン・ペルモさんは話していました。

今後のGNHコミッションの動きとして実現するかもしれません。

 

 

 GNHとビジネス

現在、新たな動きとしてGNHコミッションが取り組んでいるのが「GNH サーティフィケーション (GNH Certification)」と呼ばれる、ビジネスにおいてGNHの観点を当てはめていく仕組み。

これは2018年より稼働し始めた新しい取り組みということです。

ブータンで新たなビジネスを始める際にこの認証を受ける必要があり、この認証はGNHの価値観にそのビジネスが沿っていることを証明するものだそうです。

 

 いきなり堅い話になった!

このブータン・GNHリポート、第一回からいきなり堅い話になりました。

書いている当人もちょっとツライ。。。頭がついていかない。。。

ブータンのGNHのことを見聞きするためのブータン行なので、これはこれで必要なのですが、ずーっとこんな調子でいったらぼくの頭が爆発してしまう。。。

次回は、もう少し柔らかい記事にすることを誓います!!

 

パロ近郊の村での1枚。女の子は「キラ」と呼ばれる民族衣装を日常的に着ています。

 

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土佐町のものさし

【番外編】ブータン・GNHレポート No.0

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 土佐町の新しい指針を作る過程を追う「土佐町のものさし」、今回は【番外編】として、GNHの産みの親であるブータンのGNHの現状を、とさちょうものがたり編集長である石川がレポートします。

 

ドゥルク・エアー バンコク発パロ行きKB153便の畿内から。雲よりも高くヒマラヤがそびえる。

 

 

 GNHの産みの親・ブータンってどんな国?

ブータンに行ってきました。

この連載でも度々お伝えしてきましたが、GNH(Gross Nasional Happiness = 国民総幸福度)の産みの親、それがブータンという国です。

もう少し詳しく説明すると、GNHが産声をあげたのは、時は1972年、所はインドのボンベイ空港。

当時の第4代国王が、ある国際会議の帰り道、ファイナンシャル・タイムズの英国人記者のインタビューを受けた際に、初めてGNHという言葉を公に使用したと伝えられています。

「GNHはGNPよりも重要である 国王は記者に対してそう言いました。

それは、貧しく小さいブータンという国の国王に対して、多少バカにした態度で接してきた記者に対する反骨心の表れでもあったといわれています。

ブータンなめんなよ!という気持ちが、「GNPで計る豊かさよりも大事なものがブータンにはあります」という言葉になって出たのでしょう。

それ以来、ブータンはGNPによる物質的な豊かさの比較の中で競争するよりも、「幸福度」という尺度による国づくりを行おうとしています。

※ ”Gross National Happiness is more important than Gross National Product.” –  by the king of Bhutan, Jigme Singye Wangchuck,

山肌を縫うように細い道が通る。

山がち。というか山ばかりっ!

 

 大きさは九州ぐらい。人口は山梨県ぐらい。

ブータンの国土は38,390㎢で、九州(36,750㎢)とほぼ同じ。2018年の人口は801,256人。これは山梨県と近い人数です。

ちなみに以下のグラフはブータンの世代別人口分布図。日本と比べると20代、30代の人口が突出しているのがわかると思います。

上:ブータンの世代別人口分布図

こちらが日本。 団塊の世代と団塊ジュニアが突出しています。

 

 

 能書きはこれぐらいにして。

話を前に進めましょう。「ぼくが見たGNHの現場ーブータン編」です!

2019年2月20日〜3月7日の日程で、京都大学ILASセミナー「ブータンの農村に学ぶ発展のあり方」のチームに混ぜていただきました。教職員スタッフ4名、学部生院生8名、僕を合わせて計13名。

リーダーである安藤和雄先生京都大学東南アジア地域研究研究所でブータンやバングラデシュ、ミャンマーなどで熱帯農学、農村生態を研究されている方。東南アジア研究におけるエキスパート。

もう一人のリーダーである坂本龍太先生はやはり東南アジア地域研究所にてフィールド医学を専門に研究されています。土佐町の方で「あ!」と思った方は多いかもしれません。そう、坂本先生はフィールド医学の関係で、土佐町にも度々来られています。

 

パロ空港へ到着時の一枚

 

1.  GNHコミッション

 

さあ、ここからはGNH関連の人物や取り組みなどを中心に紹介していきます。

順不同で、独断と偏見により石川が紹介したい順に書いていきます。

まずはGNHコミッション(GNHC)

これがティンプーの中心にほど近い、GNHコミッションの建物。

いきなりGNHの総本山のようなところに来てしまいました。

GNHコミッション」はブータン政府の政策が、GNHに基づいた策定がなされているかというチェック機能を持った国権の最高機関です。

GNHの哲学に則した、ブータン全国民にとっての「幸福度の促進」を目指す公的な機関です。

The Gross National Happiness Commission is the highest government body mandated to formulate and monitor policies. It is “an Institution that promotes an enabling environment for all Bhutanese to be happy and steer national development towards promotion of happiness for all Bhutanese guided by the philosophy of GNH. - Center of GNH

 

話はこれから‥‥というちょっと中途半端なところですが、長くなったので今回はこれまで。次回に続きます!

 

パロで道を教えてくれた少年。どことなく郷愁を感じます。

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土佐町のものさし

⑤ 言ってるだけやとあかんよね

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この連載「土佐町のものさし」は、現在進行形の旅の記録。
時代とともに変化していく世界の価値観(=ものさし)の大きな流れの中で、土佐町の人々が、土佐町のためにこれから作っていく「土佐町のものさし」を探し求めて歩く旅の記録です。

 

幸福度による町政を進めていく土佐町の幸福度調査アンケート、現在は骨格がほぼできあがった段階です。

これから役場の職員によるさらなる検討、そしてその後に町の住民の方々による検討会と進んでいきます。

幸福度とひと言で言ってみても、それはとても曖昧で主観的なもの。

「幸せの国」「幸せの町」と言葉で言うのは簡単なことですが、どうしてもイメージ先行の言葉の上すべり感は否めない。

それを町政の中心に据えるには、「幸福度」という言葉がとても主観的で抽象的だからこそ、かっちり現実的な考え方や行動に結びついている必要があると思います。

 

言ってるだけやとあかんよね。

どんな仕事にも言えることだと思いますが、特に幸福度・GNHという価値観の転換については特にそう思います。

題材自体が、ふと油断すると机の上の頭でっかちな議論になりがちなものなので、ふと気がつくと集まった人の多くが頭でっかち星人になっているという事態も多々あります。

頭からモノを言うのではなく、体から出る言葉を大切にして進めていく必要があると思うのです。

今回の記事では、幸福度調査アンケートをする意味について、もう一度しつこく書いてみたいと思います。

これは役場職員がアンケートの内容を練っていく過程で、ひとつづつ理解して獲得した「意味」でもあります。

 

 土佐町の住人が、土佐町の暮らしや環境、文化の価値を知る。

ある町の良さや価値は、ヨソモノの方が客観的に評価できるのではないか、とよく言われます。

土佐町で生まれ育った方々が、土佐町にすでにあるモノやコトや環境を、「そうであるのが当たり前」と受け止めていることはないでしょうか?

例えば土佐町の多くの人が持っている周囲の人々との強いつながり。大きな家族、と言ってもいいかもしれないぐらい強いコミュニティやご近所付き合いは、日本のどこにでもあるものではないと思います。

そのつながりが逆にしんどいことももちろんあると思いますが、それもわかった上で、その価値をいちどみんなでちゃんと議論して、それから町の方向を決めませんか?という提案がこのアンケートでもあるのです。

なぜなら、このようなコミュニティの強さは、一度壊れたらもう元には戻らないのですから。

なにかを変えるにしろ変えない努力をするにせよ、その価値をいちどみんなで共有してからにしませんか?

 

 土佐町が大事にしたいことを内外に宣言する

その上で、土佐町が大事にしていきたいこと、これからも守っていきたいこと、逆にどんどん変えていきたいことなどなどを明確に宣言する。

この辺りは、具体的な施策というよりはもう少し抽象的な言葉になるはずです。

大事なことは、経済(=お金)はそのうちの一部であって、決して全てではないということ。

何よりも上位にある目的は「町の住民がより幸せになること」であって、経済はそのための手段であるということ。

人が生きていく上でお金が大事なのは当たり前ですが、大きな経済のために不幸を生み出すようなことはあってはならないということ。

 

 

 土佐町の向かうべき方向を明確にする

土佐町の人々はどこからどのような道を歩んできてこの現在にいるのか? それを踏まえ、共有したうえで、これから行く方向を考える。

いくら良いエンジンを積んだ車に乗っていたとしても、進む方向が定まっていないとどこにも到着しないですよね。

「土佐町は今後こういう方向に進みたいんだ」という理解を共有してはじめて「そのためには現実的にこういうことをするんだ」という具体的な議論ができるんじゃないかと思います。

 

 現実的な施策や行動に反映する

ここまで辿り着くまでにけっこう長くなってしまいました。書けば書くほどどんどん理屈っぽくなって頭でっかちになっていくようでイヤですよね。ぼくも頭でっかち星人になるのはイヤなんです。

何度も書きますが、幸福度やGNHは言葉で言うことはカンタンなんです。

ただ、言っているだけでは本当に意味がない。言っているだけなら、最初から言わない方がいいんでないの?って思うくらいです。

というわけで、この「現実的な施策や行動に反映する」という段階がもっともキモの部分。個人的にはそう思っています。

「反映する」というよりかは、本当は発想の大元や評価基準を幸福度にシフトしていく、という方が合っているかもしれません。

果たしてこの仕事が土佐町の住人の幸せに繋がっているのか?そういう視点で役場の様々な事業を一度見つめ直してみる。

何かが原因でうまく繋がっていないなら、現実的なやり方を変えて繋げなおすということが必要なんじゃないかなと思います。

「←いまココ!」の土佐町では、住民幸福度調査アンケートが完成間近です!

 

 

 

ところでワタクシ、現在ブータンのパロという町にいてこの原稿を書いています。

国民総幸福度(GNH)の産みの親であるブータンの、現実的な国民総幸福度への取り組みを学びに、京都大学の研究チームに混ぜてもらっています。

次回からのこの連載(ネット回線の都合上、帰国後になる可能性が大きいですが‥)はブータンからのレポートをお送りします!

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土佐町のものさし

④ そもそもなんのため?

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この連載「土佐町のものさし」は、現在進行形の旅の記録。
時代とともに変化していく世界の価値観(=ものさし)の大きな流れの中で、土佐町の人々が、土佐町のためにこれから作っていく「土佐町のものさし」を探し求めて歩く旅の記録です。

 

以前からお知らせしていたように、現在土佐町では「土佐町が目指すべき幸福」の形を顕にすべく、その第一歩目とも言える住民幸福度アンケートの内容を作成中です。

土佐町役場の各課にも意見を求め、よりバランスの取れた、少しでも本質的な部分に迫れるようなアンケート内容にするための作業が進行中です。

土佐町独自のアンケートが仕上がり、実施を行うタイミングも徐々に近づいて来ています。アンケートというのはたいがい面倒くさいものだということを重々承知のうえで、土佐町の今後10年を作っていく上で大事なステップ、実施の際にはみなさまのご協力をぜひお願いいたします。

 

この欄では、これまでブータンのGNHを中心に紹介してきましたが、今回はそういった話からさらに一段、階段を下に降りたいと思います。

つまり、

そもそもなんのためにGNHをやるのか?

そもそもなんのために幸福度調査アンケートをやるのか?

この二つはほぼ同じ意味ですね。

 

当たり前のことですが、土佐町役場は他の自治体と同じく、様々な仕事を行なっています。

自治体として基本的に必要なことから、時代に合わせた新規事業まで、それはもう本当にいろんな種類の業務があるわけです。

根本的なことを敢えて言えば、そういった事業のそれぞれを、人手もかけて税金もかけてやる目的というのはなんでしょう?

表面的な目的のことを言っているのではありません。根本的なところまで降りていって考えれば、おそらく目的はひとつだけ。どんな種類の事業であっても、目的はたったのひとつなのです。

それは

町の住民の幸せのため

ということ。

言葉を変えれば、「より住民が幸せに住める町にすること」が税金を運用している役場の唯一の目的であるとも言えるでしょう。

以下は幸福度による国づくりを進めるブータンに伝わる法典の言葉です。

もし政府が人々の幸福を創造できないとしたら、政府が存在する目的はない

If the government cannot create happiness for its people, then there is no purpose for government to exist.” – Legal code of Bhutan (1729)

 

政府(役場)は全住民の幸せのためにある。このことに異論のある人は、そうそういないでしょう。(いたらぜひご一報を!)

ただ、ここで問題になるのは「では全住民の幸せってなんなのサ?」という疑問。

そう、住民幸福度アンケートというのは、その疑問の解答を得るための手段なのです。「土佐町にとって、幸せとはこういうことだ」という土台をみんなで確認しましょう、そういう目的のもとやっていることなのです。意外性のないオチで、どうもすいません。

 

 

そうやって得た解答。「土佐町はこういうことを幸せだと思う」という解答を、今度は全ての事業や施策や行動に当てはめて考えてみる。

もしかしたら、やることが習慣化して目的を見失っているものがあるかもしれない。もしかしたら、やること自体が目的と化しているものもあるかもしれない。「住民をより幸せにする」という目的から外れて、お金(経済)の問題に終始しているものもあるかもしれない。

いったん表面的な部分から階段を降りて、より根本的な価値観を当てはめてみる。そのためのアンケート調査です。

 

 

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土佐町のものさし

③ ブータンの質問

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この連載「土佐町のものさし」は、現在進行形の旅の記録。
時代とともに変化していく世界の価値観(=ものさし)の大きな流れの中で、土佐町の人々が、土佐町のためにこれから作っていく「土佐町のものさし」を探し求めて歩く旅の記録です。

 

「←いまココ!」の土佐町では、住民幸福度調査アンケートの作成の真っ最中です。

 

 

そもそも「幸福度をものさしにする」とはどういうことか?

これは経済至上主義があまりにも強くなりすぎた世の中に対する反省から生まれたものでした。

経済は結局のところ数字での競争でしかなく、人間が生きていく中で、「経済」というものさしに頼りすぎてはいないでしょうか?という問いがその根本にあります。

ブータンのGNHの考え方は、人間が生きていく上では経済だけでなく、以下の3つの要素に依っていると考えています。

3つ合わせて「人間社会」が作られているという考え方

そんなの当たり前じゃないか!と「渡る世間は鬼ばかり」のえなりかずき並みに口を尖らせて言う人もいるかもしれません。

えなり

 

 

ただ、この3つの要素がバランスよく大切にされてきたか?という問いには、「経済が重要視されすぎている」「経済が成長することばかり目指したせいで、他の二つを犠牲にしている」と感じる人が世界中に数多くいる、ということなのです。

私たちも自分たちの未来や環境を考える際に、「経済のため」に余りにも重点を置きすぎていないですか?

●「学ぶ・勉強する」目的が「経済のため=より稼げる仕事に就くため」になっていないですか?

●より多くのお金を稼ぐために、環境や人間関係や地域コミュニティを犠牲にしていないですか?

●大きなビジネスが良いとされる世の中で、人間が経済の歯車のように扱われていないですか?

もちろん今のご時世、お金を全く稼がずに生きていくのはとんでもなく難しいことでしょう。GNHは経済発展そのものを否定するものではなく、要は、自然環境や地域コミュニティや伝統文化を破壊してまでも経済発展すべきですか?という問いかけであるのです。

そんな経済発展は、人間を幸せにしていないんじゃないですか?と。

そう考える人がどんどん増えていることで、様々なコミュニティが、または企業や国が、経済一辺倒ではなく「幸福度」というものさしへ方向転換してきている、というのが現在の状況です。ちなみに、ブータン国王は1970年代から同様のことを言い続けています。

 

 

さて、土佐町。

現在はアンケート内容の作成の真っ最中です。

前回の記事で書いたように、「他と比較するためではない」という方向が定まり、可能な範囲で「土佐町ならでは」な質問をしたいと考えています。

 

参考にしているのはブータン

 

ではブータンは実際にどのようなアンケートを行っているのでしょう?「ブータンらしい」と私たちが感じた質問をいくつかピックアップしてみましょう。※引用は全て2015年度ブータンGNHアンケートによります。翻訳/石川拓也

 

●歴史の知識

Q63:以下の事柄について、あなたの知識と理解度を自己採点してください。

とても詳しい 詳しい 平均的 あまり知らない 全く知らない
1 地域の伝説や民話 5 4 3 2 1
2 王様の歴史的な行事 5 4 3 2 1
3 国民の日 5 4 3 2 1
4 ブータンの王様5人の名前 5 4 3 2  1

端的に言えば、ブータンのアンケートは「こういったことを多くの国民がよりよく理解している状態が望ましい=幸福度が高い」というひとつの価値観を示すものでもあるでしょう。

単純にさまざまな国民の状態をより詳しく知るための質問も多いのですが、上のようにブータンの価値観を現すような質問がとても多いこともブータンのアンケートの特徴です。

 

続けてもう一つ。

●伝統的なものへの知識

Q72:以下に挙げた技能をあなたは持っていますか?

とてもよくできる まあまあできる できない
1 織物 3 2 1
2 刺繍 3  2 1
3 絵画  3  2  1
4 大工仕事  3  2  1
5 木彫り 3 2 1
6 彫刻 3 2 1
7 鋳造 3 2 1
8 鍛冶 3 2 1
9 竹細工 3 2 1
10 金細工・銀細工 3 2 1
11 石工 3 2 1
12 革細工 3 2 1
13 紙細工 3 2  1

これも質問の意図はとても分かりやすいと思います。

つまりブータンは、「こういった伝統的な技能が失われずに、人々の生活の中で生かされている方がより幸福度が高い」という価値観を持っているということです。

これ以上は言い過ぎかもしれませんが、このような技能が社会できちんと活躍できているかどうかが、すなわちコミュニティの活力を測るものさしとして機能していると考えているようにも思います。

今後の行動のためのアンケート

こういった価値観の表明のような質問の元、5年ごとに行われているアンケートの結果が、例えば「技能が少しずつ失われている」ということを示したとするならば、政府や行政はそれを食い止め、逆に活性化する手立てを講じていく。そういった行動の指針のためにあるアンケートが幸福度調査なのです。

これからも少しずつブータンのアンケートは紹介していこうと思います。

「ブータンならでは」が色濃く出たこのアンケート、外国人の僕からすると、とても微笑ましい。そしておもしろい。ブータンの暮らしに根ざしたものであるが故に、アンケート制作者のブータンへの愛情や深い洞察を感じます。それは「ブータンってこういう生活なんだ!」とか「こういう考え方をするんだ!」という驚きに繋がります。

完成させるのは土佐町に暮らすあなた

こういった「ブータンならでは」なアンケートをモデルに「土佐町ならでは」なアンケート内容を、現在絶賛作成中です。もっと正確に言えば、アンケートの叩き台を土佐町役場が作っている真っ最中。

この叩き台、今後は住民検討会にかけて、土佐町のみなさんにその内容を叩いていただきます。目指すところは「土佐町の価値観を表すアンケート」。

叩くのは土佐町のみなさんです。完成させるのは、土佐町に暮らすあなたです。

上に挙げた二つの質問、土佐町の暮らしに根ざしたものにするとしたら、どういった質問になるとあなたは思いますか?

 

最後にもう一つ、ブータンらしい!と個人的にもっとも感じた質問です。

 

●自然とのつながり

Q105:以下の文章に同意しますか?

自然は魂と神性の領域である。

 

 とても強く同意する 同意する 同意も反対もしない 反対する 強く反対する わからない
5 4 3 2 1 8

ブータンの精神性が如実に現れた質問だと思うのですが、これを土佐町に置き換えるとしたら‥‥‥?

ぜひ皆さんも一度考えてみてください!

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土佐町のものさし

② ブータン先輩

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この連載「土佐町のものさし」は、現在進行形の旅の記録。
時代とともに変化していく世界の価値観(=ものさし)の大きな流れの中で、土佐町の人々が、土佐町のためにこれから作っていく「土佐町のものさし」を探し求めて歩く旅の記録です。

 

前回、ブータンのGNH(国民総幸福度)について触れました。

繰り返しになりますが、GNHはGNP(国民総生産)では計れない、本当の「豊かさ」を計り、国民がより幸せを感じる国にしていきましょうという指標です。

では、GNPって一体なんなんでしょう?

と、このあとGNPの問題点などを書こうと思ったのですが‥‥

ぜ〜〜んぶやめました!

なぜなら、本に書いてあるようなことをくどくどと解説するのはこの連載の目的ではない、と気づいたから。当初の予定は、GNHについての理解を深めた上で、では土佐町のやりたいことは?という話の進め方をしようとぼんやり思っていたのですが、ぜんぶやめます!

土佐町では今このときにも、現実が刻一刻と動いています。本を読めばわかることをここで書いているヒマはない。現在、土佐町役場が取り組んでいるGNHに基づいた「土佐町のものさし」作りはもうすでにスタートしています。この連載は、その「現実の取り組み」を中心に追いかけていきます。2話目で突然すみません^^;

 

さて、土佐町。

大まかに取り組みの流れをざっと書くと、

住民幸福度調査アンケート➡︎アンケート結果に基づいた土佐町のものさし(GNH)作り➡︎さらに「土佐町のものさし」に基づいた行動・施策へ➡︎「土佐町のものさし」に基づいた「10カ年総合計画」へ

 

 

 

この一連の流れの目的は、「土佐町の考え方の軸」を作ること。シャレた言い方をすれば「土佐町のグランド・デザイン」を作ることと言っても良いでしょう。ここではシャレた言い方をする必要はないので、「土佐町のものさし」がしっくりきますね。

 

2018年11月現在は、住民幸福度調査アンケート。実施へ向けてのアンケート作りが行われている真っ最中。これが実は一筋縄ではいかない、でも今後の流れの大元になる大切なものなのです。

 

比べるべきや?比べざるべきや?

まず、アンケートの目的です。「幸福度を測る」とひと言で言っても考え方は一通りではありません。なんのためのアンケート?誰のためのアンケート?そういったスタート地点を常に確認しながら一歩一歩進んでいく作業になります。

ここで大きな分岐点となった疑問。それが、「他の自治体や国と土佐町を比べるべきか?」というものです。

「他の自治体と比べること」を目的としているならば、他の自治体も広く実施したことがあるアンケート内容にすべきです。でないと比べることができなくなります。おのずと質問内容は土佐町の風土に特化したものではなくなります。

「比べる必要がない」のなら、土佐町は土佐町独自の価値観に基づいたアンケート内容、土佐町の生活に根付いたアンケート内容にすべきです。こっちの道を行くのなら、質問内容は土佐町の風土に特化したものになる。もっと言えば、質問内容そのものが土佐町の「幸せ」を体現したメッセージになる可能性もあります。「こういうことを土佐町では幸せと考えます」そういう意思がアンケート内容に反映されるでしょう。

土佐町の出した小さな結論。それは「他とは比べない」。

例えば土佐町が他県の自治体より上の順位だったとして、それが「土佐町の人々の幸福」にとって一体どんな意味があるのでしょう?もしくは下位だったとして、上位の町や市を「追い抜け追い越せ」レースが始まるんでしょうか?それってなんかおかしくないですか?

実は「他と比べること」というのは幸福度という視点から見ると、幸せ度合いを下げる考え方だそうです。「隣の芝生は青い」と言いますが、それで勝手に悔しくなるのは「幸福度」と離れていく可能性の高い考え方だそうです。なんとなくわかりますね。そういえば、FacebookなどのSNSも「他と比べるツール」として幸福度を下げるものとされています。

 

ではなんのためのアンケートなのか?

スタート地点に戻りましょう。この一連の取り組みは「土佐町の人々がより幸福を感じる町になるためのもの」。アンケートもそのためにあるべきです。

となると、現時点での結論は「土佐町の幸福の現在地」を知るためのアンケート。町の人はどんなことに幸福を感じ、どのような町になりたいと思っているのか?

そのことを知った上で、やっと次にやるべきステップが見えてくる。そのためのアンケート。

他と比べない。でも土佐町の未来と比べる。

この幸福度調査アンケートは一度きりのものではありません。今回の結果をもとに、さらに深く土佐町の幸せについて考えていく。そうやって考えたことを現実の行動や施策に反映していく。(←この現実の行動にしていくところが最も大切です)

2018年度の調査結果を踏まえて行動し、次のアンケートの時には幸福度が上がっているように努める。つまり、過去のアンケート結果と比べるということです。その「ものさし」を作る最初のとっかかりが、この幸福度調査アンケートなのです。

 

やっぱりブータンが先達としてそこにいる。

ここで参考になったのは、GNHの大元であり先輩でもある、幸せの国ブータン。ブータン先輩と呼んでかまわないでしょう。あ、それで思い出したのですが僕の高校の先輩で「ぶーちゃん先輩」と呼ばれている人がいました。ご想像の通り、体重100キロオーバーの巨漢です。

‥‥話が逸れました。ブータン先輩、2010年と2015年、5年づつ大きなアンケート調査をやっています。そしてその都度詳細な報告書をあげています。さて、ここで問題です。ブータンは他の国と比較するためにアンケート調査をやっているのでしょうか?

答えはノーです。否です。ニェットです。ブータンの国民幸福度調査アンケートの目的は、ネパールやインドやフランスなどの他国の幸福度と比較するためではありません。

ブータンのGNH調査報告書の冒頭近辺に明記している言葉、それは

幸福度を前進させる行動の指標を作るため

とあります。目的はこれ一点。「行動のためのもの」というのがいいですね。今回書いた土佐町の小さな結論には、ブータン先輩のこの文章が小さくない影響を与えてくれました。

 

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