2022年12月

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

山門由佳

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「角野栄子の毎日いろいろ」 角野栄子 KADOKAWA

子は宝といいますが、それと同じくらい元気なシニアも国の宝かと思います。はつらつとしたシニア世代(わたしのなかでは70代はまだお若く、80歳から)の様子は、わたしもあんなふうに年老いたい〜!と憧れさせ、夢を与えてくださる希望の象徴です。新聞や雑誌から、あるいは目の前に実在する輝くシニアたちをみつけるのが日々の趣味です。健康の秘訣、心の持ち方、オリジナルの習慣やポリシーを持つ生き方から、必ず学ぶことがあります。

そんななかで、最近知った著者の角野栄子さん。 小学一年生の息子の教科書に載っていた「サラダでげんき」という物語。ユーモアがピリリッと効いていて、長新太さんの挿絵とピッタリ!と気になっていたら、なんと、かの有名な「魔女の宅急便」を生んだ作家さんでございました。角野栄子さん御本人の姿をこの著書の表紙で確認して、ひと目で…好きです!タイプです!と目がハートになりました。カラフルでおしゃれ、知的。でも遊び心いっぱいのファンタジーの世界に生きておられて明るい。

いちご色のおうちに住み、庭にたわわになった酸っぱいみかんのしぼりたてジュースを毎朝飲み、庭仕事も料理も適当に、ぶらぶらとまちを散歩して行きつけのお店のひとと談笑する。 自分にとって心地のいい服や靴、鞄やアクセサリーをよく知っていて、とってもお洒落に生き生きと毎日を過ごされている。まるで、角野栄子さんご自身が絵本の主人公のようです。わたしの[輝くはつらつシニアコレクション]にまた1名の至宝が加わりました。

 

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土佐町のバンド「すみれ楽団」の皆さんから、ポロシャツを作りたいというご依頼をいただきました。

すみれ楽団は土佐町のアマチュアバンドで、町内外のさまざまなイベントに出演しています。トランペットやサックス、ギターやドラム…。いつも息の合った演奏を聴かせてくれます。

1984年の新聞記事

 

すみれ楽団は結成48年目

すみれ楽団の方が、今から38年前の新聞記事のコピーを見せてくれました。結成10周年記念コンサートを開催するという内容で、すみれ楽団は「1974(昭和49)年、音楽好きの若者5~6人が結成」「戦後間もないころ、手作りのギターなどで活動していた『すみれ楽団』からバンド名を譲り受けた」とのこと。

現在のメンバーは17名。農家さん、山師、ALTの先生、自動車整備をしている方、小中学校の先生や社会福祉協議会の職員…など、メンバーの年齢も職業も多種多様。音楽が大好きなメンバーたちが、日曜日の夜、集まって練習をしているそうです。

「みんなでお揃いのポロシャツを着て、演奏したい!」

歴史あるすみれ楽団のポロシャツを作らせていただき、とても光栄でした。

 

 

印刷は、障がい者支援施設ファースト

印刷は、大豊町の障がい者支援施設ファーストの方が行いました。シルクスクリーンという手法で、一枚ずつ、手で印刷していきます。

ポロシャツの胸の箇所に印刷

 

サングラスをかけて口笛を吹く「すみれ」、粋です!

バンドメンバーの方がデザインした「すみれ楽団ポロシャツ」。「これからどんどん着ていきたい!」と、とても喜んでくれました。

 

ポロシャツ、デビュー

写真提供:すみれ楽団

先日、土佐町で行われた「憩いの集い」での演奏が、ポロシャツデビュー初日となりました。皆さん、かっこいいです!

これからさらに歴史を重ねていく中で、皆さんが楽しんで着てくれたらとてもうれしいです。

すみれ楽団の皆さん、ありがとうございました。素敵な演奏をこれからも楽しみにしていますね!

 

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私の一冊

古川佳代子

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「美しいってなんだろう」 矢萩多聞,つた 世界思想社

2002年から本作りの仕事に関わり始め、これまでに350冊を超える本の装丁を手がけていらっしゃる矢萩多聞さん。

9歳のとき両親とはじめての海外旅行でネパールを訪れたそう。それを契機に人生ががらりと変わったわけではないけれど、それを境に、緩やかに人生の潮目が変わったとふり返る。

父になり娘のつたさんが9歳になったとき、矢つぎばやに問いを繰り出してきた「美しいってなんだろう」「絵や文字を書くのが上手いこと下手な子がいるのはなぜ?」「魚のように泳げる子とそうでない子がいるのはなぜ?」。

そこから多聞さんは自問する。美しいもの?美しいもの…。多い出されるのはインドの何のことはない日常の風景。ココナッツ売りの見事なナタさばき、水牛のそそり立つ角、鉄鍋で塩豆を炒る音。 美しいものは、ときにはみにくく、残酷でもあると語る多聞さん。

私も自分に問いかけてみる。「美しいってなんだろう?」。

 

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カラフルな原画を見てほしい!

 

2022年12月17日(土)、高知市の金高堂書店本店で「USAGI カレンダー2023」の原画展・カレンダー販売会を開催します!

現在販売中の「USAGI カレンダー2023」は、高知県内7つの障がい者支援施設の皆さんが描いた数字や文字でできています。今回、施設の皆さんが描いた数字や文字の原画をパネルで展示、カレンダーを販売します。

障がい者支援施設ファースト(大豊町)、りんどう(本山町)、ウィール社(南国市)、白ゆり(香美市)、高知県立山田特別支援学校(香美市)、サポートぴあ(高知市)、土佐町は個人の方が参加して描いた数字や文字の数々です。

数字や文字の原画はとてもカラフル!そのまま印刷したいところですが、曜日が分かりやすいように、泣く泣く黒と赤の2色にしています。

一人ひとりの人が一枚ずつ描いた数字と文字、素材も色も、大きさもみんな違う!その面白さをぜひ見てもらいたいと思ったのが、今回の原画展開催のきっかけです。

 

場所は帯屋町・金高堂書店本店

 

「USAGI カレンダー2023」を販売してくださっている金高堂書店さんに相談すると、快く書店入口スペースを貸してくださいました。ありがとうございます!

原画には、原画ならではの味わいがあります。一枚ずつ、みんな違う。その面白さ、その温かさ。作ってくれた皆さんのアイディアやユーモアに溢れた原画をぜひ多くの方に見に来ていただけたらうれしいです。

 

 

「USAGI カレンダー2023」の原画展・カレンダー販売会

日時:2022年12月17日(土) 10時~17時

場所:金高堂書店本店 正面入口前ウッドデッキスペース(〒780-0841 高知県高知市帯屋町2丁目2−9)

 

 

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高知市で開かれている「土佐の日曜市」に月に一回ほど出店し、「鹿の角ガチャ」を販売しています。いつも、ガチャの機械の横には、猟師さんにもらった鹿の頭の骨(角付き)を置いています。市を行き交う人が、鹿の頭の骨に一瞬驚き、「鹿の角ガチャだって!」と言っているのが聞こえてきます。

 

その骨に寄ってくるのは子供たち。こんな時には「持ってみる?」と聞いてみます。今だかつて、断った子供はいません。子供たちは恐る恐る手にして、はにかむ。「重い…」。言葉は少なめ、そして丁寧に骨を返してくれる。なんとも可愛らしい。

「山を駆け回っていた鹿の骨だよ」と言うと「本物?」。

「そう、本物だよ」。

へえ〜〜〜…、という表情。ちょっと大きい子は「すげえ!」。

こんなやりとりを今まで何度もしてきました。子供の率直な言葉を聞いて「そうだよね、“すげえ”ことだよね」と再確認します。

山に鹿がいて、猟師さんがいて、捕まえて、時には肉を食べ、骨や角が残る。その角を私たちがいただいて、作っているのが「鹿の角ガチャ」です。この土地で培われたきた循環があってこそ、できることです。

いただいた鹿の角を切り、穴をあける。紐を通し、御守り紙を折り、カプセルに入れる。これが障がいを持った方のお仕事になっています。小さいけれど、確かなお金の循環も生まれています。

大きな町に住んでいると、山の鹿を目にすることも、本物の骨を触る機会もなかなかありません。かくいう私もそうでした。鹿の骨、鹿の角、鹿の肉なんて、目にしたことも触ったことも食べたこともありませんでした。

情報が行き交い、パソコンやスマホの画面上で何でも見たり聞いたりできる時代、その恩恵に私もあずかっています。が、それで全てをわかったような気になっていないでしょうか。はたとそんな自分に気付き、愕然とする時があります。でもそんな時、周りにある「本物」が、私の目を覚ましてくれます。

この土地だからこそ、できること。本物があるからこそ、できること。私たちにとって、その一つが「鹿の角ガチャ」です。

 

 

*鹿の角、募集しています!!

もし不要な鹿の角がありましたら、ぜひご連絡いただけたらありがたいです。

取りに伺います!

集まる鹿の角(ありがとうございます)

 

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私の一冊

西野内小代

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「栞と嘘の季節」 米澤穂信 集英社

「黒牢城」で直木賞を受賞した作家の最新作です。

毒性の強いトリカブトを巡って高校生たちが推理と思惑と行動力で真実に迫っていく。希薄になっていく人間関係、他人と距離をおいて日常を過ごしているかにみえて、実は友人達の為に行動し始めていた。

登場人物の言葉を鵜呑みにすると真実には迫れない。巧妙に張られた伏線に脱帽です。何回元に戻り確認したことか!

繰り広げられる物語の発端が「図書室」であることも、意外性に富んだ展開を予想させる。

 

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くだらな土佐弁辞典

ことりがくるで

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「ことりがくるで」

【意味】 昔は子どもが遅くまで外で遊んでいると「ことりがくるで」と言われたそうです。

おそらく「ことり=子取り」? 人攫いが来るぞ、といった意味で、子どもを怖がらせて早く帰宅させるために使っていたと思われます。

 

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私の一冊

山門由佳

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「高知県の山村を歩く」 武吉孝夫 高知県立歴史民族資料館

11月。 土佐町・南川地区にて長きにわたってつくられていた『百万遍味噌』のお手伝いを数日させていただきました。 南川地区は早明浦ダムをどんどん奥へと進み、大川村も越えてまた橋を渡って山の中へと入っていく、秘境と呼ぶにふさわしい地区でした。

はじめどんな方々が暮らしておられるのだろう、ちゃんとお手伝いできるだろうかと山が深くなるにつれ不安も高まり…けれども迎えてくださったのは皆さん明るく優しい方ばかりでした。

にぎやかだった頃の南川地区での昔話や、海外旅行にみんなで出かけた思い出話、野生動物たちとの日々の闘いと共生するしかない畑の様子…いろんなお話を聞かせてくださいました。

山奥での生活は買い物や通院をはじめさまざまな不便があるなか、助け合って仲良く暮らす南川地区の皆さんの暮らしが今もこの山の向こうで営まれているんだと思うと、愛しく尊い思いになります。

味噌作りの手伝いも、山水の水源の水量が厳しくなり予定より一週間早く終わってしまいました。そうしたコントロールできない自然、天候、野生動物と隣り合わせで暮らすこと。それは人間もまた自然のごく一部であり、自然の恩恵なしには生きてはいけないことを常々思い知らされ、決して奢ることなく生きておられる山村の民の謙虚さはそこからくるのだろうかと感じました。

この写真展を観に行った時は南川地区に行く前の自分。こちらの写真集を買って帰り今、見返すとよりリアルに感じる。 山村に暮らす民の温かさは、寒さに震えながら明るい黄色の可憐な花を咲かせる福寿草が思い浮かびます。

 

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山の手しごと

ジンジャーシロップ

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秋冬の飲み物、ジンジャーシロップを作りました。

農業を営む友人に分けてもらった生姜を薄くスライスすると、もうそれだけで家中に広がるその香り。部活から帰ってきた息子が「あ、ジンジャーシロップ作ってる?」と聞いてきたくらいです。

てんさい糖をざっくり合わせてしばらく置くと、じわじわと水分が。そこへ近所の人にいただいた唐辛子、それからシナモンスティック、クローブ、水を加えます。レシピには「レモン汁」とありましたが、なかったので裏の畑のゆずを絞って入れました。

火を入れ、しばしコトコト…。その合間に家の外に出たのですが、外にも生姜とスパイスの香りが。深呼吸すると、冷たい空気と一緒に生姜は鼻を通り越し、脳まで届く気がします。

高知県は生姜の生産量日本一。11月、あちこちに広がる生姜畑に多くの人が集まって収穫が始まります。一年中美味しく食べられるように、大きな生姜をそのまま冷凍。使いたい時に取り出してすりおろし、また冷凍庫へ戻せるのでとても便利です。またはみじん切りにして冷凍しておいても重宝します。

今回、スパイス類はスーパーで購入しましたが、生姜や唐辛子は友人・知人から分けてもらったもの。本当は生姜や唐辛子も自分で作れたらいいかもしれませんが、シロップにお湯を注ぐたび、その人たちの顔が思い浮かんで、それはそれでいいのだと思えます。

残った生姜は千切りにして、醤油とお酒を加えて佃煮に。余すことなく生姜を使い切りました。秋冬の美味しい飲み物、保存食ができて大満足です。

 

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私の一冊

西野内小代

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「夢を売る百貨店 本日も完売御礼でございます」イ・ミイェ著  鈴木沙織訳 文響社

韓流ドラマにはまると、毎日がドラマ中心の生活になってしまうらしいので、ちょっと距離を置いている。

そこまで夢中にさせてしまう韓国作品にとても興味はある。書店で「韓国年間 №1ベストセラー、ついに邦訳!」の文字に心動かされ、手を伸ばした。

ファンタジーの世界に入り込めるかどうか…。最初は脳の上っ面で文字を追っているだけだったが、寝る前に読んでいると夢か現か…すっかり入り込んでしまう。

この作品での「夢」とは、寝ている時に見る夢であって、人生での「夢」とは別物。

しかし、両者はリンクしてくる。

最後の章で一名の従業員の存在に触れている。彼は度を超した計画性、そして自己中心的な生活の為に周囲との関係をおろそかにしているが、本人は全くそれに気付いていない。結局は不利な人生を歩んでいるという寓意を匂わせる。

ファンタジー作品で余白の大切さを学んだ。

 

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