「日日是好日」 森下典子 新潮文庫
雨の日のお稽古日、お茶室にかかってある掛け軸に、「聴雨」(…雨を聴く)という文字が書かれてあった。
雨の日は、雨を聴く。
雪の日は、雪を見る。
夏には、暑さを。
冬には、身の切れるような寒さを味わう。
・・・どんな日も、その日を思う存分味わう。
お茶とは、そういう「生き方」なのだ。
「日日是好日」(毎日がよい日)
お茶を習い始めて二十五年の著者が、「お茶」を通じて会得した「心」が書かれています。
田岡三代
著者名
記事タイトル
掲載開始日
山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。
人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。
土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?
みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!
(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)
「夜廻り猫」 深谷かほる KADOKAWA
街のどこかから流れてくる涙の匂いを嗅ぎつけて、夜廻り猫はその人の元へと駆けつけます。「む!涙の匂い!」
話を聞き、その人が自分の答えを出す姿を見届けるお話が描かれているのですがいつもホロリとさせられます。人の死や介護、貧困や孤独、失恋や離婚、いじめや仕事のトラブル…。世の中にある色々な出来事、自分だけではどうしようもないこと…。それぞれの人の人生には本当に色々なことが詰まっていて、いい時もしんどい時も、泣きたい時も何もかも放り出したくなる時もある。でも、そんな中でも、きっと希望はあるのではないかとこの漫画は思わせてくれます。
土佐町図書館でふと手にして借りた「夜廻り猫」。机に何気なく置いておいたら子どもたちも読み始めました。「む!涙の匂い!」というセリフから始まって「あの場面、いいよね〜」と話せるのがうれしい。
早く次の号を借りに行こう!
鳥山百合子
「江江 台南 x 高雄」 翁平
8月に台湾に行きました。台北には僕の母方の親戚がいます。今までちゃんと会ったことがなかったのですが、今回初対面するために行きました。
親戚のうち、僕より年下のいとこである翁平は小学校の美術の先生。「これ持って帰って」と言って手渡されたのがこれ(2冊いただいたうちの一冊)。
この本は彼が台南と高雄を旅した際に撮影したもの。ユニークなのは主人公を江江という写真にある不思議なキャラに設定し、江江が旅をした記録という体裁になっているところ。
これは彼が自由に発想し、印刷製本まで自分で作った本で、この軽さこの自由さがいいなぁと思います。
あと、やはり親戚というか血は争えないというか、台湾の親戚には絵描きさんやアニメーターなどが多く、なんかお互い似てることしてるねえと言って笑ったのでした。
「エルマーのぼうけん」 ルース・スタイルス・ガネット作,絵 渡辺茂男訳
みかん・棒付きキャンディー・輪ゴム・虫めがね・くし・磁石…などなど。この物語の主人公エルマーがりゅうを助ける旅に出るとき、リュックサックに詰め込んだものの数々です。私もエルマーと同じように、エルマーが詰め込んだものをあった分だけリュックサックに詰め込んで、近所を「冒険」していたものでした。多分、毛がボサボサのライオンや、こそこそ話が大好きなイノシシも道々の先に見えていたのでしょう。
エルマーは船に乗り込み、まず「みかん島」に上陸します。エルマーが知らず知らずのうちに「人間が島に入り込んだ証拠」を自ら島に残してしまうのですが、動物たちはそれに気づいて大騒ぎ。
「エルマー!なんでみかんの皮をむいたのをそのまま置いていっちゃうの!」と大人になった今は思うのですが、当時は、次はどうなるのだろうとハラハラしながらエルマーの一挙一動足を見守っていたことを思い出します。
それは子どもたちも一緒のようです。
自分が子どもの頃に楽しんだ世界を、今再び子どもたちと楽しめることはなんて嬉しいことだろうと感じています。
鳥山百合子
「極夜行 」 角幡唯介 文藝春秋
「空白の5マイル」の著者のまたまた壮絶極まりない冒険ノンフィクションです。
極夜というのは太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、長い、長い、漆黒の夜、そしてその漆黒の夜は緯度により3か月も4か月も、極端な場所では半年間もつづく所もあるそうです。
何故そこまでする!?と身内の気分で諭したくなります。
土佐町(特に私の住居の辺り)も夜は真っ暗になりますが、桁違いの闇の中、愛犬1匹をお供に連れて漆黒のベールを切り開いて行くのです。
これでもか、これでもか、と苦難が待ち受けています。死を覚悟して踏破して行く後ろ姿に「もう止めて!」と何度も心の中で叫びました。
西野内小代
「TRANSIT THE LANDSCAPES」 euphoria factory(ユーフォリアファクトリー)/TRANSIT編集部 講談社
「やっぱり地球は美しい」
TRANSITという旅の雑誌(発行:euphoria factory)があります。毎回、息をのむほど美しい写真で構成された、僕も昔からとても好きな雑誌です。
そのTRANSITが、これまで発行してきたものの中から写真を厳選し、今秋2冊の写真集として発行しました。
それが『TRANSIT THE PORTRAITS』(人物編)、『TRANSIT THE LANDSCAPES』(風景編)の2冊。
今回ここで紹介するのは風景編である『TRANSIT THE LANDSCAPES』です。
本当に多岐に渡る国と地域の美しい写真が、毎ページこれでもかと登場します。これは言葉を尽くして説明するよりも、実際に見るべし、の本です。
なのでこれ以上は野暮な説明は控えますが、ひとつだけ。
僕自身、「TRANSIT」の撮影で、レッドセンター(Red Center)と呼ばれるオーストラリア中央部に行きました。オーストラリア先住民(アボリジニ)の人々の精神的な支柱でもあるウルル(昔はエアーズロックと呼びました)の上空をヘリで周り撮影したものが2枚目の写真です。
当時住んでいた東京では感じようもない大地の巨大さと、人類史の中で本当にややこしく歪められてしまった先住民の存在と文化、それからそれを少しでも立て直そう、立ち直ろうとするオーストラリア社会と先住民社会のとてつもない努力の足跡を体験した、個人的にはとても大きな経験となった旅でした。
この写真集の発行とともに献本として贈っていただき、当時の乾いた空気を思い出しました。今更ながら、関係者のみなさまに感謝です。
見たい方が近所にいらっしゃったら、とさちょうものがたりの作業場に置いてありますので見にきてくださいね。