「風の谷のナウシカ」 宮崎駿 徳間書店
随分とごお無沙汰しておりました。
5月ぶりの登場のゆかりでございますよ。あいすみませんね。
学校図書館の支援員をしていると、慣れないことばかりで言語野がオーバーヒートを起こしてしまうのです。謎の偏頭痛やら、耳鳴りに耳痛に親知らずは生えるし、最近な謎のさしこみもあるし。
まぁ白々しい言い訳はさておき、我が矢野一族の華麗なる近状もご報告しなければなりませんね。
弟は真面目に苦学生やっているので割愛。妹は自由気ままに奔放にやっていいるので割愛。
認知症の祖母は、ロジカルモンスターSOHU(祖父)と、毎朝なぜかバトルをしています。
どうやらお米をどれぐらい炊くべきかの論争らしいのですが、2人とも耳が遠いので自然と話す声が大きくなり、毎朝大喧嘩をしてるように聞こえます。
そして眠りが浅く不眠症の私が驚いて、目覚めてしまい、朝から精神安定剤を飲まなければならないのは、勘弁して欲しいところです。
この米騒動は常態化しているので、矢野家の懸案事項の1つです。しかし祖母はデイサービスに行く時に「行ってらっしゃい~」と声をかけると「はーい!!いってきまーす」と子供のように無邪気な笑顔で手を振るので、”ま、いっか(笑)”と思えてしまいます。
母の痩身ぶりは相変わらずで、アブラゼミ(メス)が脇腹に留まって休憩していました。多分ゴツゴツした肋骨と木の枝のような腕が、彼女にとって安心出来る場所だったのでしょう。みんみん。
父は相変わらず、笑点の山田くんが持って行く座布団が無くなるぐらい、寒いおやじギャグをカマしていますが、たまに場外ホームラン打つようになりました。妙なツボにはいって、私が泣いて嘔吐くほど笑うので、本人が一番困惑しています。
ちなみに笑いすぎて、何が面白かったのか忘れてしまうので、ここに書けないことが残念です。ちなみに、台風10号が9/6~9/7にかけて通過していきましたが、その中で生まれたオヤジギャグは'うちの田んぼに、飛んできた椅子が居座っちゅう'でした。
ちなみに持ち主が分かるのが田舎ならではですね。土佐町に来たのが、しょーもないギャグで終わる、台風10号でよかった。停電や農家さんやら沢山被害はあるけれど、人死が出るようなことがなくてよかったことでした。
さて前座は終わりまして(スパッと)
本文へと参りましょう。
この作品の中で、ナウシカがたびたび言われている言葉があります。言い手によってニュアンスは違いますが「男だったら…」というのは一緒。
ナウシカは男であったならと常に言われているのです。父王や4巻p16のように。しかし実際はナウシカ自身は一騎当千とも言われる猛者中の猛者。何故そこに性別が絡んでくるのでしょうか。
生理や出産といった事が理由の一つではあると思いますが、この世界で女性が権力を持つことはほぼ無いようです。
風の谷の大ババ様は少し例外的だとは思いますが、敬意を表されてもそこに権威や権力は存在していないという点で、女性が権力を持つという発想が異質であるということです。
だからこそ族長をナウシカに任せる選択をしたジルの判断は、苦痛と不安を伴ったでしょう。実際に武力と権力を持っていたクシャナは、あらゆる手を使って奪われてしまいます。
ただクシャナは男であったならと言われているシーンがありません。散々「賢い女は嫌いだ」言われていますし、白き魔女と誉れとも侮辱とも取れる異名ならありますが。
どちらにせよ、女性が権力を持つことの無いこの世界で、世界を動かす中心にいるのがナウシカ、そしてクシャナ、後述する子供のチチクなのは、かなり異質であり著者の心の深淵を覗いたようでゾッとします。
さて、この4巻では、あの冷静沈着な白い魔女クシャナが、仇を前にしてとうとう我を失ってしまいます。
この兄皇子の意地の悪いことと言ったら、まさに虫唾が走るとはこのこと。間一髪、クロトワが機転を利かして難を逃れますが、蟲の大軍の中に完全に孤立。
兄皇子は重コルベットで逃げ出しますが蟲の大軍に撃墜されます。この瞬間、クシャナは“白い魔女らしさ“と言うべき氷のヴェールが剥がれ落ち呆然と立ち尽くします。
普段なら、この危急時には部下と自分がどう生き残るかを、走りながら最優先で考えているでしょう。それほどまでに、兄皇子に対する憎しみと怒りは強かったのか、というのが私の正直な感想です。
私はどこか、クシャナに対して温かい人間味を感じないようにしていたのかも知れません。ですからその後の場面で、クシャナが指示を出さないばかりに部下が死ぬシーンを見て、私自身の足元がふらつくような不安感を覚えました。
しかし、恐らく、彼女が感じているのも、自分を構成する一大部分が、不意に削げ落ちてしまった不安定さなのではないかと思います。
クシャナは数名の部下達と塹壕で、じっと動かず蟲の大軍を凌ぎます。彼女は、毒に侵され娘た人形の区別もつかなくなった母を、最後に見舞った時を思い出しています。ここに大きなウシアブがやってきます。
クシャナは“お前が私の死か……~中略~あいつたちを殺せるならこの生命など惜しくもないとおもいつづけて生きていたものを……”と半ば諦めたように兄皇子を始末した蟲に対して愚痴を吐きます。
しかし、ウシアブは一瞥したのみで、行ってしまいました。彼女は自然と子守り唄を口ずさんでいました。私は胸がつかえてこのシーンは本当に苦しいです。
クシャナは、クシャナ自身が王都攻略、打倒父王とは掲げていても、それより最優先すべき事項が兄皇子達への復讐だったのでは無いでしょうか。
土鬼侵略諸々、トルメキア王都攻略はついで。ただ本当は、部下達には自分の復讐や自分への謀略のせいで、一兵たりとも死んで欲しくはない。今まで謀略によって失った部下達の扱いを見ても、それは痛いほど分かります。
ですから実際に、仇の1人が目の前でいとも簡単に死んだ事は、クシャナがクシャナ足るべき一部を失ったと言っても過言ではないでしょう。足るべきものが無くなれば、何かを足さなければ立ち直れません。それを足していく、それを考えていく時間。それがこのカボ基地での、大量の戦死者、虫の死骸、発芽する腐海の植物たち、生き残りの部下達との時間なのだと思います。
一方でナウシカは南下の旅を続け、古来の信仰を神殿でチチクと出会い、託されます。ここからの話は一気に進んでいきます。
変異させたの腐海の植物と突然変異の粘菌が暴走したところを、土鬼の僧正であるチヤルカと共に何とか収めます。突然変異した粘菌の増殖力と知能は凄まじく、確実に土鬼の土地を食らってゆきました。皇弟に忠実なチヤルカは葛藤しつつも、ナウシカの真摯さと持ち前の忠国心で墓所に戻らず、土鬼の民を救う道を選ぶ事になります。
5巻に続きます。5巻の中程まで自体はあまり進展しません。城オジ達とユパ、アスベル、ケチャが、カボ基地で偶然クシャナ達と合流します。
そして、この合流までの時間は、クシャナをクシャナたらしめることが出来たようです。そしてクシャナとユパが同じ船に乗ったことが、今後に大きく繋がっていきます。
一方ナウシカはチチクと共に、突然変異体の粘菌を追っていました。粘菌は5体。防衛本能に従って1つの場所に集まり、一斉に胞子を飛ばして勢力を拡大するつもりです。
蟲が狙っているのもこの粘菌たちです。古より伝わる大海嘯は、今回この粘菌たちのために起こると確信したナウシカはここで共に最期を迎える覚悟をしたのでした。
さて、今回はここらへんで!
次回はもう少し早く続きが出せそうな気がします。(ホントかな~(笑))
5巻から6巻辺りを書けたらいいかなと思います。
最後に、末文になりますがお許しください。
未だ収束せず混乱を招いているCOVID-19ですが、医療従事者の方々、保健所の方々、教育現場の方々、各種接客業の方々、老人福祉施設の方々、コロナという戦場の前線に立たれている皆様に心からの敬意と、感謝を。いま苦しい立場にいる人々にエールを。
そして、今年の豪雨や今回の台風10号で亡くなられた方にご冥福を、被災された方々にはエールを送らせてください。
それでは、また。