2022年5月

笹のいえ

お味噌汁さん、ごめんなさい

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食事の約束のひとつに「気を入れて食べる」というのがある。

自分が何を食べているのか、どんな風味や味がするのか、好きなのか嫌いなのか。食べものを口に運ぶときは、目の前の食事に関わった人々に感謝をもって食べてほしい。気持ちが食事に向かっていないと、食べきれずに残したり、逆に食べすぎたりすることがある。もちろん会話も食事を美味しくする要素だから、おしゃべりは結構だが、盛り上がり過ぎると食べることが疎かになってくるので、親の注意が入る。

それでも、その言葉が耳に入らず、例えばご飯や味噌汁あたりをひっくり返すことがある。

そんなとき僕は、彼らを叱る。時に子どもを泣かせてしまうくらい強く怒る場面もある。それは、食べものを大切にしてほしいという僕の想いだ。

 

しかし、そんな偉そうなことを言う僕に、事件が起きた。

ある日の夕食で、僕は掴んだ汁椀を滑らせ、こぼしてしまったのだ。

「しまった!」と思った。けれど、覆水盆に返らず。こぼした味噌汁は、もう碗に戻らない。

子どもたちの目線がテーブルに広がる味噌汁に集まり、次に僕を見る。普段「食べものを大切にせよ」と説教する父ちゃんが粗相をしたのだ。静まり返った食卓で、「このあと何が起こるのだろうか?!」と固唾を飲み込む子どもたち。

そんな状況に少し焦った僕の口から咄嗟に出た言葉は、「お味噌汁さん、ごめんなさい」。

それは自分でも意外な謝罪だった。お椀が濡れてて滑っちゃったとか言い訳もできただろうが、それをせず、僕は味噌汁に謝った。状況を見守っていた子どもたちはこの言葉に納得したらしく、幾分自分たちの姿勢を正してから食事を続けた。

 

写真:文章とは全く関係なくて恐縮です。屋根の雨樋から地面に落ちる雨が音を立てるほどしっかりと降る雨の日。数日前におばあちゃんから送ってもらったシャボン玉を持ち出して、叫び声をあげながら走り回る次男と次女。風邪を引かないかと心配する僕の気持ちは彼らに届かず、「やれやれ」と思いつつも、とっても楽しそうなのでシャッターを切った。

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私の一冊

古川佳代子

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「ルポ 森のようちえん~SDGs時代の子育てスタイル」 おおたきとしまさ 集英社新書

 遠い昔、幼児教育をほんのちょっぴり齧った(ほんとうにちょっぴりです)せいか、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育、イエナプラン教育などの実践には興味や憧れがあります。これらの教育と並び称される教育が日本の各地で展開されているらしいのです。素敵!

その教育・保育活動を称して「森のようちえん」と名付けていますが、そのアプローチ方法は一律ではありません。 生きぬく力に満ちた、迫力のある子どもたちが育っている様子は見事の一言。こどもはやはり希望にあふれた存在なのだと伝えてくれるルポルタージュです。

 

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大豊町オリジナルポロシャツが製作スタートです!

 

先日お伝えしました「大豊町オリジナルポロシャツ」は、大豊町の障がい者支援施設であるファーストととさちょうものがたりが協働で挑戦している取り組みです。

【↓詳細は以下をご覧ください】

【販売開始】大豊町オリジナルポロシャツ2022

 

連休前の【販売開始】の告知に対して、順調にご注文をいただいております。ご注文いただいた方々ありがとうございました。

ある程度のご注文が溜まってきたこの時点(5月12日)で、実際の製作スタートです!

 

シルクスクリーン作業風景

 

1枚目の印刷ができました!

 

胸には「大豊町政50周年記念」のロゴ

 

背中には「ふたつの柚子」と「OTOYO CHO」の文字が印刷されています

 

 

 

大豊町オリジナルポロシャツ、製作も販売もスタートしたばかり。大豊町の方々、それからもちろん大豊町外の方々も、ご注文・お問い合わせをお待ちしております!

 

 

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読んでほしい

山の良心市

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ゴールデンウィーク中のある日、土佐町から高知市へ向かっていると、山の道先に棒に結ばれたリボンが揺れているのが見えた。

新緑一色だった視界にピンクが加わると、視線はそちらに向かう。

そこには良心市があった。良心市は、手作りの棚に野菜や果物などが売られている無人販売所。販売している人はいないので、代金は置かれている箱や瓶の中に入れる。

台の上にはピンクの傘がさしてあって、「いらっしゃいませ」と呼びかけてくれているかのよう。吸い寄せられるように市の前に立つと、いたどりと茹でたけのこ、クレソンが並べられていた。

茎はまっすぐ、しなやかないたどり。いたどりは収穫した次の日には茎がシナッとしてくるので、これはついさっき収穫されたばかりなのだとわかる。隣には、傷まないよう、発泡スチロールの中に入った柔らかな茹でたけのこ。そして、きれいな水が流れる場所で育つクレソンが小さな花束のように並べられている。

丁寧に束ねられた結び目に心を掴まれ、私はいたどりを買った。娘が瓶のふたをあけ、100円を入れるとチャリンと音がした。いたどりを抱きかかえ、掲げ見せてくれた娘の姿を見ながら、日々の道の途中でこのような買い物ができる楽しさと幸運を忘れないでいてほしいと願った。

数日後、良心市の前を通ると傘の代わりに鯉のぼりが立っていた。5月の今日という日が、ちょっと特別な日に思えた。

 

 

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私の一冊

西野内小代

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「日本語の大疑問  眠れなくなるほど面白いことばの世界」 国立国語研究所 幻冬舎

気になりながら詳しく調べることもなくやり過ごしてきた十二支の漢字の不思議。

帯の文字に興味をそそられ購入。

十二支は月日などの順序を表す記号のように用いられたものであり、動物との関わりはない。あとから馴染みある動物名を割り当てただけであり、本物の動物を示す言葉ではない。(ネコがないのが気になる~)

手話についても説明があり、なんと手話は世界共通ではない!日本においてさえ地域差がある。いわゆる手話の方言である。ジェスチャーが基本なので考えてみれば当然です。現在では標準手話がかなり浸透してきているそうです。

その他、「最近の日本語」「敬語と接客言葉」「世界のことばと日本のことば」「外来語」など興味深い内容が展開されています。

 

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2022年4月19日。この日、土佐町老人クラブの皆さんが集まって、植木鉢に球根を植えました。

土佐町社会福祉協議会の上田大さんが「急に声をかけさせてもらったき、どのくらい来てくれるかな?」と少し心配していましたが、そんな心配は及ばず。「クロコスミア」という花の球根を植えるため、元気なお母さんたちが20人ほど集まりました。

皆で植木鉢に球根を植え、「見守り訪問ふれあい便」で植木鉢を届けるとのこと。

「見守り訪問ふれあい便」は、町内の一人暮らしの高齢者の方々等を見守る活動で、2022年4月から行われています。毎月2回、民生委員さんやボランティアの方が訪問して話をしたり、その人とのつながりを保つ大切な機会となっています。

 

植木鉢を届ける

「見守り訪問ふれあい便」で届ける植木鉢はふたつ。両方とも育ててもらって、一つはその方へ。もう一つは秋に回収し、増えた球根を掘り起こし、翌年植え直すとのこと。そしてまた、植木鉢を届ける。育てた球根が誰かの元へ、くるりくるりと循環していくイメージです。

「コロナで人と会う機会が減ってしまって。人と人を繋げるために何ができるか…、話し合ってこの活動を考えました。皆さんに育ててもらって、笑顔になってもらって、球根も増やしてもらう。来年は球根を買わないですむといいなあ、って」

上田さんは笑ってそう話してくれました。

 

球根を植える

集まったお母さんたちの元気な声が響きます。土佐町老人クラブの「花クラブ」の皆さんです。この日参加していた最高齢の方は91歳!皆さん、チームワーク、バッチリです!

植木鉢に「土佐町老人クラブ 花クラブ」と書かれたシールを貼っていきます

 

植木鉢に土を入れ、球根を植える。「これ、なんぼでも増えて、しょうえいで!(土佐弁で「すごくいいよ!」の意味)」

 

「大くん、土がなくなったで!」「はいはい!」 お母さんたちのパワー全開です

 

きれいに見えるように土の上に「寒水石」をのせる。賑やかなおしゃべりも楽しい

 

あっという間に作業は終了!

「こうやってみんなと会うのは久しぶりで、やっぱりえいね!」

「来年、また鉢植えして、花いっぱいだ!」

弾んだ楽しそうな声があちこちで聞こえてきました。人と会って話をすること、一緒に作業をすることは人を元気にするのだなとあらためて感じます。

作業時間2時間の予定が、皆さんのチームワークで30分ほどで終了。マンパワーを見せつけられました。

クロコスミアは、夏から秋にかけて黄色い花を咲かせるそう。

土佐町社会福祉協議会とお母さんたちの繋がり。小さくとも確かな繋がりが、この土地の土台を支えています。町のあちこちの庭先で、クロコスミアの花が咲く風景が見えるようでした。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「はなのすきなうし」 マンロー・リーフ文, ロバート・ローソン絵, 光吉夏弥訳 岩波書店

昔、スペインの牧場にフェルジナンドという子牛がいました。フェルジナンドは一人静かに草の上にすわって、花のにおいをかいでいるのが好きでした。他の子牛たちはいつか闘牛で活躍したいと飛んだり跳ねたりしていましたが、フェルジナンドはそんなことには全く興味がありませんでした。

それから数年後、体の大きな立派な雄牛に成長してもフェルジナンドの好きなことは、花のにおいをかいで静かにいることでした。ところが…。

この絵本がスペインで発行された1936年は内戦の最中で、平和主義者の象徴として国内で発禁になったこともある作品です。それでも名作として世界各国で読み継がれているのは、自分らしく自然体で、周りに流されることなく穏やかに生きるフェルジナンドの個性が、人々の心に何かしらの善きものをもたらしてくれるからではないでしょうか?

 

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山の手しごと

桜の塩漬け

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土佐町の青木幹勇記念館に育つ八重桜が、今年も見事な桃色の花を咲かせました。

「何人かの人が、桜の花を塩漬けにしたいからって取りにきたよ」

記念館の田岡三代さんがそう話してくれました。

「桜の塩漬け」と聞いてまず思い浮かぶのは、あんぱんの真ん中に乗っている桜の塩漬け。なんと、お茶にもできるとのこと。お祝いの時に飲み、「桜湯」と呼ばれているそうです。

これは、ぜひ作ってみたい!

次の日の天気予報は雨、今日取らないと散ってしまうのは確実です。ということで、急遽、桜の花の収穫をしました。

 

目の前の花は満開!本当は五〜七分咲きの時に塩漬けにすると良いそうですが、これで作ってみましょう。木に登って摘んでいたら、記念館のお客さまが一緒に摘んでくれました。

 

桜の塩漬けの作り方

桜の塩漬けの材料は、桜、塩、酢の3つです。

摘んだ桜は、なるべく花びらが散らないよう、そっと水洗いして水を切ります。(手で絞らないように)

 

水切りした桜に、桜の量の半分くらいの塩をまぶします。ボウルをそっと揺らして、全体に塩が行き渡るようにします。30分程すると水が出てくるので、その水を捨て、また塩をまぶします。

 

しばらくすると、また水が出てくるので水を捨てます。

今度は、桜と同じ分量の塩をまぶし、酢を50mlほど加えます。(すみません、かなり適当です…)

バットを揺らして全体に行き渡るようにします。

 

密封できる袋に入れて、涼しいところへ置きます。時々ひっくり返したり、出てきた水分が全体にいくよう馴染ませます。

 

こちらは、塩漬けしてから1週間経ったもの。ピンク色が鮮やか!塩漬けすることで、香り高い桜へ変化します。

 

気持ちの良い風が吹く天気の良い日に干します。一つずつ広げながら干すのは少し大変ですが、とにかく香りが素晴らしいので頑張れます。

 

干した後ふと思いついて、袋の底に残った水分をビンへ、水分を吸ってどろりとした塩はバットへと分けました。

ビンに入れた水分は、勝手に「桜水」と呼ぶことにします。緑茶に少し加えてみたら、何とも上品なお茶になりました。

 

バットに広げた塩は、1日干したら水分が抜け、桜色の塩に。まるで満開の桜の色のよう。こちらは「桜塩」と名付けました。この塩を少し手に広げ、塩むすびならぬ「桜塩むすび」を握ってみたら、ほんのり桜の香りが。お花見をしているような気持ちになれます。

 

干した桜は、瓶などに入れて保存します。

友人は塩抜きした桜を刻み、イタドリも加えて混ぜご飯にするとのこと。こちらもぜひ試してみたいです。

 

春の桜を一年中楽しめる、桜の塩漬け。塩漬けすることでできる副産物の「桜水」と「桜塩」もうれしい。

おにぎり、お茶、混ぜご飯、パンやお菓子…。これから、色々と活躍してくれそうです。

毎日をちょこっと楽しくしてくれるものが、またひとつ増えました。

 

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私の一冊

山門由佳

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「若杉友子の野草料理教室  春」 若杉友子 ふーよよ企画

土佐町に来て2年になった。 四季を2度経験して、だんだんと季節のうつりかわりの流れがようやくつかめだした感じがする。

蛙が鳴きはじめて、田植えの予感を肌で感じ、そのあとには蛍が光りはじめて、秋までつづく蝉の大合唱…そんなあたりまえの流れに安心感と心地よさを感じる。

春は、いつもの散歩コースもあちらこちらに目をやるところがいっぱいになっていそがしくも愉しい季節。この若杉友子さんの本を片手に野草のお勉強。 絵本「ばばばあちゃん」を実写化したような若杉友子さん。じつに頼もしい。

今年はカルシウムの宝庫であるつくしをうっかり食べ逃してしまった。 そのかわりに、薬効高きよもぎをバンバン取り入れようと企んでいる。よもぎをみたらむしりとらないと勿体なく感じるなんて自分の姿は、2年前は想像もつかなかった。。。

【ヨモギ】 ビタミン・ミネラル・酵素は極めて豊富で、薬効成分もピカイチ。 血液を浄化し、生理機能を正常にする働きがあり、内蔵器官の機能を復活させ、新陳代謝を盛んにする優れた野草。 肩こりや利尿に効果があり、黄疸も治ったと言う人がいるくらいの効能がある。

 

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