鳥山百合子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

鳥山百合子

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「土佐町資料」 前田和男編者 土佐町教育委員会発行

昭和54年(1979)、土佐町教育委員会が高知市の高校の先生である前田和男さんに町内の神社や寺院、祠堂の調査を依頼、その調査結果が収録されています。

今年の土佐町オリジナルポロシャツのデザインとなった「地蔵堂の大龍」の作者を調べている途中、土佐町教育委員会がこの資料を見せてくれました。

2枚目の写真は、地蔵堂にある棟札の内容です。建立された年、大工さんや関わった人たちのお名前が書かれています。

年代ごとに記録を追っていくと、棟札の裏側に「水災風陸風災風」「水災金意災金蓮」という文字がいくつも書かれています。台風などにより地蔵堂が壊れ、地域の人たちから寄付を募って改修や再建したのではと想像します。

地蔵堂の中に入らせてもらった時に見せていただいた棟札には、木の板に墨で文字が記されていました。昔の人が記した文字が、もう見ることのできないその時代の風景を伝えてくれます。

鳥山百合子

 

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私の一冊

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「おによりつよいおれまーい」 サトワヌ島民話 土方久功再話,画 福音館書店

これは、南太平洋のミクロネシア諸島の中にある小さい島、サトワヌ島に伝わるお話です「おれまーい」は、サトワヌ島に住んでいる男の子。おれまーいは、「生まれるとすぐにはいはいし、4日経つと歩き、8日経つと椰子の葉で編んだ戸を破り散らした」というほどの強い男の子です。

あまりにも強すぎるおれまーいに恐れをなした島の大人たちは、おれまーいを森に連れて行きおれまーいの上に木を切り倒そうとしたり、海に沈めようとしたりしますが、その度ににこやかに帰ってくるおれまーい。ついに、「やにゅう」という鬼が住んでいる「ぴーくしま」に置いてきてしまおうということに。

さてさておれまーいはどうするか?

それはぜひこの絵本を読んでもらえたらと思います。

この本を開くことで、日本とはまた一味もふた味も違うだろう南の島の暮らしの一片を見せてもらっていた気がします。子どもの頃、本に出てくる「ぱんのみ」を一度でいいから食べてみたいと思っていましたが、今でもその気持ちを持ち続けています。

鳥山百合子

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私の一冊

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「手づくりのすすめ」 自然食通信編集部 自然食通信社

版画の絵と手書きの文字で、豆腐や醤油、お麩、こんにゃくなどの作り方が掲載されています。数年前、柿酢と麹を作った際にはこの本に大変お世話になりました。

最も気になっているのは「水あめ」。さつまいもと乾燥麦芽で作るそうですが、いつか挑戦したいと思っています。(ページを開くだけで作った気になってしまうのが不思議です。)

私がこの本が好きなのは作った人たちの愛情と熱を感じるからです。あとがきに「生産の場と生活の場が切り離され、身近な物の成り立ちさえ見えなくなった都会の中で、都市育ちの私が、単なる知識でない、存在感を持った生活の知恵と出会えたこの取材。それは一面、二人の子の母としての実力を養う得難い場でもありました。」という編集者の方の一文があり、とても共感します。

1987年に出版された本を2006年に新装改訂したものがこの本で、その間19年間。改訂版あとがきには「初版当初からすると私たちの暮らしは、なんと遠いところに来てしまったのか」と書かれています。この時から14年後、2020年の今、私たちの暮らしはどんな風に変化しているのでしょう。

土佐町には、生産と生活の場が共にある環境が今もまだ残っています。その環境があるからこそ培われて来たお母さんたちの知恵も、あちこちに存在しています。町のお母さんたちの家を訪ねて学び、次の世代に残していきたいと思っています。

鳥山百合子

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「ゆうこのあさごはん」 やまわきゆりこ作,絵 福音館書店

きっと多くの人が、この本の作者・やまわきゆりこさんの絵を目にしたことがあると思います。やまわきさんが絵を、やまわきさんのお姉さんである中川李枝子さんが文章を書いた「ぐりとぐら」や「そらいろのたね」はあまりにも有名です。お二人の著書は懐かしい思い出と共に、私の本棚に何冊も並んでいます。

この「ゆうこのあさごはん」は、やまわきさんが文章と絵の両方を担っています。

このお話は簡単に言うと、朝寝坊をしたゆうこが朝ごはんの「ゆでたまご」と冒険に出かけて帰ってくるという内容なのですが、このお話を面白くしているのは、ゆうこが卵と同じ大きさになるためのおまじないの存在です。小指に塩をほんの少しつけてぺろりと舐めると、あら不思議!ゆうこは卵と同じ大きさになりました。そして、卵はにっこり笑って言うのです。「“びゆことおし”のまほうさ!」。

少し前にこの本を読んだ時、このセリフを聞いて「???」となった末っ子。最後まで読んで「“びゆことおし”を反対から読んでごらん!」と伝えると「し・お・と・こ・ゆ・び…。塩と小指!そっか!!」。謎が解け、晴れやかな顔をしていました。

冒険から帰ってきた後、元の大きさに戻る時には「びゆやおとおし」。そう、今度は親指に塩をほんの少しつけて、ぺろりと舐めるのです。

出かけて、ちゃんと帰ってくる。この安心感はなんでしょう。やまわきさんの子どもたちへの優しいまなざしが伝わってきます。

この本は、私が幼い頃にも母が繰り返し読んでくれました。何十年も読み継がれている本の底に流れているのは、作者の愛情そのものではないかと思っています。

鳥山百合子

 

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山の手しごと

ドクダミ仕事

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5月から7月にかけて、庭や道端に咲いている白い花。きっと多くの人が一度は見かけたことがあると思います。

花は可愛らしいけれど、摘んだ時の匂いは強烈。子どもたちが「くさい〜」と顔をしかめるその花は「ドクダミ」です。このドクダミは、日本の三大民間薬草の一つに数えられ、「十薬」と呼ばれているほど幅広い薬効あるそうです。

土佐町のあちこちで白い花を咲かせているドクダミは、とさちょうものがたり作業場の庭にもたくさん生えています。

これ幸いと、色々と作ってみることにしました。この時期だけにできる手仕事です。

 

■ドクダミ茶

まずは、おばあちゃんがよく飲んでいた「ドクダミ茶」。「体にいいのよ〜」と言いながら、食事やおやつの後によく飲んでいました。

【作り方】

1:ドクダミを根っこごと摘み取る

2:汚れが気になる場合はさっと洗って、水気をとる

3:まとめて縛り、逆さまにして風通しの良い日陰に干す

4:カラカラになったら出来上がり。茎ごと細かく切って、お茶にする

 

カラカラに乾いたドクダミ

ドクダミ茶には、解毒作用、利尿作用などがあるそうです。

「お茶の葉を小さな布袋などに入れてお風呂に入れるとあせもに効果があるよ」と近所の方が教えてくれました。

体の調子を見ながら、試してみてくださいね。

 

■ドクダミエキス

他にも「ドクダミエキス」を作ってみました。このドクダミエキスは色々使い道があるのです。

・水で薄めて化粧水に(美白効果があるそうです)
・お風呂に入れて入浴剤に
・虫に刺された時に脱脂綿などに浸して湿布する

作り方はこちらも簡単。

【作り方】

摘んだドクダミのつぼみと葉を瓶に入れ、ホワイトリカーを注ぐだけ。

1ヶ月くらいしたら使えます。

 

ホワイトリカーを注ぎ込みました。瓶は時々振ってください。

調べてみると、うがい薬としても使えるようです。

ドクダミは江戸時代から薬草としての効能が知られていたそうです。昔の人の知恵に頭が下がります。

 

どちらも簡単に作れるので、ぜひ試してみてください。
*効果には個人差があります。肌が弱い方や小さなお子さんは様子を見ながら、少しずつ使ってみてください。

 

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私の一冊

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「THE  PASTRY  COLLECTION」 郷土菓子研究社・林周作 KADOKAWA

世界の郷土菓子を知るために世界各国を旅した林さんが、旅先で味わったお菓子の数々を紹介しています。

ポルトガルのページを開いた瞬間、たまらなく懐かしい気持ちになりました。私が20代の頃、ポルトガルを旅したことがありました。節約旅だったので町の中は歩いて移動が基本、店先に美味しそうなものがあったら(お財布の中身に少し余裕があって、お菓子が高くなかったら)まず食べてみる。観光名所に行くよりも、町で生活している人たちの姿を見たり、市場に行ってパンにチーズとウィンナーを挟んでもらってお昼ごはんにしたり、自由気ままに行きたいところへ行く旅が好きでした。

あれは多分、ポルトという町に滞在していた時だったと思います。町の大通りから細い裏通りに入ると、路地に向かい合うように建っている家々の窓からロープが張られていて、洗濯物の白いシーツが風ではためいていました。その道の途中にあった小さな食堂。その前には小さなガラスのショーケースがあって、白いお皿の上に丸い黄金色の焼きプリンが置かれていました。「このプリンを食べなかったら絶対に後悔する!」そう思って、食堂に入りました。

そこからです。私の一番好きな食べ物がプリンになったのは。

ポルトの町の雑踏、あの道を吹き抜けていた風、とにかくプリンが美味しかった!ということをはっきりと思い出しました。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「お蚕さんから糸と綿と」 大西暢夫 アリス館

土佐町の和田地区を訪れた時のこと。和田地区の方から、昔は土佐町でも養蚕が盛んだったと聞きました。その方の母屋の隣には平屋建ての長い小屋があって、昔の農機具などがたくさんしまってありました。

「昔、ここでお蚕さんを飼ってたのよ」

家の周りに桑の木がところどころ生えているのは、蚕を飼っていた名残だと教えてくれました。

「蚕さんが葉を食べる音が夜の間も聞こえてきたのよ」と懐かしそうに話してくれたことを思い出します。

その方が「お蚕さん」と話していたことがとても印象的だったのですが、そう呼ぶ意味がこの本を読んでわかりました。

『「お蚕さん」や「お蚕様」と大切に呼んでいることや、牛や馬と同じように「一頭」と数えることなどから、人びとにとって、大切な存在だったことがわかった』。

このお蚕さんを中心に、人の行き来もたくさんあったことでしょう。

この本の舞台である滋賀と岐阜県にまたがる地域は、以前有数の養蚕の地だったそうですが、今では蚕を育てているのは、表紙の写真の西村さんご家族だけとなってしまったとのこと。土佐町で蚕のお話を聞かせてくれた方も、2年ほど前に山をおりました。

蚕は約5000年前に中国で飼われ始めたそうですが、時を経てその文化が日本へ伝わり、高知県の土佐町までたどり着いたのかと思うと感慨深いものがあります。

 

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山の手しごと

へびいちごの薬

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5月から6月にかけて、道端の草むらの中に小さな赤い実を見つけることができます。
それは、へびいちご。

このへびいちごが薬になることを知っていますか?

以前、近所の方に「へびいちごの薬だよ。虫刺されに効くよ」と瓶に入った茶色の液体をいただいたことがありました。

「これを湿布するとかゆみが治まるから」

蚊に刺された時に半信半疑で試してみると、みるみるうちにかゆみが治まっていくことに驚きました。何の虫に刺されたかわからないけどかゆい、という時にもよく効きます。

 

それから毎年、へびイチゴを見かけると思うようになりました。

「そろそろ薬を作らなければ!」

作り方は簡単です。

へびいちごの薬の作り方

①へびいちごを集めて、瓶の半分くらいまで入れる。(へびいちごは洗わなくても大丈夫です。洗う場合は水気をよく取ってください)

②ホワイトリカー(焼酎)を瓶いっぱいに注ぐ。

③3週間目くらいから使える。

 

ホワイトリカーを注いだばかりの状態

透明だったホワイトリカーは、次の日にはもう茶色になり、時間が経つにつれて琥珀色になっていきます。

次の日の朝には、もう茶色になっています

漉して使ってもいいですし、直接塗ったり、そのまま脱脂綿などにひたしてかゆいところに湿布します。

虫の出る夏の間、とても重宝します。

へびいちごが実る季節だけに作れる薬です。ぜひ試してみてください。

 

*効果には個人差があります。肌が弱い方や小さなお子さんは、少し水で薄めて使ってみてください。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「もりのへなそうる」 わたなべしげお作, やまわきゆりこ絵 福音館書店

このお話は、てつたくんとみつやくんの兄弟が森へ探検へ出かけ「でっかいたまご」を見つけるところから始まります。次の日、また森へ行くと、たまごのあったところに立っていた「へんなどうぶつ」。それが、へなそうる。「ぼか、へなそうるのこどもだい」と胸を張って答えるところがとても良いのです。

てつたくんとみつやくんと仲良くなってかくれんぼをしていると、お腹を蚊に刺されたへなそうる。初めての経験に驚きながら「かに(へなそうるは蚊を蟹と言っている)にさされたよう!バンデージはってよう!」とお腹をぼりぼりかきながら、大きな声で二人に伝えます。

最近、2年生の娘とこの本を読んだのですが、へなそうるが蚊にさされたページを声にした時、私自身がこどもだった頃のことが思い出されました。多分、私をはじめ2人の弟たちにもせがまれたのでしょう、私の母はこの本を何度も読んでくれました。バンデージを貼ってほしいと必死に訴えるへなそうるが何だか気の毒でたまらなかったこと。「バンデージ」はバンドエイドのことで、同じ物なのに色々な言い方があるんだなと子ども心に思っていたこと…。記憶の中の母の声色と共に蘇りました。

そしてもうひとつ。てつたくんとみつやくんのお母さんが作ってくれるお弁当が実に美味しそうだったのです。

「いちごをとんとんとうすくきって、それに、はちみつをとろとろっとかけた」サンドイッチ。「たらこをやいて、それをほぐして、ごはんにまぜて、きゅっきゅっきゅっとにぎって」作ったおにぎり。

いちごの赤色とはちみつの黄金色、たらこの粒々が目の前に現れてきたのは娘も一緒だったようです。

「いいなあ。いちごのサンドイッチ、今度作ろう」

近いうちにサンドイッチを作ってみようと思います。

一緒に読んだという記憶は、新しい楽しみをつくってくれます。

 

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私の一冊

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「はるがきた」 ロイス・レンスキー作,さくまゆみこ訳 あすなろ書房

「はるがきたきた!はるがきた!さむいふゆにはさようなら」
この言葉でお話が始まります。

太陽が輝き、鳥が歌う、春。
風が吹き、洗濯物が揺れる、春。
田畑や畑に向かう、春。

 今年の春は新型コロナウィルスの影響で外出もままなりませんが、お世話になっている方が手渡してくれたワラビや筍、散歩で見つける野の花たちにしっかりと春を感じました。むしろ、こんなに春を感じた年は初めてだったかもしれません。

せみのを背負った人たちが、カゴいっぱいに山菜を収穫する、春。
れんげやスミレ、キンポウゲにイヌフグリ、野の花たちが道端を彩る、春。

どんな時でも、季節はめぐります。
土佐町はもう初夏へと向かい、山々は青く、ぐんぐん迫ってきます。

「山笑う」季節です!

 

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