「天使のにもつ」 いとうみく 童心社
中学生の職場体験を受け入れたことのある方もいらっしゃると思います。やる気が空回りする子もいれば、そんじょそこらの大人よりも役に立つ子もいて大助かりの時もあります。しかし、どんな場合も一番試されるのは受け入れる大人だということに変わりはありません。
主人公の斗羽風汰は中学2年生。5日間の職場体験先を「楽そう」とエンジェル保育園を体験施設に選びます。事前面接では思惑通りの職場だと思ったのですが、保育園児と向き合う仕事はそんな甘いものではありません。言葉遣いや仕事ぶりを保育士どころか園児たちにもダメだしされる風汰。それでも少しずつ風汰は命を預かる保育師の責任や、やりがいなどに気が付いていきます。
たった5日間のことですから風汰が大きく変わったり、目覚ましく成長するわけではありません。けれども小さな気づきはあり、それが今後の風汰の成長の大きな糧になるのではないかと感じられます。風汰から小さな変化を引き出したのは、受け入れ先の保育園の園長先生や保育士のたちのさりげない対応の数々です。 こういう大人に出会える子どもは幸せだなあと思いつつ、わが身を振りかえって反省したことでした…。
古川佳代子