私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

田岡三代

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「大河の一滴」 五木寛之 幻冬舎

第一刷発行が平成10年4月15日というから、もう23年も前に書かれた本であるにも関わらず、読んでいて、新鮮でうなずけることばかりでした。

引用として挙げているエピソードに、アウシュビッツの収容所の事が出ていました。第二次世界大戦中、ナチスドイツがユダヤ人を連行し、残虐な殺戮が行われたアウシュビッツで、奇跡の生還をしたフランクルという人が、「夜と霧」というタイトルの本を書いているそうです。

その中で印象的なエピソードとして、この精神科医だったフランクルは、人間がこの極限状態の中を耐えて最後まで生き抜いていくためには、感動することが大事。喜怒哀楽の人間的な感情が大切だと考えるのです。そして、毎日ひとつずつ面白い話、ユーモラスな話を作り上げ、お互いにそれを披露しあって笑おうじゃないかと決めたのです。

私の廻りにも、自分が今まで生きてきた失敗談や、時には、後悔とも思えることも、笑い話に変えてしまう人がいるけれど、そんな方に限って、人生を楽しんでいるように見えます。

まさに、人間の「生きる」という本質がそこにあるのかもしれないですね。

久しぶりに、心の中のお掃除をした気分です。

 

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私の一冊

山門由佳

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「いきものたちはわたしのかがみ」 ミロコマチコ 朝日新聞社

先日、高知県立美術館にて開催されているミロコマチコ展にいってきた。(2021/9/20まで開催中)

ミロコマチコさんは月曜〜金曜、Eテレの「コレナンデ商会」という子ども向け番組の絵を担当しており、子どもにも馴染みがあるので一緒に連れだって行った。 原画というのは、だいたいパワーがあってエネルギーを感じるのだけれど、彼女の絵は火山か嵐かはたまた爆発か、を目の当たりにしたかのようにとてつもないチカラを感じた。 圧倒的な生命力、波打つ鼓動。 ‥‥生きてるんだ! 絵の中のいきものたちは生きている。

絵本も出されているけれど、絵本のサイズの何倍、何十倍もの大きさの原画たちは、絵本からだけでは伝わりきれないはみでた力がどれもみなぎっている。 展覧会に足を運び実物を目の当たりにすることをぜひおすすめする。

さらに前もって 「けもののにおいがしてきたぞ」(岩崎書店) 「まっくらやみのまっくろ」(小学館) 「ドクルジン」(亜紀書房) の3冊の絵本の原画が飾られているので読んでからいくと、さらにビンビン味わえることまちがいなし。 子どももすごいエネルギー体だけれど、そんな子どもも黙らせるミロコさんの絵は、野生の「けもの」なんだろうなぁ〜。

 

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私の一冊

西野内小代

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「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」 堀内都喜子 ポプラ社

何年か前、北欧の学生(高校を卒業したばかり)二人が目的を決めずに日本で長期滞在するという密着取材の番組を観た事があります。日本の学生事情とかけ離れた状況での卒業旅行に、この子達の将来はどうなるの?このうっすらとした記憶がこの本を読むきっかけになりました。

表題の件については、この国や社会全体の常識が全く日本とは異なり、決まりは決まり、休むことも社会人の権利、その必要性という認識がきっちり共有されていて、決まった勤務時間を守ろうという文化が定着している事が挙げられています。

フィンランドは幸福度ランキングで2018年、2019年世界一となっているそうです。

携帯電話のノキア、アパレルのマリメッコ、陶器のアラビア等デザインブランドは有名。学力・経済においても世界で突出しているそうです。

その背景や現状を仕事や日常という視点から探った一冊です。

因みに密着取材の学生二人は、その後母国の有名大学に進学し、優秀な生徒のみ可能な交換留学生として、東大と立命館に留学したらしいです。

 

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私の一冊

石川拓也

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「HIDEKI NAKAJIMA: MADE in JAPAN」 著:中島英樹

中島英樹さんは、日本を代表するグラフィックデザイナー。映画雑誌「CUT」のデザインを長年されている方です。

僕も駆け出し若手カメラマン時代にとてもお世話になりました。写真に対する目線が怖ろしいほど鋭く深く、甘っちょろいごまかしがあれば即見破られてしまいそうな、会うたびにそんな緊張感を感じていたことを記憶しています。

もうちょっと平たく言えば、写真家から見た「怖い先輩」です。その怖さは、すぐ怒るからとか言葉がキツイからといった類の怖さとはちょっと違っていて、「本質的な部分を見抜かれる怖さ」であったと思います。

怖い先輩であったものの、こうして時間が経って思い返すに、自分を写真家として育ててくれたのはそういった「怖い先輩たち」なんだよなぁと思います。

その時は厳しいことを言われ凹んで帰ってくるわけですが、その経験が最も自分を育ててくれたことでもあるという実感があります。

その中島英樹が作った自身のデザインを集めたデザイン集。これ以上ないぐらいにキレキレです。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「おふろやさん」 西村繁男 福音館書店

お風呂で泳いでおじいちゃんに怒られている子供。帰り際、しゅんとしている子供に笑顔で声をかけるおじいちゃん。石鹸の貸し借りをしている人も。そんな交流がありつつも、お風呂に入っているのは個人個人。ああ、お風呂屋さんってこういう感じだよなあと思い出させてくれる一冊です。

関西に住んでいた時、近くにいくつかお風呂屋さんがありました。小銭をポケットに入れ、気分で場所を変え、歩きや自転車で行きました。暖簾を潜り、番台で当時370円位だった入浴料金を払う。ムンとした空気、天井は高く、お風呂場からは洗面器のカランカランと響く音が聞こえてきました。

大きな湯船は、「ぷは〜」とため息が漏れるほど気持ちがいい。おばあちゃん、おばちゃん、お姉さん、小さな子…。みんなが裸でお風呂に入っている。みんな1日の仕事や遊びや何かしらを終えて、ここに来ている。そんな背中の数々を感じながらお湯に浸かっていると、自分ってちっぽけやなあ〜と思いました。顔をお湯にぶくぶく沈ませていくと、ちょっとしたもやもやも一緒に沈んでいくようでした。

思う存分温まり、ぼんやりした身体に流し込む、瓶のコーヒー牛乳も外せません。

商店街に並ぶ銭湯も、山の奥に静かに佇む温泉も、ジャクジーやサウナがあるスーパー銭湯も、最高。

お風呂は最高の気分転換です。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ガチガチの世界をゆるめる」 澤田智洋 百万年書房

物心ついてから今に至るまで一度もたりとも運動が得意、あるいは楽しいと思ったことのない「運動能力不自由」者、それが私です。

大きいのもちいさいのも、どんなボールとも仲良くできないから球技は全滅だし、早く走れず高くも飛べず強くもないですから、やってみたいスポーツはありません…。でも、この本にでてくるゆるスポーツならやってみたいかも!?

500歩しか動いてはいけない5対5でやる「500歩サッカー」。はらぺこあおむしみたいなイモムシウエアを着て行う「イモムシラグビー」。中央にブラックホールが空いたラケットで卓球をする「ブラックホール卓球」…。どれもとても楽しそう! 自分の得意なことや強みもたいせつだけど、強み以外の「何気ない自分らしさ」も大切ですよね。「私これできません」と堂々と言える世界ってきっと誰にとっても居心地がいいはず。まずは自分のガチガチの常識を緩めると頃から始めてみようと思います。

作者の澤田さんは、「あなたが生まれなければ、この世に生まれなかったものがある。」などのコピーを世にだしているコピーライター。そして、世界ゆるスポーツ協会代表理事、(一社)障害攻略課理事として福祉領域におけるビジネスのプロデュースなども手掛けているそうです。

 

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私の一冊

西野内小代

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「歴史探偵忘れ残りの記」 半藤一利 文藝春秋

昭和史の執筆者、お堅い学者さんという認識しかなかったのですが、こんなにユーモアに富んだ素敵なエッセイを書かれていたのですね。

このエッセイの完成見本を見る事なくお亡くなりになられたそうです。

人生の最終章までキッチリとケリをつけて逝かれた素敵な生き方です。

絶筆となった「あとがき」に「乱読のお蔭で物書きになった。乱読が脳みそのコリをほぐすのに役立つ薬」と述べられていて、ただただ乱読のみの私は少し胸をなでおろした次第です。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「男の子でもできること~みんなの未来とねがい~」 国際NGOプラン・インターナショナル文 , 金原瑞人訳 西村書店

男女平等といわれて久しいですが、家で、組織で、社会で、男の子と女の子の扱いはまだまだ違います。でも、一度刷り込まれた価値観を変えるのはなかなか大変なこと。世界を変えるなら、今を生きる男の子たちの価値観こそ大事!と、希望を託して生まれた写真絵本です。

「男の子に生まれてよかった」と思うことがあったら、「あ~、女の子でなくてよかった」と思うことがあったら、ちょっと待って!

その「女の子」は妹やお姉さんかもしれないし、お母さんやおばあさんだったかもしれないよ。自分ができることなら、妹にもお姉さんにも、あるいは未来の自分の娘にもできるような社会にしたいと考える男の子が増えることが、世界を変えることにつながるのですよね!

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「スティーヴ・マッカリーの『読む時間』」 スティーヴ・マッカリー 創元社

ベンチに座って、車の中で、窓辺で、人は読む。

美術館の入り口で、歴史的な寺院の前で、芝生に寝転がって、商売の合間に、人は読む。

地下鉄で、カフェで、土の上に座って、ベットの上で。太平洋上空でも、雪の中ででも、料理をするお母さんの隣でも。

列車を待つプラットホームで、布と木の枝でできた家の中で、人は読む。

人はなぜ読むのだろうか。写真を一枚ずつ見ていて、しみじみと思う。それはひとつの楽しみであり、知らなかったことを学ぶためであり、時には現実逃避することでもあり、どこか祈りにも似た行為なのかもしれない。世界中の人々が同じように読むという行為をするのが興味深い。

この写真集の冒頭に、こんな言葉がある。

『何かを読むと、私たちは自分がひとりではないことを知る。C・S・ルイス』

私は本を読むこと、活字を読むことが好きだ。今まで知らなかった世界、新しいことを知るのは楽しい。前向きな時だけじゃなく、悩んだ時、迷った時、時には暇で何もすることがなくて本を開いてきた。そんな時はいつも、ちょっとした希望のようなものを探しているのだと思う。本の中に自分の「片割れ」や「相棒」を見つけて安心もした。まだ言葉にならない自分の気持ちを、言葉にしてくれていると感じることもある。

自分はひとりではない。人間はひとりではない。

そのことを忘れないでいたいと思う。

 

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私の一冊

川村房子

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「1日10分のごほうび」 赤川次郎, 江國香織他6名 双葉文庫

バックの隅にいれて持ち歩き、病院での待合やコインランドリーでの洗濯乾燥時などチョッとした暇な時間にページをめくります。

今はスマホの時代だけれど、何とも使いこなしきれないわたしには丁度です。

作家が替わっての短編小説。お気に入りだったり、はじめての出あいだったり、昔よく読んだ作家だったりで楽しく読みました。

今日は裏表紙に書かれている文章を紹介します。

「NHK WORLD-JAPANのラジオ番組で、世界17言語に訳して朗読された小説のなかから、豪華作家陣の作品を収録。亡き妻のレシピ帳もとに料理を始めた夫の胸に去来する想い。対照的な人生を過ごす女友達からの意外なプレゼント。ラジオ番組の最終日、ある人へ贈られた感謝のメッセージ…。小さな物語が私たちの日常にもたらす、至福のひととき。好評アンソロジー、シリーズ第二弾!」

第一弾 第三弾もあるようです。

 

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