渡貫洋介

笹のいえ

笹の夏休み(後編)

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僕たちの暮らしで大切に思っているのは、「食」。

イベント中の食材は基本的に、目の前の田畑から採ってきたものや地元産野菜、それと自家製常備菜や発酵調味料だ。
魚が釣れれば、それをさばいていただくこともある。

身体と環境は一体であると考える「身土不二」をベースに、より身近で栽培されたもの採れたものを摂り入れる。
カレールーやそうめんなど、市販の商品を購入するときは、シンプルな原材料で生産された商品を選んでいる。

調理するときは、食材を可能な限り丸ごと利用する。
「一物全体」は、全てのものは全体でバランスが取れている、という考え方だ。
だから、皮も根っこも工夫して食べる。結果、生ゴミはほとんど出ない。

出来上がった料理は自分が食べられる分だけ、食器によそう。
嫌いな野菜は無理に食べなくてもいい。食べたい、美味しい、と感じるものを食べる。
いのちに、作ってくれた人に、感謝していただく。

近くで採れた野菜を料理し、食べて、消化し、それが身体の栄養となる。
トイレで出したものは堆肥として土に還し、それがまた野菜を育てる。
そんな循環を「食べること」で体感していく。

子どもたちは、遊んでいるとき以外ほとんど家事をしている。
そして、食事に費やす時間が一番多い。
準備から調理、片付けまで、一日三食食べることがこんなに大変だなんて!
あれ?普段家では誰がしてるんだっけ?

そんなことも、笹の日々で見えてくるかもしれない。

最終日。笹の暮らしはどうだった?と聞くと、
「川遊びが楽しかった」「食事が美味しかったけど大変だった」「トイレ掃除が嫌だった」
などなど、いろんな答えが返ってくる。
そして、どの顔も笑ってる。その表情を見て、あぁ今年もやって良かったなとホッとする。

あんなことを経験させたい、こんなことさせてあげたい、と僕の足りない頭でいろいろ考えるけど、
その枠を超えて子どもは体験し理解していく。
ごちゃごちゃ言葉を並べるより、彼らの好奇心を思う存分発揮出来る環境を作り見守っていればいい、そう思いはじめてる。

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笹のいえ

笹の夏休み(前編)

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夏休みに合宿型の子ども向けイベントを開催している。

数日間笹のいえに泊まりながら、日中は自然豊かなフィールドで遊び、
調理や掃除洗濯、お風呂焚きなどの家事も子どもたちがこなしていく。

このイベントの約束はひとつ。
「自分たちで決める」こと。

イベント初日。
スケジュール表とアクティビティ名や料理名の書いてある駒を用意し、子どもたちに選んでもらう。
いつ何をして遊ぶのか、何を食べるのかを子どもたちが考え、想像し、決めていく。
スタッフたちは最低限のアドバイスでサポートする。
「朝食にパンを食べるなら、前の日の晩に生地を捏ねておこう」「この日は一日中川遊びだからお昼はお弁当にしようか?」
など、子どもたちの意向を第一に、時間を有効に使えるよう調整する。

二日目以降、日中はひたすら遊ぶ。

泳いだり、釣りをしたり。地元の遊びのプロたちが講師として参加することもある。
ラフティングやSUPは毎年子どもたちに人気のアクティビティだ。またアートワークなど物つくりの時間もある。

遊び以外では、笹の暮らしを実体験する。

釜戸や五右衛門風呂で火を起こしたり、トイレはコンポスト、洗濯機は二層式、、、
自分の家とは違う、笹の「むかし暮らし」だ。

朝夕にはタスクと呼ばれる家事がある。掃除や食事作りなどをグループに分かれて行う。
最初は緊張気味の子どもたちだが、すぐに慣れる。
火起こしは好きな子が多く、お手伝いを頼むとすぐに手が挙がる。
積極的に行動する子、嫌嫌やる子、集中力も子どもによっていろいろ。
スタッフは声掛けはするが、あまりうるさく言わないように気をつけている。

たぶん、家で言われていることだろうから、高知の山奥に来てまで同じこと言われたくはない、
僕が子どもならそう思う。それより、それぞれのやりたいことをやればいい。
もし誰も料理をしなければご飯が食べられない、洗濯をしなければ明日着るものがない、
ただそういうことだ。
でも、みなお腹が空くから包丁を握るし、きれいなトイレを使いたいから掃除をする。

夜は花火や肝試しなど、キャーキャーワイワイ言いながら、あっという間に就寝の時間。

初日は、たいてい興奮していてすぐには寝ない。
夜通し起きている子もいるし、夜明け前から動き出す子も。

そうやって、子どもたちが主役の「笹の夏休み」を過ごしていく。

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笹のいえ

同じ釜の飯

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うちの保温ジャーにはいつもご飯が入ってる。

突然お腹すかせた人がやって来ても、ご飯と漬物くらいはすぐ出せる。
畑から野菜を採ってくれば、温かいお味噌汁も作れる。

笹のいえに興味があるという人に、僕は「ご飯食べにおいで」と誘う。
うちは羽釜でご飯を炊くから、正真正銘「同じ釜の飯」を食べてもらう。
出てくる食事やその雰囲気、一緒に食べ、話をすることで僕らの暮らしを理解してもらえると思うから。

友人知人が来るとき、仕事の打ち合わせのときも、食事の時間に合わせてもらうことが多い。
うちの子どもたちはまだ小さいから、大人だけで落ち着いて話し込んだり、長時間ミーティングすることはまだできない。
でも、いろんな人が来て、子どもたちも一緒にご飯を食べ、おしゃべりすると、笹のいえに気持ちの良い風が吹く。

だから、うちのジャーにはいつもご飯が入ってる。

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笹のいえ

かみとしも

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地元の方々との会話の中で、例えばある場所を説明するのに「東西南北」が登場することが多々有る。

「◯◯さんく(家)はスーパーの南側よ」とか「あこ(あそこ)の北に⬜︎⬜︎があるろ」とか。

僕は自他共に認める方向音痴で、普段どっちが北でどっちが西でなんて意識してないので、上記のように言われると、
空を見上げ、あそこに太陽があるから東はこっちで、、、と頭で考えることになる。
慣れるまでに時間が掛かるけど、そして、方向音痴は治らないけれど、ゲームのようで楽しい。

もうひとつ面白いな、と思うのは、「かみとしも」という表現。

「上と下」つまり、川の「上流と下流」という意味だ。

「今朝△△さんが国道を車で下に行っちょったけど、もう帰ってきたろうか」「上では雨がどっさり降りよった」

その度に僕は川の流れを思い出し、ああ、あの辺か、と想像する。

地元の方にこの話をすると、「へえ〜そんなこと考えたこともなかった」。
当たり前過ぎて、という感じだった。

自然と、そして川と密接に暮らすこの地域ならではの方向感覚が面白い。

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笹のいえ

梅干し

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今年の夏は、数日間スカッと晴れ!というタイミングがなかなか見つけられず、
土用のころからずっと頭の片隅で気になっていた梅の天日干しがやっとできた。

梅を網戸の上に並べながら、そうか梅を干すから梅干しと言うんだな、なんて当たり前のことに納得する。

梅に限らず、天日で干すと食材が劇的に美味しくなる、と頑なに信じている妻と僕。大量に採れたものやたくさんいただいたものを干す。

 

例えば、食べきれないスイカを切り、干して水分を飛ばし冷凍すれば甘みを増したスイカアイスになる。

例えば、川魚はヒラキにして塩水に浸した後一日干し、炭火で焼けば最高の酒のアテになる。

大豆や米、小麦も干して乾燥させれば虫やカビが出にくくなり保存性も良くなる。

だから、とにかく干すのだ。

その他にも、柿大根隼人瓜落花生筍小豆若芽布団等等。
以前友人に「笹のいえはいつ来ても何か干してあるね」と言われるくらい、うちでは軒先やシートの上で何かが干されている。

お天道様はこんな素敵な力を毎日惜しみなく僕らに提供してくれてる。

ソーラーパネルがなくとも、自然エネルギーを利用できるのだ。しかもタダ。

さあ干しましょう!

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笹のいえ

あめかぜ

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集落で夕方前のBBQ。

無風で蒸し暑かったこの日。

「ぬくいねえ」と話していた矢先、涼しい風が木々の枝を震わせながらザッと通り過ぎた。

男衆数名が空を見上げ、ひとりが「あめかぜだ」と言った。

あめかぜは、雨を運んで来る風。

その風に乗って、動きの早い雨雲が青空を覆いはじめてる。

これから雨になるかも。いや、この風ならもっと下(しも)の方だろう。と口々に話す。

地域のひとと付き合っていて感心するのは、
例えば風雲の動きや花の咲く時期、生き物たちが出すちょっとした音などに対して、
彼らが自然にしかも素早く反応していることだ。

たくさんの恵みを与えるが、読み間違えると命を落とす危険も潜む自然と寄り添う暮らし。
生き抜く知恵が、代々積み重ねられた経験と共にいまを生きる人たちの中に集積されている。

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笹のいえ

ひとりばえ

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こぼれ種が発芽してそのまま育つ野菜を、地域の人たちは「ひとりばえ」と呼ぶ。

人間の力を借りずに、野菜が自力で生えてくるからそんな名前なんだろうと推測するけど、
高知に来る前は聞いた覚えがないので、地域限定の表現かもしれない。

笹のいえでは、その辺で種を選別したり、食べ終わった野菜をポイっとすることがあるので、そのまま種が残り、
意外なところで意外なものが育っていたりする。

草の中で見つけた小さな苗は、何科の野菜かくらいは見当が付くけれど、品種まではわからない。
そういえば、去年この辺で傷んだトマトを捨てたな、とか、スイカの種を飛ばしたな、とか遠い記憶を辿る。

手塩に掛けて育てた野菜たちが虫や病気で元気が無いときでも、
雑草に囲まれる厳しい環境で逞しく育っていくひとりばえは、生命力に溢れ大きく育つことが多い。
この環境に適した遺伝子を持っていそうだから、種を採っておいて翌年に蒔くこともある。

棚に蔓をスルスルと伸ばしたかぼちゃのひとりばえが実をつけはじめた。
形はバターナッツみたいだけど、色はロロン(かぼちゃの品種)みたい。味はどうかな。

交雑が珍しくないひとりばえにはこんな楽しみ方もある。

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笹のいえ

日が昇るまえに

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朝5時。

まだ太陽が昇る前に起きて、釜戸で湯を沸かし、珈琲を淹れるこの時間は、僕の好きなひととき。
静かといっても無音ではなく、自然に囲まれた笹の環境では、いろんな生き物たちの音が心地よいBGMのように流れる。

田んぼに水が入ってるときは、蛙たちの大合唱だったけど、中干しして水がなくなると、彼らはどこへいってしまったのか、
すっかり声が聞こえなくなった。

蛙に代わる最近のBGMは、ヒグラシ。
その名前から夕方に鳴くものだと思っていたけれど、早朝や曇天の日中、薄暗い林の中でも聞こえるのに気付いたときは、
ちょっとした発見だった。

お天道様が顔を出しはじめ、徐々に明るくなると、この時間はおしまい。
他のセミや鳥のさえずりが加わって、今日も賑やかな一日がはじまる。

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笹のいえ

釜戸

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日々の調理には、釜戸を使っています。

僕らが引っ越してくる前から台所にあった釜戸ですが、ヒビが入っていたので、
周りを耐熱モルタルで固めて、再利用しています。

引っ越し当初は、調理に充分な薪が手に入るか分からなかったので、ガスを契約していました。
いざ暮らしはじめてみると、ご近所さんたちの口コミのお陰でたくさんの木が集まり、
一年経ってもガスの使用量ゼロだったので解約。
すぐにお湯を沸かしたいときなどは、カセットコンロを使います(稀ですが)。

確かに、薪を集めて、適当な長さに切って、乾燥させる、という手間はあります。

けれど、エネルギーの一部を自給するということは、僕たちに大きな安心と豊かさを与えています。

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笹のいえ

卵焼き

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笹のいえの食事の基本は、お米と野菜や穀物、海藻など。

市販のお肉や卵などの動物性食材や乳製品が、食卓に上ることはほとんどありません。

それでも、自然豊かな山暮らしをするようになって、知人友人から、ジビエと呼ばれる猪や鹿、川で捕れた魚、
自家製飼料や自然に近い飼育環境で育った鶏や卵などをもらうことがあります。
そんなときは、ありがたくいただいています。

この日は、質の良い卵が手に入ったので、夕食に出すことにしました。

卵が大好きな子どもたちは、我先にと釜戸の前で卵焼きを作りはじめます。

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