渡貫洋介

笹のいえ

オケブロ

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各地で記録的な降水量と被害をもたらした台風7号と梅雨前線。

ここ土佐町では、一部大雨による避難指示が発令され、一時緊迫した状態だった。しかし幸いにも大きな土砂災害や怪我人もなかったと聞いている。雨の多い場所柄、地域の防災に関する意識と知恵の賜物なのだろう。

笹のいえの水は、山からパイプで引っ張って来ている。大雨になると水の取り口に落ち葉やらが詰まり止まってしまうことが多い。その度にえっちらおっちらと山を歩き(と言っても200mくらい)、掃除をする。今回も雨が降りはじめて数日で止まってしまった。かと言って、この雨の中パイプを掃除してもまたすぐ詰まるだろうし、増水した沢に近づくのは危険だ。

長雨になることは天気予報で知っていたから、その前に風呂桶に水を貯めておいたし、貯水槽には数日分の水がある。とはいえ、雨がいつ降り止むかわからない状況で、多量の水を使うのは気が引ける。

なので、何度かオケブロをした。
大量に水を使うお風呂の代わりに、桶にお湯を注ぎ、最小限の水で体を綺麗にしようというわけだ。
いつもは乳幼児のためにするのだが、なぜか兄弟たちも大好きなオケブロ。
かまどで羽釜にお湯を沸かしておいて、桶にあけ、水を足し温度を調整する。

一番上のお姉ちゃんは手と足を温めて満足するが、下の兄弟はがっつり「入浴派」。入浴と言っても、桶であるからして当然、浅い。それを我先にと二人で入るものだから、お湯は溢れるわ、狭いわ、「もうちょっとそっち行け」と喧嘩ははじまるわ、もうカオス。

親に「もう出なさい」と十回くらい言われると、渋々お湯(すでにぬるま湯になっているが)から上がる。ビショビショになって飛び出してくるので、タオルで受け止めてやる。着替えて、そのまま布団へ直行。そして、母ちゃんにお気に入りの本を読み聞かせてもらい、いつの間にか爆睡。嗚呼、子どもになりたい。

写真は、お互い「せまい」と文句を言っているところ。順番に入るという発想はまだ、ない。

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笹のいえ

長雨

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台風7号と梅雨前線の影響で、6月の終わりから毎日雨だった。

梅雨に雨が振るのは当たり前だけど、これほど降り続くと予定していた作業が滞り、とても困る。

雨の日は内作業をすることが多いが、こうも連日雨だとそうもいかない。

田んぼや畑には、やることがゴマンとあるのだ。

雨の中、気が焦りつつ車を運転していると、ご近所さんが草刈りをしているのが目に入った。そうか、草刈りだ。

「草刈り」は、実は雨の日にはもってこいの仕事。

晴天のときこれらの作業をすると、暑すぎてすぐバテてしまう。小雨くらいなら、楽しいくらいだ。

上下に分かれている合羽を着込む。その下はTシャツと海パン。蒸れて汗もかくけど、すでに雨に濡れているから、気にならない。風邪を引かないように、Tシャツは休憩毎に着替える。海パンは濡れても作業が終われば、合羽と一緒に軒の下に吊るしておけばすぐ乾く。

雨の日に外作業が進むってのは、何となく得した気分になる。

でも、さすがにこの長雨では、土いじりができない。

7月に入っても、大豆が蒔けない。家の前のネムノキの花が散りはじめてるというのに。

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笹のいえ

麦秋

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米は秋に収穫だけど、麦は梅雨時期に刈り取りをする。

小麦畑が黄金色に染まり、秋を思い出させる。麦秋とはよく言ったものだと思う。

雨の多い季節に収穫なので、天気予報とにらめっこしながらタイミングをうかがう。

収穫後も脱穀や天日乾燥があるので、気が抜けない。長雨はカビの原因となるし、干す期間が長すぎても実が日向臭くなったり、どこからやって来るのか蛾が湧いてしまうことがある。畑で実の完熟を待つより、早め早めに作業を進める方が失敗が少ないようだ。

今年は下草が多いためにバインダーが詰まってしまったりして、半分くらいは手鎌で刈った。束になった麦わらを、地面に打ち込んだ支柱の周りに立て、上からシートを被せて縛る。このまま数日乾燥させた後脱穀し、晴れた日に玄麦をシートに広げる。麦を歯で噛んで、カリッと割れるくらいを乾燥の目安にしてる。

今回の収量は去年の三分の二ほど。畑の低いところに蒔いた種が雨に浸かり、発芽率が悪かったからだと思う。それでも、しばらくは自家製小麦粉を楽しめそうだ。

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笹のいえ

堆肥置き場

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笹のいえの畑に、堆肥置き場がある。

日々の排泄物や生ゴミ、刈った草や畑の残渣などを積んでいる。

年に一、二度天地返しをして、分解を促す。発酵しやすくするために、生活で出た米糠や大鋸屑を投入することもある。内部の風通しを良くして微生物を活性させようと、去年から節を抜き、側面に穴を開けた竹を堆肥の間に置いてる。

これだけの手間で、ほとんどのものが土に還ってくれる。

ふるいに掛けると、落花生の殻や栗の皮などの固い物が残る。発芽してる種もある。それらを観察して、「そういえば、こんなもの食べたんだっけ」と思い出すのも楽しい。

ここは微生物や虫たちの住処として居心地が良いらしい。トタンの屋根を取ると、いろんな種類の生き物を見ることができる。モグラの穴もある。長男にカブトムシの幼虫がいるよと教えると、飛んでやって来た。容器に移して飼うらしい。

堆肥は培土として利用することもある。トイレで使ったくん炭は分解されず、そのままでは水保ちが悪いので、畑の土と混ぜる。畑に撒くこともある。自然界で土壌ができるのは長い年月が必要だが、こうすると必要な場所に土を増やせるので嬉しい。

完全に分解された堆肥は、土の良い匂いがする。

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笹のいえ

名づけ

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母親の誕生日と同じ日に、四人目が誕生した。

「無事に生まれてくれれば、性別はどちらでもいい」と言っていたものの、男子がふたり続いた後なので、実は待ってた女の子。名は「月詠(つきよみ)」です。どうぞ宜しくお願いします。

名づけ親はお義父さんで、日本神話に出てくる神様・月読尊(ツキヨミノミコト)が由来だ。

神様の名前だなんて、どうしたって名前負けするしかないけど、「月をよむ子になってほしい」という願いが込められている。

「最近の子の名前は難しくて、よう覚えん(とても覚えられない)」

と言われる昨今。そう言えばうちの子たちの名もその部類に入るかもしれない。

長女・ほの波(わ)の誕生のときは、初めての子と言うこともあり、名付けに気合が入っていた。出産予定だった9月は、田んぼに稲穂が実る季節。風が吹くと波のように揺れる穂波をイメージ、やわらかい印象にしたくて一部をひらがなにした。

次に生まれてきた長男の名前は、玄人(げんと)。僕は玄米好きなので、この文字を使いたかった。音が男らしくて好きだ。「玄」は全ての源と言う意味があると後から知った。彼から名前の由来を聞かれたら、さも知っていた風に教えてやろう。一般にはクロウトと読むってこと、人から指摘されるまで気づかなかった。

ここまでは親としての想いというか、イメージ先行というか、字画による右往左往はあったけど、比較的スムースに命名していた。しかし、三人目が生まれるときは、すでにネタが切れていた。

三人目、次男がやって来た日は、皆既月蝕でしかも満月だった。だから、月に因んだ名前にしようかと考えたが、これが難航した。新生児の名前は出生後14日以内に届け出ないといけない。刻々と迫るタイムリミットに段々焦ることになる。

提出期限まで待ったなしというある晩、集中的に考えた。奥さんのお祖母さんが字画に詳しい方なので、候補を挙げては伺いを立て、却下されては、また考え、の繰り返し。結局その日は決まらずにいつの間にか寝落ち。翌朝、改めてノートを見て笑ってしまった。央丸(まんまる)とか蒔人(まきと)とか、個性的な名前が書き殴られていた。

結局、20ほどの候補の中から、親類友人たちと投票をし、「耕丸(たがまる)」と名が決まった。これで一安心と思っていたが、里帰りしていた千葉から高知に戻って、土佐弁に「ちゃがまる」という言葉があることを知ることになる。「壊れる」という意味だが、地元の知り合いは親しみを込めて「ちゃがまったらいかんぞね〜」と冗談を言われ、しばらく「ちゃがまるくん」と呼んでいた。命名するときは、その字や音が国内外の言葉や言語でどういう意味になるのかリサーチする必要がありそうだ。

変わった名前と言えば、うちの奥さんの名は「子嶺麻」と書いて、シネマと読む。あだ名のような名前だが、本名だ。ご察しの通り、彼女の御両親は映画鑑賞が好き。一度聞いたら忘れないだろうし、海外の方にも覚えやすい名前だ。

 

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笹のいえ

おこげ

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久々にやっちまいました。

もう何年も羽釜で炊飯をしているけど、稀に(本当に稀に)ご飯を焦がして、重度のおこげを作ってしまうことがある。いつもと同じように焚いているつもりなのに、薪の具合とか、浸水の具合とか、気の緩みとか、そんなことが原因なんだろう。

焦げ臭い!と気づいたときはすでに手遅れの場合が多い。

慌てて軍手を着け、速やかにかまどから降ろす。事実から目を背けたいので、しばらく放っておく。願いが叶うのなら「なかったこと」にしたい。だって、この羽釜は二升炊き。大量のお米を無駄にしてしまったかもしれない。普段子どもたちに「お米は一粒たりとも粗末にしないこと!」と躾けてる父ちゃんとしては、立つ瀬がない。

とはいえ、ずっとそのままにもできないので、えいやと蓋を取り、まずは焦げていない部分をしゃもじで保温ジャーに移す。次はおこげの番だ。

しばらく置いておいたので、釜の中が蒸れて、おこげが取れやすくなってるのはせめてもの救いか。

剥がしたのをバットに並べて、天日に干しておく。

そのうち奥さんが気がついて、僕の心情を察し、静かに料理してくれる。

定番は、おこげせんべい。

油でじっくり揚げて、塩や醤油を振りかければ、カリカリで香ばしいせんべいの出来上がり。

「このせんべい、こげてる〜、にが〜い」という子どもたちのツッコミに、「そ、そうかな。おいしいけどな」と小さい声で答えつつ、いつもより食べる速度が速い父ちゃんなのであった。

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笹のいえ

そら豆

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去年までそんなに興味なさそうだったけれど、今年はそら豆が子どもたちに人気。

「おじぎしてるさやが、おいしいそらまめだよ」
と伝えると、ここ数日せっせと畑に行き、採りごろのそら豆を収穫してくれる。

さっそく炭を熾して、さやのまま焦げるまで焼く。
アチチと言いながら、さやを剥いて、ホクホクのそら豆を皮ごと口に入れると、

「あま〜い!」

どんどん減っていくそら豆に危機感を覚えて、父ちゃんの分は?と聞くと、どうぞ、とひとつぶだけ手のひらに載せてくれた。
育てたのは父ちゃんなんだけどと思いつつ、 感謝していただくと、本当に甘い。ちょっとしたお菓子みたいだ。

お辞儀する前の若いさやは上を向いて成長する。「空を向いて生るから、そら豆と言うんだよ」何年も前に誰かに聞いたなあと、毎年この時期が来るたびに思い出す。

作付けが少なかったこともあって、今シーズンは子どもたちの食べる分で終わってしまいそうだけど、来年はたくさん作って自家製豆板醤をつくりたいなあ。

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笹のいえ

春の雨

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この日は午後から雨予報だった。

西の空から灰色の雲が近づくと、湿度が上がりはじめて、ひんやりとした風の中に雨を感じる。

カエルたちがケロケロと鳴きはじめる。

彼らの鳴き声雨予報はかなりの精度なので、聞き逃してはいけない。

「そろそろだな」とお昼ご飯もそこそこに、洗濯物や日干ししてあるものを家の中に取り込んでいると、そのうちにポツポツと来た。

雨が降ると、いろんな匂いが漂ってくる。

水の匂い 山の匂い 土の匂い それから、アスファルトの匂い

仕事の手を休め、深呼吸をひとつして、雨の音に耳を傾ける。

頭の中で、予定していた作業を雨仕様に組み立て直す。

降りはじめのシンプルな雨音が徐々に重なり合い、本降りになってきた。

雨が落ちる音に混じって、別の音がする。何が鳴っているのか考える。

「あ、アレ仕舞い忘れてる」と気が付いて、片付けに走る。

残念ながら雨読晴耕とはいかなくて、雨の日には雨の日の作業がある。でも、雨の音をBGMに普段後回しになりがちなことをするのは良い気分転換だ。

大雨が続くと、山水のパイプが詰まったり、崖が崩れたりして、大ごと(大変なこと)になることがあるので困るけれど、適度の雨は、ひとにも田畑にも心地が良い。

いつの間にか、カエルたちの鳴き声は大合唱になっていた。

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笹のいえ

ショータ君

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本名、川原将太。通称「ショータ君」は、アーティスト。

もともと主に絵を描いていたが、土佐町に住みはじめてから縁がつながり、使われなくなった陶器工房を譲り受けたのがきっかけで、独学で器つくりもはじめた。焼き上げる度に彼の技術は向上し、作風も変化している。

そんなショータ君は、子どもと遊ぶのが大好きだ。

それも、全力で。

「危ない」とか「やっちゃダメ」とかすぐ言う大人たちとは違う。

だから、子どもたちも彼のことが大好きだ。

ショータ君は、「子どもマグネット」だ。

彼の姿を見つけると、子どもたちがどんどん吸い付いていく。

今日はどんなことをして遊ぶのか、新しい遊び道具はどうやって使うのか、みな笑顔になって、歓声をあげて彼と遊ぶ。

笹のいえにもよく遊びに来てくれる。

うちの子たちは彼の軽トラを覚えていて、見つけると一目散に走り寄っていく。次男なんて、親の名前より先に「しょーた」と言えたくらいだ。

ある日彼が「あの場所ちょっと使わせてください」と、山の斜面にある、草と竹だらけの元畑を指差した。「どうぞどうぞ」と言ったら、数日後には草が刈られ、丸太を運び込んでやぐらが立ち、木の枝を利用したブランコができ、アプローチに階段が、あれよあれよと作られていった。

「秘密基地」と名前がついたこの場所は、ショータ君と子どもたちの間で「秘密の」遊び場となっている。

好奇心が服着て歩いてるような彼は、アーティストとしての本業を続けつつ、子どもと遊び、その場をショータランド化している。そして、彼の磁力はいまや大人まで及び、一緒に遊ぶ輪も広がってる。

そして、ショータ君の魅力以上にすごいな、と思うのは、こんな彼を支える地域の気質だ。

一般的にひとの数が少ない地域ほど、彼のような「周りと違うひと」は中に入って来にくい。けれど、住人4000人足らずのこの町で彼が生きていけるのは、地元の懐の深さが大きいと僕は思ってる。

今日も山々に、ショータ君と子どもたちの笑い声が響く。

 

写真提供:中澤ミツル

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笹のいえ

お茶

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僕は珈琲好きだが、実はお茶も好き。正確に言うと、「好きになった」が正しい。
土佐町に住むようになってから、お茶をよく飲むようになった。理由は簡単、美味しいからだ。

お茶と言えば静岡が有名だけど、ここ嶺北土佐町もお茶を栽培してるってこと、引っ越してから知った。
敷地内で茶を栽培してる家庭も珍しくない。
笹でもかつてお茶を栽培していたようだ。田んぼの法面や畑、石垣のあちらこちらに数株残ってる。

当初は茶の木の手入れがよく分からず、また草刈りの度に枝を切り刻んでしまって、収穫することはなかった。
けれど、放置された茶畑再生のイベントに何度か参加し、お茶の美味しさと作り方を教わった。それから、少しずつ茶の木の管理をはじめ、新緑の季節に新茶を収穫するようになった。

土佐町のお茶のつくり方は「炒って揉む」のが主流だ。

うちは釜戸で葉っぱを炒るので、火加減が難しい。強いと焦げるし、弱いといつまで経っても炒りあがらない。それでも、徐々に香ってくるお茶の香りを楽しみながら、この季節の到来を実感する。

時期には直売所などで、いろんな種類の地元茶が手に入る。これもオススメ土産のひとつだ。

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