2021年3月

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

鳥山百合子

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「すずめさんおはよう」 いまきみち作 福音館書店

土佐町ではウグイスの声が聞こえるようになりました。

うっすら桃色がかった桜の枝や、道々に揺れる菜の花が、山に春が来たことを教えてくれます。朝晩はまだ冷え込んでストーブをつけますが、緑や黄色、オレンジ、ピンク…。春の色が日々添えられていく風景は、道ゆく足取りを軽やかにしてくれます。

2月のある日、大きな封筒が届きました。差出人は、絵本作家のいまきみちさん。同じく絵本作家の西村繁男さんとご夫婦で、以前土佐町に来てくださいました

いまきさんが「新しい絵本ができました」と送ってくださったのです。

春になると、すずめやウグイス、ひよどり、色々な鳥の鳴き声が聞こえてきます。畑を耕した次の日の朝、何やら畑の方が騒がしいと窓から覗くと、お腹に茶色と白の模様のあるむっくりした鳥や何羽ものシジュウカラが耕したばかりの畝を行ったり来たり。きっと土の中から出てきた虫たちを捕まえにきたのでしょう。へっぴり腰で畑を耕す私の姿をどこかで見ていたのか?鳥たちの感性に驚かされます。

いまきさんが住む土地も鳥が羽ばたき、花のみつを吸い、また眠りにつく。人といきものが共に生きる場所なのでしょう。いまきさんの優しいまなざしを感じる一冊です。

 

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4001プロジェクト

式地虎之介 (田井)

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どんぐりで働く式地虎之介くん。この日はパンの作業中。作業の合間に撮影させてもらいました。

虎之介くんの書く文字はとてもユニークで味があって、年末年始に販売した「2021カレンダーTOKUBETUHEN」では、色々な部分にその字を使わせてもらいました。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「シェフィールドを発つ日」 バーリー・ドハーティー作,中川千尋訳 福武書店

行ったこともないし、どんな街なのかも知らないにも関わらず「シェフィールド」と聞くと何やら懐かしい気持ちになります。それはこの本と出会ってからのことです。

主人公のジェスは一年間フランス留学のため、明日、生まれ故郷のシェフィールドを旅立ちます。彼女の門出を祝うパーティも終わり家族だけになったとき、祖父母や父が、それぞれのとっておきの物語をジェスに語り始めます。旅立ちを前に、自分の存在の不確か さに戸惑う者を力づけてくれるのは、きっとこういう身近な人々の物語なのでしょう。

それはまた、読者である私も励ましてくれ、拙いながらも自分の物語をつむぐ勇気をくれるものでもありました。

さまざまな選択肢から一つを選ばなくてはならない決断のとき、そっと背中を押してくれるのは、シェフィールドのまちで出会った人であり彼らの語ってくれた物語なのでした。

 

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ほのぼのと

梶蒸しの想い出

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真冬のこの時期になると、梶蒸しの事を思い出します。目を閉じると、懐かしい焼き芋の香りと、梶を蒸した香りがよみがえってくるようです。

私が小学生の頃は、冬に各家が総出で、土佐和紙の原料となる梶蒸しが行われていました。梶は、直径2メートル位の釜に、ひとかかえ位の束にくくった梶の木を10束位(だったかな?)、こしきの中に立てて入れて、高さ2メートル程の木おけをかぶせ、2~3時間蒸して柔らかくした後、女性と子供が1本ずつ皮をむいていく。

大人は木の杭を垂直に立てて、はぎ始めを作った梶を通してひっぱり、皮をむいていく。男性達は、その間に次の梶を蒸す。

 

沢山のたき木をくべて蒸すので、皆が食べられるように、さつま芋を灰の中にほうりこんで、ゆっくり焼き芋にする。その焼き芋の美味しいこと。それを食べたいので梶はぎを手伝うのです。

結(ゆい)で、各家々の梶の木を蒸してははぐので、4~5日かかって梶蒸しの行事は終える。剥いだ梶の木の皮は、各家庭がリヤカーで持って帰り、自宅の庭先や畑の畦に竹で干し場を作り、竹ザオをひっかけて皮を干して、夕方は夜露がかからないように片付けて、翌朝に干す。大変な作業で、梶の皮は出来上がる。それは冬場の大事な収入源だったと思う。

皮をはがれた梶の木は乾燥したら、梶ガラといって、風呂の焚き付けや炭をいこす時の火種にしたりと、一年中重宝していた。

今では梶蒸しの行事は、時折新聞紙上で記事を見かけるぐらいで実際に見ることはないけれど、冬になると、焼き芋の香りと懐かしい思い出が蘇ってくる。

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私の一冊

古川佳代子

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「Earthおじさん46億才」 藤原ひろのぶ文, ほう絵 フォレスト出版

おもしろい本を見つけるコツってありますか?と聞かれるときがたまにあります。あるなら私も知りたい、と思いますが強いて言えば、経験と勘で本からの信号キャッチすること、それと本好きの友人のおすすめ本はとりあえずチェックすることかなぁ。なかでも出会える確率が高いのは、友だちからの口コミ! この本も友だちから教えてもらった最近のヒット作です。

地球が誕生して46億年。これを1年に置き換えると人類が誕生したのは23分前になるらしいです。そのたった23分の間に取り返しのつかなくなる一歩手前まで地球を汚しまった私たち。ちょっと人間にいいたいことがあるんやと、神様にお願いしてヒト型(?)にしてもらったアースおじさんのつぶやきの一つ一つが静かに心に響きます。

責めることはせず、こんなに汚してしまったら困るのは人類のほうなのに大丈夫なのかいと心配するアースおじさんのほんわか慈愛に満ちた顔。これ以上、おじさんのお腹の調子を悪くしたり、体臭を酷くしないために何ができるのか? ほんの少しのことでもアースおじさんに喜んでもらえるよう、暮らし方を考えなくてはと思います。

 

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笹のいえ

冬のせい

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冬のせいだと思った。

ここ二三ヶ月、思いが前を向かなかった。

年老いていく両親のこと
これからの暮らしのこと
コロナ禍での生業のこと
人との交流や噂話
家族が増えたことにすら不安を感じていた。

どれもポジティブに解決すべきだと考えてはいるけれど、どうもそうならない。気持ちが焦ってしまうだけで、具体的にどうしたいのか自分でも分からない。頭の中は行き場の無い感情でいっぱいになり、さりとてどこから手をつけて良いのか悶々としながら毎日を過ごしていた。

ある日、ふとこれは季節が関係しているのかなと思い付いた。

冬になると寒さで心も身体もギュッとなって、固くなる。僕の場合、思考や行動範囲も同じように縮み狭くなる傾向があるようだ。

冬のせいなんだ、僕のせいじゃない。

 

あと少しで春が来る。

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メディアとお手紙

ファースト広報誌 Step!

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とさちょうものがたり編集部が取り組むシルクスクリーン事業。

2018年3月から土佐町にある障がい者就労支援事業所どんぐりのメンバーさんが、そして、2019年7月から大豊町ファーストのメンバーさんが作業に来てくれています。

シルクスクリーン作業だけではなく、昨年秋に製作した「2021年カレンダーTOKUBETUHEN」では、カレンダーの数字や文字を描いてもらいました。

先日ファーストに伺った時、施設長の三谷さんがファーストの広報誌を手渡してくれました。そこには「カレンダー作り」と題し、カレンダーの文字を描いた時や販売の様子が書かれていました。

「ファースト広報誌 第15号 Step!」(令和3年2月10日発行)

カレンダー作り

日頃シルクスクリーンの作業でお世話になっている「とさちょうものがたり」の方が、嶺北にある、土佐町どんぐりさん、本山町しゃくなげさん、大豊町のファーストに声をかけてくださり、カレンダー作りを行いました。

この活動は、とさちょうものがたりのスタッフの方が、コロナで3事業所の売り上げが減ったと聞いて、何か少しでも協力できればと取り組んでくれた活動です。各事業所でも販売を行い、売り上げの一部は手数料として還元してくれる仕組みとなっています。

ファーストは利用者様も率先して知り合いの方に声かけ販売し、1番多く地域の皆様等の手に渡せることができました。

 

 

ファーストさん、ありがとうございます!

編集部は、数字を描いてくれた施設にカレンダーの販売もお願いし、ファーストのメンバーさんとは大豊町役場へ出張販売に行きました。メンバーさんは友人や知人に積極的に声をかけ、多くのカレンダーを販売。「○部売れました!」と伝えてくれる姿はとても生き生きとしていて、こちらも頑張らないと!と大きなエネルギーをもらいました。

町を超えて協力し、ひとつのものを作り上げられたことは、編集部にとって、とても良い経験でした。

これからも共に、今暮らしている場所を少しでも楽しくするような取り組みをしていけたらと思っています。

 

 

2021年カレンダーTOKUBETUHEN販売開始!!

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「土佐の食卓」 土佐伝統食研究会 高知県農業改良普及協会

この表紙の緑色の茎、大きな葉。これは高知でよく使われている食材である「りゅうきゅう」です。大きいものでは、子どもの背丈ほどにもなります。

約10年前に高知に来てから、初めて知った山菜や野菜がたくさんありました。「りゅうきゅう」「ゼンマイ」、「いたどり」などなど。初めて手にした食材をどうやって料理したら良いのか?

そのまま食べたら物凄いえぐみのある「わらび」のアク抜き方法や、赤ちゃんのへその緒のように乾燥したゼンマイの戻し方…。それを知りたい時、何度もこの本にお世話になってきました。

食材だけではなく高知ならではの郷土料理も紹介されていて、土佐町の長野商店店主・長野静代さんも作っている「さばの姿ずし」をはじめ、高知県各地の料理の数々は、高知という土地がもつ食材の豊さを教えてくれました。

その土地の人たちがその土地にあるものを工夫して使い、美味しいものを作る。その営みを代々守り、引き継いできた人たちがいるからこそ今も残っている郷土料理。それは高知という土地のつよさであり、素晴らしい文化です。

10年前に感じた「高知に来てよかった!」という思いは、今も全く変わっていません。高知のもつ新しい側面を知るたび、高知を支えてきた人たちに出会うたび、その思いはますます強くなります。

いつか私も、この本を開かなくとも上手にゼンマイを戻し、リュウキュウの酢の物を作れるようになりたいものです。まだまだ時間がかかりそうですが、「さばの姿ずし」や「蒸し鯛」も必ずや挑戦したいと思います。

 

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笹のいえ

麦踏み?

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毎年栽培している小麦。実はここ数年は収量が思わしくなく、原因を探していた。

今回は種まき前に畑に溝を付け畝を立てて、水捌けを良くした。また、冬の間にする麦踏みの頻度を一ヶ月に一回から二週間に一度に増やした。これらが功を奏したのか、一部にウサギの食害が見られるけれど、今のところ順調に育ってくれている。

二月も後半になり、日中の気温も上がって春の気配を感じるこの日、今シーズン最後の麦踏みをした。

連れてきた子どもたち、最初のうちは僕の真似をして足で麦を踏んでいたけれど、そのうち飽きてしまって、畑で遊びだした。僕は僕で、まあそんなもんだろうと黙々と作業を続けていると、突然次男が「こうやったらいいんじゃない?」と言う。声のする方を向いてみると、なんと土に寝っ転がってゴロゴロ転がっている。足で踏むより、全身を使った方がより多くの麦を一度に踏む?ことができる、と。そんなバカなと思ったけれど、少し考えて、なるほどそれは悪くないアイデアかもしれないと思い直した。見ていた長男と次女も一緒に転がりはじめて、なんだかとっても楽しそう。

大人が同じことをするには少し勇気がいるけれど、彼らの柔らかい頭には敵わないと思わされた出来事だった。

二年前にも麦踏みのことを書いていて、このときの次男の足サイズが、今の次女(写真手前)の大きさと同じくらい。成長を感じさせる。

 

麦踏み

 

 

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買っていただいたみなさまありがとうございました!

 

「2021年カレンダーTOKUBETUHEN」は、昨年秋、高知県嶺北地域の3つの障がい者施設(土佐町どんぐり・本山町しゃくなげ・大豊町ファースト)と、とさちょうものがたり編集部が一緒に製作したカレンダーです。

2021年カレンダーTOKUBETUHEN販売開始!!

 

編集部が取り組むシルクスクリーン事業でご縁のできた3施設のメンバーさんに、カレンダーの数字や文字を描いてもらいました。(制作風景は上のリンクからご覧ください)

カレンダーは1部1500円、そのうち200円を3施設に分配。それに加え、カレンダーを1部販売したら1割(130円)がその施設に入る仕組みとしました。ちょっとわかりづらいかもしれませんが、後ほど図解します。

カレンダー完成後、各施設のメンバーさんが友人知人に声をかけて販売したり。とさちょうものがたりZINEを販売していただいている県内外の様々な店舗にも置いていただきました。そうそう、とさちょうものがたりのネットショップでも多くの皆さまにご購入いただきました。

おかげさまで283冊

結果、全部で283部販売することができました。

これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれ。商売としては小さいですね。ただ少なくとも、3施設に原稿料や寄付をお渡しして、印刷費を(印刷会社さんに)お支払いして、なおかつ来年度の制作費に(少額ですが)回せる、という結果です。

購入してくださった皆さま、販売をしてくださった店舗の皆さま、ありがとうございました!

 

カレンダー製作当初からお伝えしていた通り、3施設へ、以下のような形でお支払いをしました。

そして実際に販売した結果が以下の通り

・カレンダー販売数 283部
売上金額:¥424,500-

【①について】
¥18,866-が各施設に支払われました。

283部×¥200(寄付分)=¥56,600-
¥56,600÷3施設=¥18,866-

 

【②について】
3施設が販売したカレンダーは、合計131部。
「販売部数×130円」が各施設に支払われました。

*①②とは別に、原稿料として20,000円を各施設にお支払いしています。

 

【③について】
印刷費や店舗・ネットショプでの販売手数料を除き、残った金額は約61,471円。
こちらは2022年のカレンダーの制作費にしたいと思います。

 

このカレンダーが、少しでも3施設にとっての一助になればと思います。そして、手にしてくれた皆さまの暮らしを少しでも彩れるようなものであれたらと願っています。

2022年のカレンダーも、どうぞお楽しみに!

 

・高知新聞に掲載された記事です

高知新聞に掲載されました!

今、できることを


 
・朝日新聞(高知版)に掲載された記事です

朝日新聞に掲載されました!

 

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