私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西野内小代

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「『本当の大人』になるための心理学」 諸富祥彦 集英社新書

心が揺れ動く、考えても仕様のない事にばかり心が向かう…。昨今キレル中高年が増えているそうです。

自分の内側で感情を保持するためにはある程度の成熟性が必要であり、ある程度の強さを持っていなくては心を健康に保つ事はできない。睡眠の必要性、そして永久に生きられる訳ではなく限られた時間しかない事を意識する等々、対処法に気づかせてくれます。

「あれもこれも」から「あれかこれか」へとシフトさせ、何かを本気で選ぶ。現時点では何も報われていないように感じても、目的とする所を意識下に留めておく。その結果、チャンスに反応する反射神経を培う事が可能に。

「心の器を鍛える」。

この言葉を忘れないように残りの人生を過ごしたいなと思いました。

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私の一冊

石川拓也

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「陽だまりの樹」 手塚治虫 小学館

手塚治虫の名作「陽だまりの樹」です。

手塚治虫の先祖である手塚良庵と、(架空の人物らしいですが)一本気で頑固な侍・伊武谷万二郎の二人の人生を軸に話は進みます。

幕末の時代が大回転していく中で、手塚・伊武谷の両人もその波に飲み込まれ、時に翻弄され、時に苦悩し、それでも人生と志を全うしようともがく個人を壮大なスケールで描いています。

僕にとっては数年に一度読み直したくなる漫画で、このコロナの外出自粛期間を良い理由に最初から最後まで読破しました。

読むたびに印象に残るシーンが変わるというのも、底知れない深みを持った物語という証拠ではないでしょうか。

物語の終盤、手塚良庵が西郷隆盛に対して言い放ちます。

「歴史にも残らねえで死んでったりっぱな人間がゴマンといるんだ!!!そんな人間を土台にした歴史に残る奴など許せねえ」

おそらく手塚治虫の念頭にあったのは、特に立派な政治家や偉人でもなかったけれど、世のため人のためと(当時なかなか理解されなかった)「種痘所」を江戸に開設しようと尽力した手塚良仙(良庵の父)のこと。そして歴史には残っていないけれど人のために力を尽くした小さな個人たち。

今後の人生で何度読み返すことになるのだろうと思うような物語です。

 

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私の一冊

田岡三代

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「中島潔が描くパリそして日本」 朝日新聞社

儚くも美しい。この絵を見た瞬間、私の心をとらえるものがあった。それは何だろう?

言葉では言い表せない何か。その心のままを感じればいい?

中島潔の言葉に、「人の生きるさまは移ろう四季に似ている。ひとときも止まらない時の流れにすべてのものが生まれては消え、再びめぐることはない。四季もひとも千差万別で、時のひとときを彩り、笑い、想い、涙して流れてゆく。そのすべてが美しく、悲しくてきれいだ。」

15年前に買っていたこの本を久しぶりに開いてみた。

15年分の自分の変化が、絵への感受性の濃密さになった。…かな?

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私の一冊

石川拓也

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「ロックバー・ダイアリー」 フルハウス45周年記念ブック制作チーム 啓文社書房

「フルハウスの70年代叙情詩」と副題がつけられたこの本、実は僕と友人たちで作りました。

土佐町に移ってくる前のことです。フルハウスというのは千葉の稲毛駅前にある老舗のロックバーです。

2016年の時点で、開店してから45年。ずっと高山眞一さんというマスターが、愛するロックのレコードをかけながら続けてきているお店です。

学生運動が盛んだった時代には、千葉の早熟な学生たちが集まり、お酒を飲んでいたかどうかは知りませんが、わいわいと議論する場でもあったようです。

その常連さんの中からは寮美千子さんという泉鏡花賞を受賞された作家さんや、ミュージシャン/音楽プロデューサーのサエキけんぞうさんなどが輩出されています。

45年(2020年には49年)という長い年月をかけて、文化の発信地または文化の醸造場としての役割を果たしてきたフルハウス。

全国のバーやライブハウスと同様、フルハウスも今のこの時期はコロナ禍により苦しい時期だと思いますが、がんばって乗り越えましょう!という気持ちでここにご紹介です。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「西の魔女が死んだ」 梨木香歩 新潮社

西の魔女が死んだ、というなんともインパクトのある言葉。この言葉に導かれて、西の魔女こと祖母とまいが一緒に暮らした二年前の回想が始まります。

「扱いにくい子」で「生きにくいタイプの子」のまいは、中学校に通うことの出来なくなり、しばらく祖母の家で過ごすことになります。 祖母に手ほどきをうけながら、まいは魔女修行を行います。修業の極意は「何でも自分で決める」というもの。簡単そうで実は難しい魔女修行を通じて、まいは少しずつ失っていた自信を取り戻していきます。

この修行の中で重要な役割を担っているのが、日々の生活の基本を整える食事の準備や洗濯といった家事全般。庭でレタスとキンレンカを摘んで作るサンドイッチ、大きなバケツ3つ分のワイルドストロベリーでつくるジャム、洗いたてのシーツをラベンダーの上にひろげて花のかおりをうつす…。

こんな魔女修行なら私も弟子入りして修業を積みたいと何度思ったことでしょう!

文庫版にはハードカバー版にはない、その後のまいの物語「渡りの一日」が収録されています。

古川佳代子

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私の一冊

西野内小代

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「私が日本に住み続ける15の理由」 ケント・ギルバート 白秋社

親切心・世界一の食・都会と隣り合わせの美しい自然・歴史的遺産・治安の良さ等々よく言われる日本の良さが挙げられています。

それと共に外国の方ならではの激しい論調もあります。

それはひとえに日本を愛するが故の心配でもあります。

政治や老後について等広く論じられていて、反省したり、そうなのかと気づかされたり…。

西野内小代

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私の一冊

矢野ゆかり

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「風の谷のナウシカ」 宮崎駿 徳間書店

随分とご無沙汰しておりました。お久しゅうございます皆さま。季節の変わり目には色々と忙しいものですが、今年はより一層慌ただしさが際立っていたと思います。皆さま健やかでお過ごしでいらっしゃいましょうか。

例年の今時分といえば、なんとなしに春の陽気にふわふわと浮き足立つものです。しかし、世間は新型コロナウイルス、“COVID-19”によって別の意味で浮き足立っています。お陰様で私達は、まるで指揮系統を失った蟻の集団のよう。その中の1匹である私はとにかく目の前にある我が事を、どうにか達成する事が精一杯です。春盛りの桜の蜜を味わう余裕すらありません。こういう時、全ての判断を天才的に賢い人に委ねてしまえたら、私達は楽になれるのでしょうか。まさか。なんて馬鹿ばかしいジョーク。自分の責任を誰かに背負ってもらえるのは18歳まで。お酒タバコは20歳から。そういうことでしょう?()

さて、コロナウイルスについて調べてみますと、今までに人に感染するものは6種見つかっており、今回の発見で7種になることになります。その中でも4種ほどは基本的に風邪と呼ばれる感冒症状を引き起こします。その他の2種はSARS(重症急性呼吸器症候群)と、MERS(中東呼吸器症候群)だそうです。COVID-19はエンベロープウイルスという分類もできます。他にはエボラ出血熱、ヒト免疫不全ウイルス等が、多くの種が含まれています。これらはウイルスの最も外側に、主にタンパク質から成る膜をもち、これが人間の細胞に違和感なく侵入することで、より感染力を高めているようです。逆にその膜を壊してしまえば感染力が下がる点で、消毒用アルコールや有機溶媒、石鹸が有効なため、エンベロープを持たないウイルスよりも不活化が行いやすいのは不幸中の幸いと言えるでしょう。

COVID-19は、野生動物が保因していたものが、人への感染能力を獲たと考えられています。確定事項ではありません。しかし、野生動物が保因していたウイルスが人への感染能力を獲得する例は他にもあり、大半が未開の地の開発によって保因動物と人との出会いが引き起こしています。熱帯雨林の奥深く、永久凍土の水滴の中。開発により資源を得て、私達はより大きく複雑に豊かな産業文明社会を作り上げていきます。無作為な私達の欲望が切り開いた地に彼らはいたのです。何となく、本編に近づいてきたでしょうか。

さてさて、

巨大産業文明が亡びて1000年後の世界を描く「風の谷のナウシカ」。

今回は3巻に入っていきます。

冒頭はケチャと、アスベル、ユパがボロボロの船で逃げている所から始まります。ケチャはマニ僧正の死を嘆き泣き疲れて眠ってしまいますが、2人は操縦しながらお互いの遍歴を語り合います。しかし、雷雲をかわしそこねそし損ね腐海に遭難してしまいます。一方ナウシカはクシャナと共に南下していました。

クシャナとクロトワは戦略をねっていますが、ここでクシャナがクロトワに迫ります。クシャナは、クロトワが当初からスパイであること、自分を謀反人にする作戦であることを見抜いており、ここでしきりに友軍と合流することを勧めるクロトワが、今後使える駒か、ここで殺すべきか見切りをつけたようです。クロトワもクロトワで、平民上がりの貧乏軍人が王族の秘密を知って生きていられた試しがないのを察しており、ここでクシャナとクロトワは正式に上司と部下という形になりました。クロトワの賢さは当初から少しずつ描写されています。2巻でクシャナを助けた機転もそうです。今ではクシャナの部下たちは、クロトワのことを中央から派遣されてきた胡散臭い参謀からしがない平民出身貧乏軍人で天才的コルベット乗り殿下に忠実で上官だけど気さく、とまで好感度を上げています。クシャナもクロトワの手腕を鑑みあえて許したのでしょう。ところが、クロトワを見出し潜入させたのがヴ王自信であることを聞き、顔色を変えます。やはり、深い恨みと憎しみは隠せないのでしょう。

その後、奪われた自分の子飼いの兵である第三軍に合流すべく進みますが、途中の集落で異常な行動をとる兄王子率いる第二軍のケッチ2機を目撃し、迎撃します。集落は襲撃される前に人も動物も死んでおり、異常な状態でした。これを不審に思いながらも、敵の大艦隊を発見しそれを低く飛びながら追従します。その時でした。窓から外を見ていたナウシカは、猛烈な速さで死んでいく木を発見します。そして瘴気が来ることを確信します。本来ナウシカには命令権はありませんが、全員にマスクをつけるよう指示し、高度を上げるように言います。

実はここに面白いシーンがあります。上には土鬼の大艦隊がいる為、クロトワが『だれかあのバカ娘をだまらせろ!!』と罵声をあげているのにもかかわらず、全く無視して周りは必死で指示通りに動いているのです。その時のクロトワの顔()。しかもちゃんと指示通りに動くし、マスクもつけています。クロトワも類まれな人心掌握術をもっていますが、ナウシカは何もせずとも、人がついて行きたいと願うのです。クシャナも同じ、この人について行きたい、と思わせるカリスマ性があります。ナウシカとクシャナは全く違うように見えて本質は同じで、だから似たようなカリスマ性を持っているのかもしれません。

さて、瘴気の正体は猛毒のヒソクサリばかりの森でした。しかも腐海の蟲ですら死ぬ強毒性の異常な瘴気です。瘴気を避けるため、仕方なく敵艦隊のいる上へ出ます。そのまま戦闘になり行き着いた先は、第三軍第三連隊が守る拠点でしたが、今まさに土鬼に制圧される所でした。クシャナは怒りにかられつつも彼らを看取り、退避したのでした。その夜、クシャナとクロトワは敵地の中唯一生き残っている拠点の指揮権を奪いう作戦を立てていました。一方、ナウシカは強毒性のヒソクサリばかりの森のことを考えていました。クロトワには伝えていたようですが、人工のものではないかと推測しています。王蟲はナウシカに南の森がたすけを求めているといいました。ナウシカは思い詰めた顔で王蟲にあいたいユパさまや父上や谷のみんなにも……”と思いながら、アスベルが腕に巻いてくれた包帯も見つめています。

ナウシカはヒソクサリの森が人口であることを直感的に確信していたのでしょう。そして強い不安が襲ったに違いありません。ヒソクサリを強毒性に造り変えられるのならば、王蟲も人口で作り出すことが可能ではないか。そして、腐海に住む蟲ですら死ぬ森を作り出す技術力があるのならばその他もと、言いようのない不安に襲われていたに違いありません。命を人が作り替える。その発想に強い嫌悪を感じているようにも感じます。

ここ暫くずっと「風の谷のナウシカ」を書いていると、火の七日間の前ってこんな感じなんだろうなぁと思います。少し穿った見方というか、危機感持ち過ぎというのも分かっているのですが、世界情勢を見ていると、あながち間違いではないのでは?なんて思ってしまいます。今年1月に米科学誌「原子力科学者会報」の発表した終末時計は、残り100秒になっています。理由は核拡散と偽情報による科学的証拠への打撃なので、COVID-19とそれがもたらす社会への影響はまだ鑑みられてはいません。ヨーロッパではCOVID-19によって、民主主義体制にゆらぎが見られます。色々な思惑、正義が混在する今、不安に煽られて誰かに選択する権利を投げ渡してしまえば、宮崎駿の危惧する火の七日間を待つ世界になるのではと危惧しています。

だからこそ、ナウシカのように草木をめで、人を愛し、学ぶことを忘れてはいけないのでしょう。私達は自然の一部、野山の一部。そう思えば病も自然の一部として私達と同列です。むやみに恐れず、最適な対処をしていきたいものです。そして、COVID-19や様々な問題に対して、最善を尽くして戦う全ての人に敬愛と感謝を。

ではこの辺で一旦筆を置きます。この私の一冊、いつ終わるんでしょうね?()

また次でお会いしましょう。何時になるかは悪しからずお待ちくださいませ。

 

矢野ゆかり

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私の一冊

古川佳代子

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「しろいうさぎとくろいうさぎ」 ガース・ウィリアムズ文・絵,  松岡享子訳 福音館書店

この絵本に初めて出会ったのは、中学1年生のころだったように記憶しています。

ちょっと背伸びして『風と共に去りぬ』や『パピヨン』、『ペスト』などを読んでいたのですが、図書館の絵本コーナーに立ち寄ったとき、面展示されていました。

愛らしいふわふわの毛並みの二匹のうさぎのなんて幸せそうなこと!読み終えるのがさみしくてじっくりゆっくり時間をかけてページをめくりました。

その時からずっと大切な本の1冊だったのですが、 或る日、想いも書けないところで絵本と再会。なんと高校時代の友人の結婚式の引き出物が『しろいうさぎとくろいうさぎ』だったのです!

大好きな友人でしたが、私の中で彼女の株がますます上がったのは言うまでもありません。 今でもこの絵本を読み返せば中学生の時の自分のことや、結婚式での幸せいっぱいの友人の笑顔が思い出されます。

古川佳代子

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私の一冊

田岡三代

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「寂聴 九十七歳の遺言」 瀬戸内寂聴 朝日新書

「私なんか何もない」などと思わないで下さい。
全ての人にその人にしかない才能が、必ず授かっています。
何もなくても、笑顔は作れます。

「和顔施」 和やかな顔を相手に与えなさい。
「忘己利他」 自分のためじゃなくて、自分以外の人の幸せのために生きなさい。
人間は苦しんだ分だけ、愛の深い人に育っていくのです。

などなど、生きる極意のような言葉がちりばめられています。

97歳になってもなお、文筆活動が楽しくてたまらないという寂聴さん。その穏やかな悟りに至るまでには、さまざまな苦しみや悲しみ・楽しみを昇華させてきたのでしょうね。

久しぶりに、「生きていくという事」への想いを見つめてみました。

田岡三代

 

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私の一冊

西野内小代

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「アフロ記者」 稲垣えみ子 朝日文庫

何年か前「アフロ記者」の密着取材をテレビで観た事を思い出し、表紙の写真を見て即買い。

シンプルライフ、省エネ生活を日々目標とし実践している。田舎での住環境だったら可能かとも思われますが、あの大都会東京で実行している所にとてつもなく強い意思の力を感じます。

社説を担当していたという経歴が示すようにルックスとは180度違い、基本の確実な積み重ねによって社会を見つめている目を感じます。

「それでもマスコミで働きたいですか」という章では必死の覚悟について述べられています。

どのような仕事でもきっと同様に必死な姿勢が求められるのでしょうね。

西野内小代

 

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